NHK特集ドラマ『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』は、太平洋戦争末期のフィリピン・ルソン島で過酷な戦争体験をした日本人女性たちの記憶を題材にした作品です。2019年8月に放送され、岸惠子と清原果耶が主人公・奥田凛子を時代を超えて演じたことでも話題になりました。
物語の背景にあるのは、戦争によって帰国の道を失い、ルソン島の密林をさまよった女性たちの実際の証言や手記です。2026年には岸惠子をしのぶ追悼番組としてNHK総合でも再放送されました。現在のNHKオンデマンドでの配信状況、DVDの販売情報、実話とドラマの違いまで、作品を理解するためのポイントを整理します。
【作品の基本情報】マンゴーの樹の下ではどんなNHKドラマ?

『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』は、NHKが制作した全1話の特集ドラマです。
舞台は、昭和19年から20年にかけてのフィリピンと、戦後の平成元年。戦争を生き延びた女性たちが、その後の人生で何を抱え、どのように生きてきたのかを描いています。
制作著作はNHKとテレパック。脚本を長田育恵、音楽を清水靖晃が担当しました。
2019年の初回放送と拡大版初回放送は2019年8月8日のNHK総合です。その後、BSプレミアムとBS4Kでは、未公開シーンを加えた89分版が放送されました。
| 放送日 | 放送局 | 放送時間・内容 |
|---|---|---|
| 2019年8月8日 | NHK総合 | 22:00~23:13・73分版 |
| 2019年8月21日 | NHK BSプレミアム | 21:00~22:29・89分版 |
| 2019年8月24日 | NHK BS4K | 19:00~20:29・89分版 |
BSプレミアム版には、総合テレビ版にはなかった場面が追加されています。
特に、食料が尽きた密林で生き延びるために虫を食べる場面は、拡大版の見どころの一つです。
作品を初めて見るなら、89分版を選ぶと、人物の置かれた状況や戦争の過酷さをより詳しく理解できます。
【あらすじ】若き日の凛子と綾を結んだルソン島の秘密
物語は、平成元年の東京にある小さな写真館から始まります。
長年にわたって写真館を営んできた奥田凛子と日下部綾。しかし、綾が亡くなり、写真館は存続の危機に直面します。
凛子も店を閉めることを考え始めていました。
そこへ、不動産会社の社員・門井慎司が現れ、土地の売却を勧めます。写真館に長年出入りしてきた田宮蓮司も、店がなくなることを惜しんでいました。
そんなとき、一通の手紙が届きます。
差出人は、昭和20年のマニラ空襲で亡くなったと思われていた綾の弟でした。
その手紙をきっかけに、凛子の記憶は戦時中のフィリピンへとさかのぼります。
昭和19年、マニラで出会った二人若き日の凛子は、商社のタイピストとしてマニラに赴任します。
そこで出会ったのが、通訳として働いていた日下部綾です。
綾は日本人の父とフィリピン人の母を持ち、フィリピンで生まれ育った女性。日本から来た凛子と友情を育んでいきます。
異国の地で出会った二人には、それぞれの生活があり、将来への希望もありました。
しかし、昭和19年に米軍のフィリピン侵攻が始まると、二人の日常は大きく変わります。
マニラからの脱出、ルソン島北部への移動、空襲やゲリラの襲撃、食料不足。安全だったはずの暮らしは、いつ命を失ってもおかしくない逃避行へと変わっていきます。
平成元年に明らかになる二人だけの秘密戦争を生き延びた凛子と綾は、その後も長い人生を共に歩みます。
しかし、二人はフィリピン時代の出来事を周囲にほとんど語りませんでした。
なぜ、二人は戦争の記憶を胸にしまい続けたのか。
綾の弟から届いた手紙によって、封じられていた過去と二人の間にあった約束が浮かび上がります。
この作品の魅力は、戦場の出来事だけでなく、戦争が終わった後も続いていく記憶や友情を描いている点にあります。
【キャスト・役柄】清原果耶と岸惠子、山口まゆと渡辺美佐子の配役
本作の大きな特徴は、主人公たちを異なる年代の俳優が演じることです。
若き日の人物と戦後を生き抜いた人物を別々の俳優が担当することで、戦争によって変わった人生の重みが伝わってきます。
主要キャストと役柄の対応表| 登場人物 | 出演者 | 役柄・時代 |
|---|---|---|
| 奥田凛子 | 清原果耶 | 昭和19~20年の若き日の凛子 |
| 奥田凛子 | 岸惠子 | 平成元年の凛子 |
| 日下部綾 | 山口まゆ | 昭和19~20年の若き日の綾 |
| 日下部綾 | 渡辺美佐子 | 平成元年の綾 |
| 田宮蓮司 | 伊東四朗 | 写真館を長年支えてきた男性 |
| 田宮美咲 | 安藤サクラ | 田宮蓮司の娘 |
| 門井慎司 | 林遣都 | 写真館の売却を勧める不動産会社員 |
| 宮野支店長 | 大東駿介 | マニラの商社支店長 |
そのほか、安藤玉恵、福田転球、六角慎司、エルケ、山本裕子、後藤ユウミらも出演しています。
清原果耶と岸惠子が演じる奥田凛子清原果耶が演じるのは、戦争に巻き込まれる前の希望を持った若い凛子です。
一方、岸惠子が演じるのは、戦後を生き抜き、平成元年に写真館を営む凛子です。
同じ人物でも、若い時代と晩年では、表情や言葉に込められた意味が違います。
清原の演技には、戦争を知らない世代の視点から当時の出来事を受け止める役割もあります。
岸惠子は、長い年月を経ても消えない記憶を抱える女性の姿を表現しています。
山口まゆと渡辺美佐子が演じる日下部綾綾の若い時代を演じるのは山口まゆ、戦後の綾を演じるのは渡辺美佐子です。
綾は、日本人の父とフィリピン人の母を持つ日系二世という設定です。
フィリピンで生まれ育ち、通訳として働いていた彼女は、日本から来た凛子と友情を築きます。
二人の関係は、単なる戦友という言葉だけでは説明できません。
異なる背景を持つ女性同士が、過酷な状況を共に生き抜き、その後も互いの人生に深く関わり続ける姿が作品の中心にあります。
伊東四朗、安藤サクラ、林遣都らが支える物語平成元年のパートでは、伊東四朗が田宮蓮司を演じています。
田宮は写真館に長年出入りし、凛子たちを支えてきた人物です。凛子への秘めた思いも、物語に温かみを与えています。
安藤サクラが演じるのは田宮の娘・美咲。林遣都は写真館の売却を勧める門井を演じます。
戦争の記憶を中心とする物語に、戦後の人間関係や写真館をめぐる現実的な問題が加わることで、作品に複数の時間軸と感情の流れが生まれています。
【実話との関係】原作はある?女性たちの体験記をもとにした物語
『マンゴーの樹の下で』を調べる際に、特に注意したいのが原作と実話の関係です。
本作は、特定の小説や一冊の体験記をそのまま映像化した作品ではありません。
NHKおよび制作会社テレパックの作品紹介では、フィリピン攻防戦を生き残った日本人女性たちが書き残した戦争体験をもとにドラマ化したと説明されています。
つまり、複数の証言や手記を土台に、長田育恵が人物や物語を構成した作品です。
実在した女性たちの戦争体験太平洋戦争中、日本の占領下にあったフィリピンには、6,000人以上の民間の日本人女性が暮らしていたと、当時のNHK関連資料や報道では紹介されています。
その中には、凛子のように商社のタイピストとして働く女性もいました。
当時のフィリピンで生活していた日本人の中には、商社関係者や移民などの家族も含まれていました。
ところが、昭和19年に米軍のフィリピン侵攻が始まると状況は一変します。
帰国の道が閉ざされ、マニラから離れた女性や家族は、軍の指示に従ってルソン島内を北へ移動することになります。
その過程では、空襲、ゲリラの襲撃、飢餓などに直面し、多くの命が失われました。
生き残った人々にとっても、戦争の記憶は終戦と同時に消えるものではありませんでした。
関連ドキュメンタリーも制作されているこのドラマには、実際の証言を伝える関連ドキュメンタリーがあります。
2019年8月4日にNHK BS1で放送された『マンゴーの樹の下で~こうして私は地獄を生きた~』です。
前編・後編の2部構成で、戦時中のフィリピンで日本軍の指示による逃避行を経験した日本人家族や女性、子どもたちの証言を紹介しています。
NHKオンデマンドの番組紹介によれば、20人を超える人々の証言を通して、当時の状況が描かれています。
ドラマが人物の感情や友情を中心に構成されているのに対し、ドキュメンタリーは実際に体験した人々の証言に重点を置いています。
この二つを続けて見ると、作品の背景にある歴史をより具体的に理解できます。
実話とドラマの違いを整理- 実話に基づく部分: フィリピン攻防戦、日本人女性たちの逃避行、戦争体験、戦後まで続く記憶。
- ドラマとして構成された部分: 凛子と綾を中心とする人物関係、写真館をめぐる出来事、二人だけの秘密を軸にした物語。
- 原作の位置づけ: 特定の小説や単独の体験記ではなく、証言や手記をもとにしたオリジナル脚本。
実話を背景にしているからといって、凛子と綾の物語のすべてを実在する特定の女性の記録と同一視するのは適切ではありません。
歴史的事実とドラマとしての表現を分けて受け止めることが、この作品を深く理解するポイントです。
【長田育恵の脚本と歴史背景】ルソン島の戦争体験をどう描いたのか
脚本を担当した長田育恵は、劇作家・脚本家として活動してきた人物です。
劇団「てがみ座」を主宰し、舞台作品だけでなくテレビドラマの脚本も手掛けています。2023年にはNHK連続テレビ小説『らんまん』の脚本を担当しました。
本作では、実際の戦争体験を土台にしながら、戦争を知らない世代にも伝わる人間ドラマを構成しています。
ルソン島で何が起きていたのか1944年以降、米軍のフィリピン侵攻によって戦況は大きく変化しました。
1945年にはルソン島で大規模な戦闘が続き、マニラも激しい戦火にさらされました。
民間人にとっては、戦場と生活圏の区別が失われていく状況でした。
ドラマに登場する女性たちも、戦闘に参加する兵士ではありません。仕事や生活のためにフィリピンで暮らしていた一般の人々です。
それでも戦争によって、住む場所も帰国の手段も失っていきました。
日本人の被害だけでなくフィリピン側の記憶も描く本作で見逃せないのは、日本人女性の苦難だけを描いて終わらない点です。
清原果耶は2019年のORICON NEWSのインタビューで、凛子が戦争末期に現地の住民から怒りをぶつけられる場面について語っています。
日本人として生き延びようとする凛子が、フィリピンの人々が日本の戦争行為によって受けた被害や怒りに直面する場面です。
この場面は、作品の中でも特に重要な意味を持っています。
日本人女性が戦争の被害者だったという事実と、日本の占領や戦争によってフィリピンの人々も深刻な被害を受けたという事実は、同時に存在します。
戦争を一方の国の被害だけで理解すると、歴史の全体像を見失ってしまいます。
本作が単なる感動的な友情物語にとどまらない理由は、この複雑な歴史認識にもあります。
タイで撮影された戦争ドラマ興味深い制作上の特徴として、物語の舞台はフィリピンですが、清原果耶のインタビューによれば、撮影はすべてタイで行われました。
異国での撮影は出演者やスタッフにとって簡単なものではなかったといいます。
また、拡大版には密林で食べ物を失った凛子たちの状況を表す場面も追加されています。
清水靖晃による音楽も作品の印象を支える重要な要素です。
戦争の悲惨さだけではなく、失われた日常や、かつての友情を思い起こさせる音楽が、二つの時代をつないでいます。
【2026年最新】再放送・NHKオンデマンド・DVDの視聴方法
2026年に『マンゴーの樹の下で』が再び注目された大きな理由の一つが、岸惠子の追悼番組としてNHK総合で放送されたことです。
2026年8月7日に93歳で亡くなった岸惠子をしのび、NHKは出演作品や関連番組の追悼放送を実施しました。
その中に本作も含まれていました。
2026年の再放送は8月30日深夜ORICON NEWSなどが報じた放送情報は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 再放送日 | 2026年8月30日(日) |
| 放送時間 | 0:10~1:23 |
| 放送局 | NHK総合 |
| 放送内容 | 2019年放送の特集ドラマ |
| 配信予定 | NHK ONEで同時・見逃し配信予定 |
この放送は、岸惠子の追悼編成の一環として実施されたものです。
なお、2026年11月現在、この地上波再放送はすでに終了しています。放送時に案内されたNHK ONEの見逃し配信も、通常の見逃し期間を過ぎているため、現在の視聴方法としてはNHKオンデマンドが有力です。
NHKオンデマンドで視聴できるNHKオンデマンドには、89分のBSプレミアム版が掲載されています。
2026年に確認できる作品ページの情報は次のとおりです。
| 項目 | 掲載内容 |
|---|---|
| 配信作品 | マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~ |
| 収録時間 | 89分 |
| 単品購入 | 220円(税込) |
| 単品視聴期間 | 購入後72時間 |
| 見放題パック | 月額990円(税込) |
| 単品購入期限 | 2027年8月28日 |
単品購入なら、このドラマだけを視聴したい人にも利用しやすい仕組みです。
複数のNHK作品を見たい場合は、見放題パックとの料金比較も判断材料になります。
ただし、配信期限や料金は変更される可能性があるため、購入前にはNHKオンデマンドの作品ページで最新の表示を確認してください。
DVDでも視聴できるDVDを手元に残したい人には、NHKエンタープライズの公式販売ページに掲載されているDVDがあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商品名 | マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~ |
| 商品番号 | 24814AA |
| 販売価格 | 4,180円(税込) |
| 収録時間 | 89分 |
| 特典 | 特製ブックレット・フルカラー8ページ |
| 映像 | カラー・16:9LB |
販売ページでは4,180円の価格が掲載されていますが、商品状態は「近日入荷」と表示されています。
そのため、常時在庫があるとは限りません。購入を希望する場合は、NHKエンタープライズの販売ページで注文可能な状態かを確認する必要があります。
2026年におすすめの視聴方法視聴目的によって選び方は異なります。
- すぐに本編を見たい人: NHKオンデマンドの単品購入。
- NHKのほかの作品も見たい人: NHKオンデマンドの見放題パック。
- 作品を手元に保存したい人: NHKエンタープライズのDVD。
- 実際の戦争体験も知りたい人: 関連ドキュメンタリー『こうして私は地獄を生きた』も併せて視聴。
ドラマだけでなく、証言ドキュメンタリーまで見ることで、フィクションとして描かれた人物の背景にある現実をより深く理解できます。
【マンゴーの樹の下で】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マンゴーの樹の下では実話ですか?
A1:実際の戦争体験をもとにしたドラマです。フィリピン攻防戦を生き延びた日本人女性たちの証言や手記を参考にしています。ただし、凛子と綾を中心とした物語は脚本として構成されたもので、特定の人物の生涯をそのまま再現した作品ではありません。
Q2:マンゴーの樹の下での原作は何ですか?
A2:特定の小説や一冊の原作本を映像化した作品ではありません。長田育恵によるオリジナル脚本で、実際に生き残った女性たちの証言や手記が物語の土台になっています。
Q3:清原果耶と岸惠子は同じ役ですか?
A3:はい。二人とも奥田凛子を演じています。清原果耶が昭和19~20年の若き日の凛子、岸惠子が平成元年の凛子を担当しています。
Q4:山口まゆと渡辺美佐子の役柄は何ですか?
A4:二人とも日下部綾を演じています。山口まゆが若い時代、渡辺美佐子が戦後の時代を担当しています。
Q5:2026年に再放送されましたか?
A5:はい。岸惠子の追悼番組として、2026年8月30日午前0時10分からNHK総合で再放送されました。現在は放送終了しています。
Q6:2026年11月現在、どこで視聴できますか?
A6:NHKオンデマンドに89分版が掲載されています。また、NHKエンタープライズではDVDの販売ページを確認できます。配信や在庫の最新状況は各サービスの作品ページで確認してください。
『マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~』は、太平洋戦争末期のフィリピンで生きた女性たちの体験を、友情と記憶という視点から描いたNHKの特集ドラマです。
清原果耶と岸惠子が演じる奥田凛子、山口まゆと渡辺美佐子が演じる日下部綾。それぞれの時代を生きる二人の姿を通して、戦争が人生に残したものが浮かび上がります。
作品を理解するうえで押さえておきたいのは、次の3点です。
1. 歴史的背景: ルソン島で実際に起きた戦争と、日本人女性たちの過酷な逃避行が物語の土台になっている。
2. 作品の構成: 長田育恵によるオリジナル脚本で、若き日の友情と戦後まで続く記憶を二つの時間軸で描いている。
3. 2026年の視聴方法: 追悼再放送は終了しているが、NHKオンデマンドとDVDの公式販売情報を確認できる。
戦争を経験した人が少なくなっていく今、当時の証言や手記を次の世代へ伝えることには大きな意味があります。
このドラマは、日本人女性の戦争体験だけでなく、フィリピンの人々が受けた被害や、戦後も続く記憶の問題に目を向けるきっかけにもなります。
物語としての感動を味わうだけでなく、関連ドキュメンタリーや実際の証言にも触れながら視聴することで、『マンゴーの樹の下で』が伝えようとした歴史の重みが、より鮮明に伝わってきます。
主な事実確認資料