日本の暴力団勢力を理解するには、現在の人数だけでなく、1990年代以降の変化を振り返る必要がある。特に山口組の分裂は、全国の暴力団勢力図を大きく変えた出来事だった。
1992年:暴力団対策法の施行1992年3月、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる暴力団対策法が施行された。
当時の全国の暴力団構成員等は約9万600人。2025年末の約1万7,600人と比較すると、約5分の1にまで減少している。
同法は、暴力団の威力を利用した不当要求などを規制し、指定暴力団員による暴力的要求行為に対して中止命令や再発防止命令を出せる仕組みを設けた。暴力団対策の法的な基盤となった制度である。
2000年代:全国的な勢力縮小が進む2009年まで全国の暴力団勢力は8万人を超えていたが、その後は減少傾向が強まった。
背景には、警察による集中的な取締り、暴力団排除条例の全国的な広がり、企業や自治体による関係遮断の取り組みがある。暴力団対策法の強化も、構成員の離脱を促す要因となった。
加えて、組員の高齢化や新規加入者の減少など、組織を維持するうえでの構造的な問題も指摘されている。
2015年:山口組の分裂が勢力図を変える2015年8月、六代目山口組から神戸山口組が分裂した。この出来事は、戦後の日本の暴力団史でも大きな転換点となった。
その後、神戸山口組からさらに離脱する動きが起こり、任侠山口組を経て現在の絆會につながる組織も生まれた。池田組も神戸山口組から離脱し、独立した団体として活動するようになった。
警察庁の資料でも、主要団体の区分はこの分裂を反映して拡大している。2014年までは六代目山口組、住吉会、稲川会の「主要3団体」が中心だったが、2015年以降は神戸山口組、2018年以降は絆會、2021年以降は池田組を含む主要6団体として扱われている。
2020年以降:特定抗争指定による規制強化六代目山口組と神戸山口組の対立抗争を受け、2020年1月、両団体は暴力団対策法に基づく特定抗争指定暴力団等に指定された。
その後、池田組と六代目山口組の対立を受けて2022年12月、絆會と六代目山口組の対立を受けて2024年6月にも、それぞれ特定抗争指定が行われた。
特定抗争指定は、通常の指定暴力団制度とは別に、抗争の激化を防ぎ、市民生活への危険を抑えるための措置である。警戒区域内での組員の集合や事務所への立ち入りなどに厳しい制限が設けられる。
2025年末:全国最少の1万7,600人に2025年末の全国勢力は約1万7,600人となり、過去最少を更新した。警察庁の資料では、主要6団体が約1万2,500人を占める一方、団体間の規模の差も明確になっている。
また、2025年中に発生した対立抗争に起因するとみられる事件は1件だった。事件数が少なくなったことと、対立関係が解消したことは同じではない。警察は引き続き抗争への警戒と取締りを進めている。
【指定暴力団24団体とは】暴力団対策法の指定制度を解説
日本全国には、六代目山口組や住吉会のような大規模団体だけでなく、地域を拠点とする複数の指定暴力団が存在する。
2026年6月4日更新の静岡県警察の公表資料では、2026年5月末時点で指定暴力団は全国24団体とされている。2025年6月1日時点の警察庁資料では25団体だったため、指定団体数を紹介する際には基準日を確認する必要がある。
指定暴力団になるための条件指定暴力団とは、暴力団対策法に基づき、都道府県公安委員会が指定した団体をいう。
法律上、指定には主に次の3つの要件が関係する。
- 資金獲得活動:組織の実質的な目的として、構成員が団体の威力を利用して資金を得ることを容認していること。
- 犯罪経歴保有者の割合:構成員や幹部に占める犯罪経歴保有者の割合が、法律で定める基準を超えていること。
- 階層的な組織構造:代表者等の統制下にある階層的な組織と認められること。
これらの要件を満たすかどうかについて、国家公安委員会の確認など所定の手続を経て指定される。指定の有効期間は原則3年間で、継続する場合は改めて手続が必要になる。
2026年5月末時点の指定暴力団一覧静岡県警察が公表している24団体は以下のとおりだ。団体名は同資料の表記に基づく。
- 六代目山口組
- 稲川会
- 住吉会
- 五代目工藤會
- 旭琉會
- 八代目会津小鐵
- 六代目共政会
- 八代目合田一家
- 四代目小桜一家
- 五代目浅野組
- 道仁会
- 二代目親和会
- 双愛会
- 三代目俠道会
- 太州会
- 極東会
- 二代目東組
- 松葉会
- 四代目福博会
- 二代目浪川会
- 神戸山口組
- 絆會
- 関東関根組
- 池田組
ここで注意したいのは、指定暴力団の数と、暴力団の勢力ランキングは別の指標だという点である。指定団体は法律上の要件と手続によって決まり、構成員数の多い順に指定されるわけではない。
【勢力減少の裏側】組員が減っても暴力団問題がなくならない理由
全国の暴力団勢力は長期的に縮小している。しかし、人数が減ったからといって、組織犯罪の問題がそのまま解消したわけではない。
暴力団排除条例と資金獲得の難化暴力団勢力が減少した背景の一つが、社会全体で進んだ暴力団排除活動だ。
全国の自治体で暴力団排除条例が制定され、企業や一般市民が暴力団と取引することを避ける仕組みが広がった。金融機関や不動産業界などでも反社会的勢力との関係遮断が進み、組織の資金獲得は難しくなっている。
警察による継続的な取締りに加え、組員の高齢化もあり、従来の組織構造を維持することが困難になっている。
匿名・流動型犯罪グループとの関係もう一つ注目すべきなのが、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウとの関係だ。
警察庁が公表した2025年の組織犯罪情勢では、暴力団構成員がトクリュウの首領となる例や、トクリュウ側から暴力団に資金が流れる例が確認されている。
また、一部の暴力団が匿名・流動型犯罪グループを実質的に傘下に収め、資金獲得活動に関与させているとみられる事例も指摘されている。
つまり、従来型の暴力団の構成員数が減少していても、犯罪に関与する人的ネットワークが別の形で維持される可能性がある。組織の看板や構成員数だけでは、現在の組織犯罪の全体像を把握しきれない。
暴力団の潜在化という新たな問題暴力団排除活動が進む一方、組織の実態を外部から把握しにくくする動きも問題になっている。
全国暴力追放運動推進センターは、組事務所の看板や代紋の撤去、名簿への構成員名の不記載、暴力団を示す名刺の不使用など、組織実態を隠す傾向を指摘している。
このため、統計上の人数の減少と、地域社会における危険性の減少を単純に同一視することはできない。警察や自治体による情報収集、企業の反社会的勢力排除、地域住民への相談体制が引き続き重要になる。
【プロの結論】日本のヤクザランキングで本当に見るべき3つの数字
2026年に日本の暴力団勢力を調べるなら、単純な順位だけではなく、次の3つの視点を押さえることが大切だ。
第一に、団体の規模。2025年末の数字では、六代目山口組が約6,300人、住吉会が約3,200人、稲川会が約2,600人で、上位3団体が大きな割合を占めている。
第二に、構成員と準構成員等の違い。全国の構成員は約9,400人だが、準構成員等を含めると約1万7,600人になる。正式な組員だけを基準にすると、暴力団と関係する周辺者の規模を見落とすことになる。
第三に、勢力の推移と組織の実態。1992年の約9万600人から2025年末の約1万7,600人へと大幅に縮小した一方、山口組の分裂や匿名・流動型犯罪グループとの関係など、組織犯罪の形態は変化している。
ランキングを読むときは、次の判断基準を意識したい。
- 人数の基準日はいつか。2024年末と2025年末の数字を混同していないか。
- 構成員だけなのか、準構成員等を含むのか。
- 指定暴力団の団体数と、実際の構成員数を混同していないか。
- 分裂や離脱のニュースを、組織全体の消滅と誤解していないか。
- 人数の多さを、そのまま危険度や犯罪能力の高さと判断していないか。
こうした点を押さえれば、刺激的なネット上の順位表や古い勢力比較に惑わされず、警察庁の統計から日本の暴力団情勢を正確に理解できる。
【日本のヤクザランキング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、日本で最も勢力が大きいヤクザ組織はどこですか?
A1:2025年末の警察庁統計を基にすると、六代目山口組が最大規模です。構成員約3,100人、準構成員等約3,200人で、合計約6,300人となっています。
Q2:日本の暴力団の構成員は全国に何人いますか?
A2:2025年末時点で約9,400人です。準構成員等約8,200人を加えた暴力団構成員等の総数は約1万7,600人となっています。
Q3:住吉会と稲川会では、どちらが大きいですか?
A3:2025年末の統計では住吉会が上位です。住吉会は構成員約2,100人、準構成員等約1,100人。稲川会は構成員約1,600人、準構成員等約1,000人です。
Q4:神戸山口組や絆會、池田組は現在も存在していますか?
A4:2026年5月末時点の静岡県警察の指定暴力団一覧には、3団体すべてが掲載されています。2025年末の構成員等は、神戸山口組約280人、絆會約120人、池田組約70人です。
Q5:2026年現在、指定暴力団は全国に何団体ありますか?
A5:静岡県警察の2026年6月4日更新資料によると、2026年5月末時点で24団体です。指定団体数は指定の有効期間や更新などによって変わるため、基準日とともに確認する必要があります。
Q6:暴力団の勢力は今後も減少しますか?
A6:長期的には減少傾向が続いています。警察による取締りや暴力団排除活動、資金獲得の難化などが背景にあります。ただし、匿名・流動型犯罪グループとの関係や組織の潜在化も指摘されており、構成員数の減少だけで今後の犯罪情勢を判断することはできません。
2026年に確認できる最新の年間統計である2025年末のデータでは、六代目山口組が約6,300人で最大勢力となり、住吉会が約3,200人、稲川会が約2,600人で続いている。
一方、全国の暴力団構成員等は約1万7,600人まで減少し、暴力団対策法施行以降の最少を更新した。指定暴力団についても、2026年5月末時点で24団体となっている。
数字から見えるのは、従来型の暴力団組織が縮小を続けているという事実だ。しかし、分裂後の対立関係や匿名・流動型犯罪グループとの接点、組織実態の潜在化など、社会が警戒すべき問題は残されている。
日本のヤクザランキングを正しく理解するには、単なる人数の順位ではなく、構成員と準構成員等の内訳、指定制度、歴史的な勢力変遷を合わせて見ることが欠かせない。今後も警察庁が公表する年次統計を追うことが、日本の組織犯罪の実態を把握するうえで重要になる。
主な参考資料:警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」、警察庁「令和7年版警察白書」、全国暴力追放運動推進センター「暴力団情勢」、静岡県警察「暴力団対策」(2026年6月4日更新)、nippon.com「日本の組織犯罪:暴力団勢力は2025年末で過去最少の1万7600人」(2026年4月22日公開)、e-Gov法令検索「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」。