四宮義俊は、日本画家・美術家・アニメーション作家という複数の顔を持つクリエイターです。アニメーション業界に最初から所属していた人物ではなく、絵画を出発点として、映像、広告、映画へと表現領域を広げてきました。
基本プロフィール| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | 四宮義俊(しのみや・よしとし) |
| 生年 | 1980年 |
| 出身地 | 神奈川県 |
| 職業 | 日本画家・美術家・アニメーション監督 |
| 出身大学 | 東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻 |
| 大学院 | 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了 |
| 主な活動 | 日本画、映像作品、アニメーション、広告、CM |
| 長編監督デビュー | 『花緑青が明ける日に』 |
プロフィールの基本情報は、東京藝術大学の卒業・修了記録、台東区の美術館資料、作品関係者の紹介などから確認できます。
東京藝術大学で9年間、日本画を研究四宮は2003年に東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業。その後、修士課程を経て、2008年に博士後期課程を修了しました。
大学時代から日本画家として活動しており、2003年の卒業・修了制作展ではサロン・ド・プランタン賞と台東区長賞を受賞しています。
注目したいのは、単に日本画の技法を習得しただけではない点です。
日本画で使用する顔料や紙、植物などの素材そのものに関心を持ち、絵画が成立する仕組みを研究してきました。後年のアニメーション作品にも、こうした素材への理解が色濃く反映されています。
2026年のデジタルハリウッド大学での講演では、東京藝術大学で9年間日本画を学んだ経験や、大学院時代に日本画の原材料となる植物を育てた経験についても紹介しています。
日本画家としての受賞・展示活動四宮のキャリアは、アニメーション作品への参加以前から始まっています。
代表的な活動として挙げられるのが、2011年の作品《ファンク》です。絵画にとどまらず、立体的な構造や空間表現を取り入れた作品であり、平面と立体の境界を探る姿勢がうかがえます。
また、2012年には個展「FudgeFactor」を開催。国内の個展やグループ展にも継続的に参加してきました。
2016年には東京国際フォーラムで「緑奏〔四宮義俊緑の仕事〕」を開催。植物や緑を主題とした作品群を紹介し、絵画と商業ビジュアルの両方で培った表現力を示しました。
【四宮義俊の経歴・代表作品一覧】アニメーション監督への転換点

四宮のアニメーションにおけるキャリアを理解するには、作品名だけでなく、それぞれの作品でどのような役割を担当したのかを区別する必要があります。
背景美術、ポスターイラスト、特殊な作画、演出、水彩画など、参加方法は作品ごとに異なります。
主要作品と担当内容| 年・時期 | 作品・活動 | 担当・関係 |
|---|---|---|
| 2011年 | 《ファンク》 | 日本画・立体表現 |
| 2012年 | 『水槽の虎(Fudge Factor)』 | 自主制作の短編映像作品 |
| 2013年 | 『言の葉の庭』 | イメージボード、背景美術、ポスターイラスト |
| 2016年 | 『君の名は。』 | 回想シーンのパート演出・原画・撮影 |
| 2016年 | 『この世界の片隅に』 | 劇中の水彩画 |
| 2017年 | 『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』 | 20周年記念ビジュアル |
| 2018年 | 『トキノ交差』 | 監督 |
| 2018年 | 『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』 | 公開記念アート |
| 2019~2020年 | ポカリスエットのアニメーションCM | 監督・キャラクターデザイン・美術監督など |
| 2026年 | 『花緑青が明ける日に』 | 原作・脚本・監督 |
作品の担当情報は、コミックス・ウェーブ・フィルム、作品公式情報、アニメーション関連媒体などの公開記録に基づいています。
『言の葉の庭』で示した日本画的な風景表現新海誠監督の『言の葉の庭』(2013年)は、四宮のアニメーション分野での仕事を知るうえで欠かせない作品です。
担当したのは、イメージボード、背景美術、ポスターイラストなど。
雨に濡れた庭園、木々の緑、東屋の静けさなど、作品を象徴する風景表現に関わっています。
とりわけポスターイラストは、四宮の絵画的な感覚を理解するうえで重要です。
アニメーションの一場面を単に静止画にするのではなく、1枚の絵として成立する構図や色彩を追求している点が特徴です。
『言の葉の庭』への参加は、絵画を専門としてきた四宮が、映像作品のビジュアル制作に本格的に関わっていく節目となりました。
『君の名は。』では印象的な回想シーンを担当2016年公開の『君の名は。』では、主人公・立花瀧が宮水三葉の人生を幻視する回想シーンに参加しています。
具体的な担当は、パート演出・原画・撮影です。
この場面は、物語の時間軸や登場人物の記憶が交錯する重要なシークエンスです。通常の背景美術とは異なり、映像の流れや画面構成、作画表現を一体として考える必要があります。
日本画を基盤に持つ四宮が、映像の時間的な展開にまで表現領域を広げた仕事として注目できます。
『この世界の片隅に』では劇中の水彩画を担当片渕須直監督の『この世界の片隅に』(2016年)では、劇中に登場する水彩画を担当しています。
ここで重要なのは、四宮が作品全体の監督や背景美術を担当したわけではないという点です。
主人公すずが描く絵という、物語の中に存在する絵画表現に関わりました。
日本画家としての技術を、アニメーションの登場人物が描く作品へと持ち込んだ仕事です。
『言の葉の庭』では背景やポスター、『君の名は。』では回想シーン、『この世界の片隅に』では水彩画と、同じアニメーション映画でも担当領域が異なっています。
CMや短編映像でも監督として活動四宮の仕事は劇場アニメだけではありません。
2012年の短編映像『水槽の虎(Fudge Factor)』や、2018年の『トキノ交差』など、自身の表現を映像作品として展開してきました。
また、インドネシア向けのポカリスエットのアニメーションCMでは、監督やキャラクターデザイン、美術監督などを担当しています。
特に実写映像とアニメーション、水彩的な表現を組み合わせる試みは、後の長編作品につながる重要な経験です。
【日本画家とアニメーション監督の二つの顔】四宮義俊の画風・表現の特徴
四宮の作品を見て特徴的なのは、人物や建物だけでなく、植物、光、空気、素材の質感までが画面の重要な要素になっていることです。
その背景には、日本画家として長年積み重ねてきた経験があります。
1.植物や自然を細部まで観察する四宮の表現を理解するうえで、植物への関心は欠かせません。
植物はアニメーションの背景を彩る装飾ではなく、それ自体が存在感を持つモチーフです。
2026年の大学講演でも、商業アニメーションでは動植物が定型的な表現になりやすいことに触れ、自身が日本画を学ぶ中で植物を描き続けてきた経験を強みとして挙げています。
大学院時代には、日本画の原材料となる植物を実際に育てた経験もありました。
実物を観察し、触れ、性質を理解することが、画面に説得力を与えるという考え方です。
2.緑色を中心とする独特の色彩設計四宮の仕事では、緑色が印象的な役割を果たしています。
『言の葉の庭』の植物表現や、日本画作品における緑の扱いなどに、その特徴が見られます。
ただし、単に鮮やかな緑を使うという話ではありません。
光の当たり方、背景との色の関係、植物の密度などを組み合わせ、画面全体の空気感を構築しているのです。
こうした色彩表現は、2026年の『花緑青が明ける日に』にも引き継がれています。
3.絵画として成立する構図を重視する四宮は、映像を単なるカメラワークの連続として捉えていません。
1枚の画面として見たときの美しさや、奥行きの感じ方を重視しています。
美術手帖のインタビューでは、日本画で培った感性を映像に投影することや、絵画的な表現を映像へ展開する試みについて語っています。
また、『花緑青が明ける日に』では、一般的な3Dベースのレイアウトとは異なる、人間の目で見たときの自然なパース感も意識したと説明しています。
4.手描きと異なる映像技法を組み合わせる四宮の特徴は、伝統的な日本画の表現だけにこだわることではありません。
手描き、実写、立体造形、ストップモーション、CGなど、異なる素材や技法を作品の目的に応じて組み合わせています。
特に『花緑青が明ける日に』では、フランスのMiyu Productionsとの共同制作により、ストップモーション映像も取り入れています。
重要なのは、技術を使うこと自体ではなく、異なる質感を画面の中でどう共存させるかという発想です。
【花緑青が明ける日にの制作背景】約10年の構想から長編監督デビューへ
2026年3月6日に全国公開された『花緑青が明ける日に』は、四宮義俊が原作・脚本・監督を務めた長編オリジナルアニメーション映画です。
英題は『A NEW DAWN』。
日本画家として活動してきた四宮が、これまで培った表現を長編映画という大きな舞台に持ち込んだ作品です。
物語のあらすじ:幻の花火「シュハリ」をめぐる青春ドラマ物語の中心となるのは、老舗花火工場「帯刀煙火店」で育った青年・帯刀敬太郎です。
町の再開発によって工場は立ち退きを迫られています。
敬太郎は、失踪した父に代わって、幻の花火と呼ばれる「シュハリ」を完成させようと奮闘しています。
そこへ、かつての幼なじみである式森カオルが帰郷します。
過去の出来事によって離れ離れになっていた若者たちは、思い出の詰まった場所で再び向き合うことになります。
主要キャストは次のとおりです。
- 帯刀敬太郎:萩原利久
- 式森カオル:古川琴音
- 帯刀千太郎:入野自由
- 帯刀榮太郎:岡部たかし
萩原利久と古川琴音は、本作でアニメーション映画の声優に初挑戦しました。
タイトルの由来となった「花緑青」とは?本作を象徴する重要なモチーフが、花緑青(はなろくしょう)です。
花緑青は、明治期などに使用された人工顔料の一種です。独特の鮮やかな青緑色を持ちますが、ヒ素を含む毒性のある顔料として知られ、現在では一般的な画材として使われなくなっています。
四宮がこの色に出会ったのは、大学時代に画材について学んでいた頃でした。
その後、本作の制作にあたり花火業者への取材を進める中で、昔の花火に「ハナロク」と呼ばれる色が使われていたことを知ります。
日本画の顔料として知っていた花緑青と、花火の世界で語られていたハナロクが結びついたのです。
この偶然のつながりが、映画のタイトルと物語を象徴する色彩の発想につながりました。
映画ナタリーの対談やGIGAZINEの監督インタビューでも、花火の色と顔料の関係について詳しく説明されています。
制作の出発点は、身近な風景が失われた経験映画の背景には、四宮自身が目にした風景の変化もあります。
ハリウッド・リポーター・ジャパンのインタビューによると、2016年頃、アトリエの前にあった空き地が突然ソーラーパネルで覆われたことが、作品の着想につながりました。
身近にあった風景が変わってしまうことへの戸惑い。
そこから、再開発によって失われていく場所と、そこに結びついた記憶を描く物語が形作られていきました。
本作に登場する花火工場の立ち退き問題も、単純な善悪の対立ではありません。
古い場所を守りたいという気持ちと、社会が変化していく現実。その間で揺れる若者たちの姿が描かれています。
当初は短編構想だった作品が76分の長編に制作過程も興味深いポイントです。
四宮によれば、企画は当初、短編作品としてスタートしました。その後、短編と長編の間で構想を見直し、脚本を何度も改稿しています。
企画書や制作体制を整える過程では、原作者としての立場や著作権の扱いにもこだわりました。
制作会社との調整を重ね、最終的には日本のアスミック・エース、スタジオアウトリガー、フランスのMiyu Productionsなどが関わる制作体制にまとまりました。
完成した映画の上映時間は76分です。
制作工程では、四宮自身が原作、脚本、監督に加え、キャラクターデザイン、作画監督、美術監督、色彩設計などにも参加しています。
加えて、Miyu Productionsがストップモーション映像を担当するなど、国際共同制作ならではの技法も取り入れられました。
【ベルリン国際映画祭に正式出品】2026年の評価と現在の活動
2026年の四宮義俊を語るうえで外せないのが、ベルリン国際映画祭への正式出品です。
第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に選出『花緑青が明ける日に』は、第76回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されました。
ベルリン国際映画祭は、カンヌ、ヴェネツィアと並ぶ世界的な映画祭です。
国内公開前から国際的な映画祭の競争部門に選ばれたことは、日本画家として活動してきた四宮の長編デビュー作にとって大きな節目でした。
映画祭での上映や海外への紹介を通じて、作品の存在が日本国内だけでなく、国際的な映画関係者にも届く機会となりました。
アヌシー国際アニメーション映画祭では審査員賞を受賞さらに注目したいのが、2026年6月に開催されたアヌシー国際アニメーション映画祭です。
『花緑青が明ける日に』は、長編コンペティションのコントルシャン部門に参加し、審査員賞を受賞しました。
これは単なる映画祭への招待や選出とは異なる、実際の受賞実績です。
ベルリン国際映画祭でのコンペティション部門正式出品に続き、アヌシーでも評価を獲得したことで、四宮の映像表現が国際的なアニメーションの文脈でも注目される結果となりました。
2026年9月には大学で制作経験を講演2026年9月4日には、デジタルハリウッド大学が四宮による特別講演の開催レポートを公開しました。
講演は同年7月21日に行われ、『花緑青が明ける日に』の制作経験を踏まえ、自分の強みをどのように作品へ生かすかがテーマとなりました。
特に印象的なのは、日本画家としての経験と商業アニメーションの仕事を、別々のキャリアとして考えていない点です。
植物を実際に育て、素材に触れ、長年描き続けてきた経験を、自身にしかできない表現の基盤として捉えています。
2026年11月現在、長編監督デビューと国際映画祭での評価を経て、四宮は日本画と映像の両方を手がける作家として活動しています。
【プロの結論】四宮義俊がアニメーション業界にもたらした独自性とは?
四宮義俊のキャリアを評価するとき、単に「日本画家がアニメ監督になった」という説明では不十分です。
本質的な特徴は、日本画で培った素材への理解を、アニメーションの構図・色彩・時間表現にまで広げていることにあります。
四宮義俊の仕事から読み取れる3つの強み1.背景を物語の一部として扱うこと
四宮の映像では、背景は登場人物の後ろに置かれた装飾ではありません。
植物や建物、土地の質感が、登場人物の記憶や感情と結びついています。『花緑青が明ける日に』で古い花火工場を舞台にしたことも、この考え方と深く関係しています。
2.異なる技法を一つの映像世界に統合すること
日本画、手描きアニメーション、実写、ストップモーションなど、異なる表現を組み合わせる姿勢は、従来のアニメーション制作の枠を広げる試みです。
技法の新しさそのものよりも、それぞれの素材が持つ質感を生かす点に強みがあります。
3.個人作家としての視点を商業映画に持ち込むこと
長編アニメーションは多くのスタッフによる共同制作です。
その中で、原作・脚本・監督を担い、自分の作家性を作品の中心に置いたことは大きな意味を持ちます。
これは、アニメーション業界で監督を目指す人にとっても興味深いキャリアのあり方です。
四宮義俊の作品を見るなら、ここに注目- 『言の葉の庭』:植物や雨、背景の色彩に注目したい人。
- 『君の名は。』:記憶や時間を表現する特殊な回想シーンに関心がある人。
- 『この世界の片隅に』:物語の中の絵画表現に注目したい人。
- 『花緑青が明ける日に』:日本画とアニメーションが融合した映像表現をじっくり味わいたい人。
一方、テンポの速いストーリー展開や、人物の心理をすべて説明する作品を求める場合は、映像表現を中心に楽しむ視点も持っておくとよいでしょう。
【四宮義俊に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:四宮義俊は何歳ですか?
A1:1980年生まれです。2026年には46歳になる年代です。正確な誕生日は、紹介されているプロフィール資料では確認できません。
Q2:四宮義俊は東京藝術大学出身ですか?
A2:はい。東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業し、同大学大学院の博士後期課程を2008年に修了しています。
Q3:四宮義俊は『君の名は。』で何を担当しましたか?
A3:主人公の瀧が三葉の人生を幻視する回想シーンで、パート演出・原画・撮影を担当しました。
Q4:『この世界の片隅に』にも参加していますか?
A4:はい。片渕須直監督の2016年公開作品で、劇中に登場する水彩画を担当しています。作品全体の監督や背景美術を担当したわけではありません。
Q5:『花緑青が明ける日に』はいつ公開されましたか?
A5:2026年3月6日に全国公開されました。上映時間は76分で、日本とフランスの共同製作作品です。
Q6:ベルリン国際映画祭では受賞したのですか?
A6:第76回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されました。また、2026年のアヌシー国際アニメーション映画祭では、コントルシャン部門の審査員賞を受賞しています。出品と受賞は異なる実績です。
Q7:四宮義俊の本業は日本画家ですか、アニメーション監督ですか?
A7:日本画家としての活動を基盤に、映像やアニメーションにも取り組む美術家・作家です。2026年には『花緑青が明ける日に』で長編アニメーション監督デビューを果たしました。
四宮義俊は、東京藝術大学で日本画を学び、絵画や立体作品を発表しながら、アニメーション、CM、映像制作へと活動を広げてきました。
『言の葉の庭』のポスターイラストや背景美術、『君の名は。』の回想シーン、『この世界の片隅に』の水彩画など、参加作品は多岐にわたります。
そして2026年3月、初の長編監督作品『花緑青が明ける日に』を公開。同作は第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門への正式出品に加え、アヌシー国際アニメーション映画祭の審査員賞受賞という実績も残しました。
四宮の魅力は、単に美しい絵を描けることではありません。素材を観察し、自然の質感を理解し、それを映像の中で新しい表現へと変換する能力にあります。
日本画家としての専門性と、アニメーション監督としての創造性。その二つを切り離さずに発展させてきたことこそ、四宮義俊という作家の最大の特徴です。
今後、長編映画でどのような物語と映像表現を生み出していくのか。『花緑青が明ける日に』は、その作家性を知るための重要な出発点となっています。
主な参考資料:東京藝術大学関連資料・台東区ヴァーチャル美術館・コミックス・ウェーブ・フィルム・アスミック・エース・日本映画データベース(JFDB)・美術手帖・映画ナタリー・GIGAZINE・デジタルハリウッド大学・映像産業振興機構(VIPO)など。