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【医療と健康を守る】緊急避妊薬・性感染症検査はどうすればいい?

桜庭 準 桜庭 準 • 更新: • 公開: • 読了約 15 分
目次

性暴力被害後の医療対応では、妊娠の可能性、性感染症、外傷、精神的なショックなどを総合的に考える必要がある。

受診先は産婦人科だけに限らない。性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターに連絡すれば、協力医療機関を案内してもらえる場合がある。

緊急避妊薬は72時間以内の対応が重要

妊娠の可能性がある場合、緊急避妊薬について早急に医師や薬剤師へ相談したい。

一般的に使用されるレボノルゲストレルの緊急避妊薬は、性交後72時間以内の服用が基本となる。服用までの時間が短いほど効果が期待できるため、時間を置かずに相談することが大切だ。

加えて、2026年の日本では緊急避妊薬の入手方法にも変化があった。

厚生労働省によると、2026年2月2日から、緊急避妊薬の薬局での販売が開始された。

2026年10月1日更新の厚生労働省の資料では、販売可能な薬局・店舗販売業の一覧が公開されている。

ただし、すべての薬局で購入できるわけではない。販売可能な薬剤師の勤務状況や在庫にも左右されるため、事前に電話で確認することが推奨されている。

性暴力被害の場合は、単に薬を入手するだけでなく、身体の診察や性感染症への対応も含めて相談することが望ましい。

性感染症検査は被害後にも必要

コンドームを使用していなかった場合や、相手の感染状況が分からない場合には、性感染症への対応も検討する。

医療機関で相談できる主な検査・診療には、次のものがある。

- HIV検査
- 梅毒検査
- クラミジア検査
- 淋菌検査
- B型肝炎などの検査

注意したいのは、感染直後には検査で感染を確認できない場合があることだ。

厚生労働省のHIV検査情報によると、一般的な抗体検査では感染から約4週間後に抗体が検出され始める。核酸増幅検査では2〜3週間程度から検出できる場合がある。

また、感染機会から1か月程度で検査して陰性だった場合でも、確実な確認のために3か月以降の再検査が推奨されている。

この期間は検査方法によって異なるため、初回検査の際に再検査の必要性と時期を医師に確認したい。

医療費は公費負担の対象になる場合がある

性犯罪被害者に対しては、警察による公費負担制度が設けられている。

警察庁の案内では、都道府県警察の制度として、次の費用が負担対象として挙げられている。

- 緊急避妊に関する費用
- 初診料
- 診断書料
- 性感染症などの検査費用
- 人工妊娠中絶費用
- 精神的被害に対する専門的なカウンセリング費用

ただし、対象範囲や申請方法は都道府県警察によって異なる。受診前後にワンストップ支援センターや警察へ確認するとよい。

【相談先を比較】#8891・Cure time・警察への相談はどう使い分ける?

レいプ被害

性暴力被害に関する相談先は一つではない。

「警察に相談するのは怖い」「電話で説明するのが難しい」「病院に一人で行けない」など、状況によって適した窓口は異なる。

特に知っておきたいのが、#8891、Cure time、#8103の3つだ。

1.#8891はワンストップ支援センターにつながる全国共通番号

最初の相談先としておすすめ



性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター


#8891


はやくワンストップ
全国共通番号・通話料無料
性暴力被害について、最寄りのワンストップ支援センターにつながる。

主な支援内容
- 産婦人科などの医療機関の紹介
- 緊急避妊薬や性感染症検査の相談
- 医学的な証拠採取の支援
- 心理相談やカウンセリング
- 警察への相談・届出の同行支援
- 弁護士など専門家の紹介

ワンストップ支援センターの特徴は、医療、心理、法律、警察への対応を一つの相談窓口からつなげられることだ。

被害者が何度も同じ説明を繰り返さなくて済むよう、関係機関との連携を図る役割も担っている。

警察に行くべきか迷っている段階でも相談できる。家族や友人に付き添ってもらいたい場合も、相談時に希望を伝えられる。

なお、一部のIP電話などからは#8891につながらない場合がある。その際は、都道府県の支援センターに直接連絡する方法もある。

2.Cure timeは電話が苦手な人向けのSNS相談



チャット相談

性暴力について電話で話すことが難しい人には、内閣府のSNS相談「Cure time」という選択肢がある。

Cure timeでは、チャットを通じて性暴力に関する相談を受け付けている。

2026年11月時点の公式案内では、相談受付は毎日17時から21時まで。

相談できる内容は、例えば次のようなものだ。

- 性暴力を受けたかもしれないが、判断できない。
- 相手に何をされたのか思い出すのがつらい。
- 警察や病院に行くことが怖い。
- 被害について誰にも話せずにいる。
- 今後の生活や人間関係が不安になっている。

メールや外国語での相談についても公式案内がある。電話で話すことを強制されず、文字で気持ちを伝えられることが特徴だ。

3.警察の性犯罪被害相談電話は#8103



警察・性犯罪被害相談電話


#8103


ハートさん
24時間・通話料無料
発信した地域を管轄する都道府県警察の性犯罪被害相談窓口につながる。

相談できること
- 性犯罪の被害についての相談
- 警察への被害申告に関する説明
- 捜査の進め方や証拠についての相談
- 女性警察官など希望する性別の捜査員による対応の相談

警察への相談を希望する場合に利用できる番号だ。

ただし、緊急の危険が迫っている場合は#8103ではなく110番を利用する。#8103がつながらないIP電話などの場合は、各都道府県警察の窓口へ直接連絡する方法がある。

相談窓口の違いを一覧で比較
相談先 主な役割 受付・利用方法
#8891 医療・心理・法律・同行支援 電話・全国共通番号
Cure time 性暴力のSNS相談 毎日17〜21時
#8103 警察への性犯罪被害相談 24時間
110番 緊急の危険への対応 緊急通報
#9110 緊急ではない警察全般の相談 原則平日・各都道府県で異なる
法テラス 被害者支援に関する法律相談 電話・窓口等

ここで覚えておきたいのは、警察への相談とワンストップ支援センターへの相談は、必ずしもどちらか一方を選ぶ必要はないということだ。

医療面の不安が強ければ#8891、警察の対応について直接確認したければ#8103、文字で気持ちを伝えたい場合はCure timeというように、最初の一歩を選べる。

警察への被害届は必ず提出しなければならない?

警察に相談することと、正式に被害届を提出することは異なる。

被害届を出すかどうか、どのような手続きになるのかを知りたい段階でも、警察の相談窓口を利用できる。

相談の際には、次のようなことを確認できる。

- 被害申告の方法
- 証拠や診断書の取り扱い
- 捜査の進行について
- 捜査員の性別などの希望
- 生活上の安全確保や再被害防止

警察庁は、性犯罪被害者の心理的負担を軽減するため、希望する性別の捜査員による対応や、証拠採取時の配慮などを進めている。

被害を申告するかどうかについて不安があれば、まず支援センターに相談し、同行や説明を受けながら考える方法もある。

弁護士相談はいつ利用するべき?

性犯罪被害者が弁護士に相談する目的は、必ずしも裁判を起こすことだけではない。

例えば、次のような問題について専門的な助言を受けられる。

- 刑事手続きの進め方
- 加害者との示談を求められた場合の対応
- 損害賠償請求
- 慰謝料や治療費に関する問題
- 加害者からの連絡や接触への対応
- 被害者参加制度など刑事裁判に関する手続き

法テラスには、犯罪被害者支援に詳しい弁護士を紹介する制度がある。

加えて、2026年1月13日から、不同意性交等や不同意わいせつなどの一定の性犯罪被害者を対象とする犯罪被害者等法律援助制度が開始されている。

この制度では、一定の資力要件を満たす場合、同一案件について3回までの無料法律相談や、捜査機関への同行、損害賠償請求、示談交渉などの弁護士支援を受けられる。

原則として、申込者と配偶者の現金・預金・有価証券などの合計が300万円以下であることなどの要件がある。利用の可否や費用負担は個別に審査される。

【被害後の心のケア】性暴力被害のカウンセリングと回復への支援

性暴力の影響は、身体の傷だけではない。

被害後に眠れなくなったり、食欲がなくなったり、外出することが怖くなったりする場合がある。加害者の姿や声を思い出して強い不安を感じることもある。

こうした反応は、強いストレスやトラウマに関連して生じることがある。

被害後に起こり得る心理的な反応

代表的なものとして、次のような症状が挙げられる。

- 不眠や悪夢
- 不安や恐怖
- 集中力の低下
- 自分を責める気持ち
- 人と会うことへの抵抗感
- 物事への関心や意欲の低下
- 被害の場面が突然よみがえる感覚

すべての人に同じ症状が出るわけではない。被害直後には何も感じなかった人が、数週間後や数か月後に不調を感じることもある。

また、被害について話したくない、事件を思い出したくないという気持ちも尊重されるべきだ。

カウンセリングはどこで受けられる?

主な相談先は次のとおりだ。

ワンストップ支援センター

臨床心理士などの専門家やカウンセリング機関につなぐ支援を受けられる。警察や医療機関への同行支援についても相談できる。

精神科・心療内科

不眠や強い不安、日常生活への支障が続く場合は、専門医による診察を受ける方法がある。

警察の被害者支援制度

警察では、犯罪被害者の心理的負担を軽減するため、専門的なカウンセリングを実施している。また、条件に応じて、被害者が選んだ精神科医や臨床心理士などの診察料・カウンセリング料を公費負担する制度もある。

家族や友人が被害者を支えるときの注意点

身近な人が性暴力被害を打ち明けてくれた場合、まず必要なのは安心して話せる環境をつくることだ。

支える側が気をつけたいのは、次のような点である。

- 被害を疑うような質問を繰り返さない。
- 服装や飲酒、外出時間などを理由に責任を問わない。
- 警察への届出や告訴を無理に迫らない。
- 本人の許可なく第三者に被害を話さない。
- 医療機関や相談窓口への同行を提案する。

特に「なぜ逃げなかったのか」「なぜ抵抗しなかったのか」という質問は、被害者にさらなる心理的負担を与える可能性がある。

内閣府の案内でも、性暴力は性別や年齢に関係なく起こり得るとされている。男性や男児の被害も例外ではない。男性の場合も、身体の反応を同意の証拠と考える必要はない。

【レイプ被害に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:レイプ被害から72時間以上経過していても相談できますか?

A1:相談できる。72時間という時間は主に緊急避妊薬の対応で重要になる目安であり、相談や警察への被害申告が一律にできなくなる期限ではない。証拠が残っていない場合でも、ワンストップ支援センターの#8891や警察の#8103に相談できる。

Q2:警察に被害届を出さなくても病院や支援センターを利用できますか?

A2:利用できる。ワンストップ支援センターでは、医療的支援や心理的支援について相談できる。警察への届出を迷っている段階でも、まず相談して今後の対応を考えられる。

Q3:恋人や配偶者からのレイプも犯罪になりますか?

A3:なる。2023年7月13日施行の改正刑法では、婚姻関係の有無にかかわらず不同意性交等罪が成立し得ることが明確化された。交際相手や配偶者であることは、同意のない性的行為を正当化する理由にはならない。

Q4:被害の証拠が何も残っていない場合はどうすればいいですか?

A4:証拠が残っていなくても相談できる。被害時の記憶、相手とのメッセージ、通話記録、受診記録など、残っている情報を相談先に伝える方法がある。証拠がないことを理由に相談を諦める必要はない。

Q5:男性でも性暴力被害者のワンストップ支援センターを利用できますか?

A5:利用できる。性暴力被害は性別に関係なく起こる。男性や男児も#8891などの相談窓口を利用でき、医療・心理・法律面の支援を受けられる。

2026年11月現在、日本では不同意性交等罪を中心とした法制度の整備が進み、性犯罪被害者を支える相談窓口や医療・法律支援の選択肢も広がっている。

2025年の不同意性交等の認知件数は4,177件。前年から6.1%増加した。一方、内閣府の調査では被害経験者の55.7%が誰にも相談していなかった。統計だけでは見えない、相談につながれない被害の存在も考える必要がある。

今回紹介した制度のうち、特に覚えておきたいのは次の3つだ。

- #8891:医療・心理・法律面の支援をまとめて相談できる。
- Cure time:毎日17時から21時まで、チャットで性暴力について相談できる。
- #8103:警察の性犯罪被害相談窓口に24時間つながる。

被害直後なら、安全確保と医療機関への相談を優先したい。緊急避妊薬や性感染症検査、証拠採取についても支援を受けられる。警察への届出を迷っている場合は、まず支援センターに相談する方法もある。

そして、最も大切なのは、被害に遭った人が自分を責める必要はないということだ。

抵抗できなかったこと、すぐに相談できなかったこと、加害者と知り合いだったことは、被害者の責任ではない。被害から時間が経っていても、証拠が残っていなくても、支援を求めることはできる。

助けを求めるタイミングに正解はない。まずは安心できる窓口につながること。それが心身の回復と、その後の選択肢を守る第一歩になる。

主な公的資料:警察庁「令和7年の犯罪情勢」「犯罪被害者等施策」、内閣府男女共同参画局「令和8年版男女共同参画白書」「性犯罪・性暴力被害者支援」、法務省「性犯罪関係の法改正等Q&A」、厚生労働省「緊急避妊薬の調剤・販売について」「HIV検査・相談マップ」、法テラス「犯罪被害者等法律援助」。

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