映画『テルマエ・ロマエ』で阿部寛が演じたのは、古代ローマ帝国の浴場設計技師ルシウス・モデストゥスです。日本人俳優が古代ローマ人を演じるという大胆なキャスティングに加え、上戸彩との共演や、日本の銭湯文化を題材にした独特のストーリーが話題を集めました。
2012年4月28日に公開された第1作は興行収入59.8億円の大ヒットを記録。2014年4月26日には続編『テルマエ・ロマエII』も公開され、阿部寛は第36回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞しています。2026年現在も語り継がれる人気シリーズについて、起用の背景、原作漫画との違い、キャスト、続編の見どころまで整理します。
【結論】阿部寛が演じたのは古代ローマの浴場設計技師ルシウス

『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスは、古代ローマ帝国で浴場の設計を専門にする技師です。仕事に対する誇りが強く、伝統を重んじる一方、新しい発想を求められると行き詰まってしまう不器用な人物として描かれています。
ある日、公衆浴場で悩んでいたルシウスは、突然、現代日本の銭湯にタイムスリップします。そこで目にしたのは、シャワーや浴槽、銭湯の設備など、古代ローマ人にとって驚きの連続となる日本の入浴文化でした。
「平たい顔族」と日本人の風呂文化ルシウスは現代日本人を「平たい顔族」と呼びます。これは、古代ローマ人の視点から日本人の顔立ちを表現した劇中のユーモラスな呼称です。
日本の銭湯で見つけた設備や習慣に感動したルシウスは、そのアイデアを古代ローマに持ち帰ります。そして、斬新な浴場を次々と生み出し、皇帝ハドリアヌスからも信頼される存在へと成長していきます。
作品の面白さは、現代日本では当たり前のものが、古代ローマ人には画期的な発明として映る点です。風呂上がりの習慣や浴場の設備といった身近な文化が、時代を超えた大きな発見に変わります。
原作漫画は2010年にダブル受賞した人気作品原作は漫画家ヤマザキマリによる同名漫画です。『コミックビーム』で連載され、2010年にはマンガ大賞2010の大賞と第14回手塚治虫文化賞の短編賞を受賞しました。
古代ローマと現代日本という一見接点のない二つの文化を、浴場という共通テーマで結びつけた発想が高く評価されました。映画化の時点ですでに人気漫画として知られており、実写化への期待も大きかった作品です。
【起用理由】なぜ阿部寛がローマ人に?制作陣が見抜いた適性
阿部寛がルシウス役に選ばれた最大の理由は、濃い顔立ちだけではありません。体格、存在感、重厚な演技力、そして真面目な役柄を徹底して演じる姿勢が、制作側のイメージと一致していました。
プロデューサーが考えた「日本人がローマ人を演じる面白さ」2012年のMANTANWEBによるプロデューサー稲葉直人へのインタビューでは、原作を読んだ段階で、日本人俳優がローマ人を演じるほうが面白いという発想が生まれたことが紹介されています。
「主人公は外国人だけど、日本人の方が面白い、阿部さんだったら顔が濃いし……」
これは稲葉プロデューサーがキャスティングの発想を説明した言葉です。顔立ちのインパクトに加え、阿部寛が持つ重厚な演技力がルシウスのキャラクターに適していると判断されました。
また、ルシウスは本人がいたって真剣に行動しているのに、周囲から見ると滑稽に映る人物です。この真面目さとコミカルさのギャップを表現するうえで、阿部寛の演技が大きな武器になりました。
武内英樹監督が選んだのは素の阿部寛を生かす演出監督を務めた武内英樹は、映画『のだめカンタービレ』などでも知られる人物です。日本人俳優に外国人役を演じさせる演出経験が、今回の企画でも期待されました。
シネマトゥデイの2012年の取材で、武内監督は阿部寛の起用について、次のような考えを明かしています。
「素の阿部寛を古代ローマ人に仕立て上げるのが面白い」
つまり、特殊メイクで別人のように変身させるのではなく、阿部寛自身の顔立ちや体格を最大限に生かす方針でした。
金髪や青いコンタクトは採用されなかった2025年のテレビ出演で阿部寛本人が振り返ったところによると、当初は金髪や鼻を高く見せるメイク、青いコンタクトレンズなどを使うことも考えていたそうです。
しかし、監督との打ち合わせや試行錯誤を経て、そうした装飾は次々に取り除かれました。最終的には、阿部寛の自然な姿を生かす方向に落ち着いたといいます。
加えて、武内監督は2012年の公開講座で、阿部が役づくりのために筋力トレーニングに励んでいたエピソードを紹介しています。原作に登場する彫像のような肉体を目指し、トレーナーのもとで身体づくりに取り組んだことも明かされました。
このように、阿部寛の起用は単に見た目が似ているからという理由ではありません。キャラクターの説得力を高めるため、本人の身体づくりと監督の演出方針が組み合わさった結果でした。
【原作との違い】上戸彩の真実は映画オリジナル、二人の関係が物語をつなぐ
映画版『テルマエ・ロマエ』を原作漫画と比較したとき、特に大きな違いとして挙げられるのが、上戸彩演じる山越真実の存在です。
上戸彩が演じる山越真実は映画オリジナルキャラクター山越真実は、漫画家志望の現代日本人女性です。ルシウスが日本にタイムスリップした際に出会い、彼の日本文化への理解や、その後の行動に関わっていきます。
原作漫画には登場しない映画オリジナルのキャラクターであることは、上戸彩自身も2012年のシネマトゥデイのインタビューで説明しています。
原作がエピソードを積み重ねる構成であるのに対し、映画では真実という人物を物語の軸に加えることで、ルシウスと現代日本との関係を継続的に描けるようになりました。
阿部寛と上戸彩の共演が生んだ独特の距離感阿部寛と上戸彩の組み合わせも、シリーズを語るうえで欠かせません。
ルシウスは真実に対して特別な感情を抱きながらも、古代ローマ人としての価値観や立場から、素直に気持ちを表現できません。一方の真実も彼を気にかけており、二人の間には恋愛とも友情とも言い切れない独特の関係が生まれます。
「ロマンスのようでもあるし、友情のような、すごく特別なんです。」
これは阿部寛が2012年のインタビューでルシウスと真実の関係を説明した言葉です。
上戸彩の明るさと、阿部寛が演じるルシウスの堅物ぶりが対照的であることも、二人の掛け合いの魅力です。阿部自身も上戸の笑顔に撮影中助けられたと振り返っています。
『テルマエ・ロマエII』では真実が風呂専門誌のライターに2014年公開の続編では、真実はお風呂専門雑誌のライターに転身しています。再び現代日本にやってきたルシウスと再会し、物語は新しい展開を迎えます。
第2作では、コロッセオで戦う剣闘士たちの傷を癒やす浴場の建設がルシウスに命じられます。加えて、平和を重視する皇帝ハドリアヌスと、武力による領土拡大を狙う元老院の対立も描かれます。
原作の風呂を中心とした発想を受け継ぎながら、映画独自の人間関係や政治的なストーリーを加えている点が、実写版ならではの特徴です。
【キャスト・公開日・興行収入】2012年作と2014年作を比較
映画シリーズは、武内英樹監督が両作品を手がけ、阿部寛と上戸彩を中心とした主要キャストが続投しています。まずは作品ごとの基本情報と登場人物の関係を整理します。
主要キャストと役柄の関係一覧| キャラクター | 俳優 | 作品内の役割・関係 | 登場作品 |
|---|---|---|---|
| ルシウス | 阿部寛 | 古代ローマの浴場設計技師・主人公 | 第1作・II |
| 山越真実 | 上戸彩 | 現代日本人の漫画家志望者。映画オリジナルのヒロイン | 第1作・II |
| ケイオニウス | 北村一輝 | 古代ローマ側の主要人物 | 第1作・II |
| アントニヌス | 宍戸開 | 古代ローマ側の人物 | 第1作・II |
| ハドリアヌス | 市村正親 | 古代ローマ帝国の皇帝 | 第1作・II |
| 山越修造 | 笹野高史 | 真実の父親 | 第1作・II |
| 山越由美 | キムラ緑子 | 真実の家族 | 第1作・II |
このほか、竹内力や勝矢など、個性の強い俳優陣が出演しています。続編では、曙や琴欧洲といった力士も登場し、相撲を取り入れたユニークな場面を盛り上げています。
第1作と第2作の公開日・興行収入第1作『テルマエ・ロマエ』は2012年4月28日公開。上映時間は108分で、興行収入は59.8億円に達しました。日本アカデミー賞公式記録でも、2012年の日本映画興行収入第2位の大ヒット作品として紹介されています。
続編『テルマエ・ロマエII』は2014年4月26日公開。上映時間は113分で、2014年の邦画興行収入ランキングでは第4位、興行収入は44.2億円でした。日本映画として大きな成功を収めた続編です。
続編ではブルガリアで大規模なロケが行われ、コロッセオを再現した壮大なセットも見どころになりました。日本映画データベースの作品情報でも、前作を上回る規模で制作されたことが紹介されています。
【評判と受賞】阿部寛のローマ人役はなぜ説得力を得たのか
阿部寛のローマ人役が高く評価された背景には、外見のインパクトだけでなく、演技と作品全体の完成度があります。
第36回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞2013年3月8日に開催された第36回日本アカデミー賞で、阿部寛は『テルマエ・ロマエ』によって最優秀主演男優賞を受賞しました。
日本アカデミー賞公式サイトでは、外国人ではなく阿部寛に演じてほしいというプロデューサーの強い希望があったことや、ルシウス役を見事に演じて劇場を笑いに包んだことが紹介されています。
受賞時の阿部寛は、イタリアでの撮影や多くの外国人スタッフ・出演者の協力にも触れ、受賞を予想していなかったという率直な喜びを語りました。
この受賞は、コメディ作品の主演としての存在感が、映画業界からも評価された結果です。
イタリアの観客にも伝わった笑い本作は日本国内だけでなく、イタリアでも注目されました。
2012年の阿部寛と上戸彩のインタビューによると、ローマで行われた完成披露上映では、現地の観客も作品を楽しみ、会場では笑いが起きたといいます。
阿部寛が特に気にしていたのは、日本人がローマ人を演じることそのものへの評価よりも、日本人とイタリア人で笑いの感覚が共有できるかという点でした。上映中に観客が笑ってくれたことが、自信につながったと振り返っています。
日本の銭湯文化を古代ローマに持ち込むという設定は、日本独自の生活習慣を知らなくても理解できる普遍的な面白さを持っています。言語や文化の違いを超えて楽しめる構造が、作品の強みになりました。
第2作では阿部寛のルシウス役もさらに自然に2014年の続編インタビューで阿部寛は、前作では古代ローマ人という役柄を探りながら演じていたものの、続編では役への理解が深まり、撮影やアフレコも演じやすくなったと話しています。
シリーズを通して同じ役を演じることで、ルシウスの生真面目さや独特のリアクションがより自然に表現されるようになりました。
また、上戸彩は男性俳優が多い撮影現場の雰囲気を明るく保つ存在として、共演者からも評価されていました。阿部寛と上戸彩の掛け合いは、ローマ側の濃いキャスト陣とは異なる魅力を作品に加えています。
【プロの結論】風呂文化の違いを笑いに変える、シリーズの見どころ
『テルマエ・ロマエ』の成功を考える際、注目したいのは、阿部寛の起用と映画独自の脚色が相互に作用していることです。
見どころ1:真面目な演技と突飛な状況のギャップルシウスは、どんなに奇妙な状況でも常に真剣です。日本の銭湯で初めて見る設備に驚く姿も、ローマに戻って新しい浴場を設計する姿も、本人にとっては重大な仕事です。
阿部寛が大げさなギャグに頼らず、真剣な表情と重厚な口調で演じるからこそ、状況とのギャップが際立ちます。この演技の方向性は、制作側が阿部寛を選んだ理由とも一致しています。
見どころ2:日本の入浴文化を再発見できる作品では、銭湯、温泉、浴槽、入浴設備など、日本人にとって身近な文化が重要な役割を果たします。
普段は意識しない入浴の習慣が、古代ローマ人の目線を通すことで特別な発明に変わります。単なるタイムスリップコメディではなく、日本の生活文化を異なる視点から見直す楽しみがあります。
見どころ3:2026年に原作と映画を見比べる楽しみ2026年に作品を振り返る際には、原作漫画と実写映画を別々の魅力を持つ作品として楽しむのがおすすめです。
漫画ではルシウスが風呂文化の違いを発見するエピソードの積み重ねが魅力です。一方、映画では真実というオリジナルキャラクターや、古代ローマの政治的な背景を加えることで、長編映画としての物語を構築しています。
なお、原作者ヤマザキマリは、2026年6月時点の新潮社公式プロフィールで『続テルマエ・ロマエ』を少年ジャンプ+で連載中と紹介されています。これは2014年の実写映画『テルマエ・ロマエII』とは別の漫画作品の展開です。
こんな人におすすめ・おすすめできない人- おすすめ:阿部寛のコミカルな演技が好きな人、日本文化と海外文化の違いを楽しみたい人、上戸彩との掛け合いを見たい人。
- 原作ファンにおすすめ:漫画の設定が映画でどのように再構成されたか比較したい人。
- 期待との違いに注意:古代ローマの歴史を忠実に再現した歴史映画や、原作のエピソードをそのまま映像化した作品を求める人。
初めて見るなら2012年の第1作から順番に鑑賞するのが自然です。ルシウスと真実の出会いを知ってから第2作を見ることで、二人の関係やルシウスの変化をより深く楽しめます。
【テルマエ・ロマエと阿部寛】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:テルマエ・ロマエで阿部寛が演じた役は何ですか?
A1:古代ローマ帝国の浴場設計技師ルシウス・モデストゥスです。現代日本にタイムスリップし、日本の風呂文化からアイデアを得て古代ローマの浴場を発展させます。
Q2:なぜ阿部寛がローマ人役に選ばれたのですか?
A2:プロデューサーが阿部寛の濃い顔立ちや重厚な演技力に注目したためです。武内英樹監督も、特殊メイクで外国人風に変えるのではなく、阿部寛本来の姿を生かす演出を選びました。
Q3:上戸彩が演じた真実は原作にも登場しますか?
A3:登場しません。山越真実は映画版オリジナルのヒロインです。ルシウスと現代日本を結びつける役割を担い、2014年の続編にも登場しています。
Q4:テルマエ・ロマエIIの公開日はいつですか?
A4:2014年4月26日です。第1作は2012年4月28日に公開されました。
Q5:テルマエ・ロマエの興行収入と受賞歴は?
A5:第1作は59.8億円、第2作は44.2億円の興行収入を記録しました。阿部寛は2013年の第36回日本アカデミー賞で、第1作による最優秀主演男優賞を受賞しています。
『テルマエ・ロマエ』で阿部寛が演じたルシウスは、古代ローマ人という意外性のある役柄と、俳優本人の持ち味が見事に融合したキャラクターです。
プロデューサーの稲葉直人が見抜いた濃い顔立ちと演技力、武内英樹監督による自然な外見を生かす演出、そして阿部寛自身の徹底した身体づくりが、独特の存在感を生み出しました。
加えて、上戸彩演じる映画オリジナルの山越真実との関係が、原作漫画にはない映画独自の魅力を加えています。
2012年の第1作、2014年の『テルマエ・ロマエII』はいずれも大きな興行的成功を収め、阿部寛には日本アカデミー賞最優秀主演男優賞も贈られました。
2026年に改めて鑑賞するなら、単に阿部寛がローマ人を演じる面白さだけでなく、日本の風呂文化と古代ローマの価値観が交差する独創性にも注目したいところです。原作漫画と映画版を見比べれば、ヤマザキマリの発想を武内英樹監督と俳優陣がどのように映画へ発展させたのか、その違いも楽しめます。
主な根拠資料・確認記録
- フジテレビ公式作品情報:第1作・続編のあらすじ、キャスト、スタッフ。
- 日本アカデミー賞公式サイト:第36回最優秀主演男優賞、興行成績の記録。
- MANTANWEB:稲葉直人プロデューサーによる阿部寛の起用背景。
- シネマトゥデイ:武内英樹監督の演出方針、阿部寛・上戸彩のインタビュー。
- 映画.com:第2作の作品情報と2014年の興行成績。
- 新潮社:ヤマザキマリの著者プロフィールと作品活動。