メガネブランド「Zoff(ゾフ)」と漫画家・イラストレーターの江口寿史氏をめぐる問題は、2018年の広告キャンペーンで使用されたイラストの制作経緯が、2025年10月に明らかになったことで大きな注目を集めました。特に焦点となったのは、納品されたイラスト4点のうち2点について、雑誌に掲載された写真をモデル本人や撮影者、出版社などの権利者に許諾を得ないまま参考にして制作していたという事実です。
2025年10月24日、Zoffを運営する株式会社インターメスティックは公式声明で調査結果を公表。広告代理店やZoffへの制作経緯の報告がなかったこと、モデルや出版社への説明、補償協議、広告制作の管理体制の見直しについても説明しました。さらに2026年には、江口氏の謝罪投稿の削除や作品展示をめぐる動きも報じられています。ここでは、公式発表と報道をもとに、問題の発端から現在までを整理します。
【問題の発端】Zoffと江口寿史の関係とは?2018年の広告企画を振り返る

まず押さえておきたいのは、Zoffと江口寿史氏の関係は、単発のイラスト掲載ではなく、全国の店舗で展開された広告キャンペーンだったという点です。
インターメスティックの公式発表によると、2018年、Zoffは広告代理店を通じて江口氏にキャンペーン用イラストを依頼しました。作品は描き下ろしとして納品され、同年9月下旬から12月中旬まで全国のZoff店舗で使用されました。
広告の展開先は複数にわたります。店頭POPやポスターだけでなく、メガネ拭き、ショッパーなど、顧客が店舗で目にしたり手に取ったりする販促物にもイラストが採用されていました。
江口氏は『すすめ!!パイレーツ』『ストップ!!ひばりくん!』などの漫画作品で知られ、1980年代以降は広告や雑誌、書籍カバーなどでも活躍してきたイラストレーターです。都会的な女性像やファッション性の高い描写は、広告ビジュアルとの親和性も高く、企業とのコラボレーションが成立した背景には、こうした実績がありました。
ところが2025年10月、別の広告ビジュアルをめぐる写真の無断使用問題が浮上。その影響で、過去の江口氏の作品にも注目が集まり、Zoffの2018年キャンペーンについても写真との類似性が指摘されました。
2025年10月4日、Zoff側は公式発表で事実関係を精査していると説明。モデルとされる人物からの指摘を受け、調査に着手したことを明らかにしました。
2018年から2025年までの経緯今回の問題は、広告が制作された2018年から、制作経緯の調査結果が公表された2025年まで約7年の時間を経て表面化しました。
出典:インターメスティック公式発表、ITmedia NEWS、J-CASTニュース、SmartFLASHの報道をもとに整理。
【核心】Zoffのイラスト4点中2点で何が起きた?雑誌写真の無許諾使用と調査結果
今回の問題で最も重要なのが、2018年に納品された4点のイラストについて、制作方法がすべて同じではなかったという点です。
2025年10月24日の公式声明では、江口氏本人への確認と広告代理店など関係者への調査を実施した結果、4点のうちSNS上で指摘されていた2点について、雑誌に掲載された写真を権利者の許諾なく参考に制作したとの説明があったと報告されました。
4点のうち2点は雑誌写真を無許諾で参考に制作インターメスティックが公表した調査結果の内容は、次のとおりです。
- 問題が指摘された2点: 雑誌に掲載された写真を、モデル本人、撮影者、出版社などの権利者から許諾を得ないまま参考にして制作。
- 残る2点: 江口氏の知人をモデルとし、その本人が撮影した写真をもとに制作。
ここで注意したいのは、公式発表が「参考に制作した」と説明していることです。4点すべてが盗用だったという話ではありません。また、問題の2点についても、公式発表の表現は雑誌写真を無許諾で参考にしたというものであり、すべての制作工程で完全なトレースが行われたと断定したものではありません。
加えて、制作当時、写真を参考にしたという経緯について広告代理店およびインターメスティックへの報告はなかったとされています。
つまり、今回の問題には、イラストの制作過程だけでなく、制作素材の出所を発注者側が把握できていなかったという、広告制作上の管理問題も含まれていました。
雑誌写真を参考にしたことは、なぜ問題になったのか「問題の本質は、制作過程において権利への配慮が不足していた点と、権利許諾の確認および報告の手続が不十分であった点にあります」 インターメスティックの2025年10月24日付公式声明より。
雑誌に掲載されている写真は、一般に誰でも自由に商業利用できる素材ではありません。
写真には撮影者の著作権が発生します。撮影者から出版社に利用許諾や権利譲渡が行われている場合もありますが、掲載されたからといって第三者が自由にイラスト制作や広告利用に転用できるわけではありません。
今回のように、写真をもとに広告イラストを制作し、全国の店舗で販促物として展開する場合には、写真の著作権だけでなく、被写体となった人物の権利も検討する必要があります。
特に広告は、個人的な練習や趣味の作品とは異なり、企業のブランドイメージや商品販売に結び付く商業利用です。制作段階で写真の出所と利用条件を確認することが欠かせません。
なお、今回の公式発表では、雑誌名、写真の撮影者名、モデルの実名などは公表されていません。関係者のプライバシーに関わる情報を、SNS上の推測だけで特定することは適切ではありません。
この調査結果はITmedia NEWSやファッション業界メディアのFASHIONSNAPなどでも報じられ、問題は単なるイラストの類似性から、権利処理と広告制作の責任へと議論の中心が移りました。
【法律と制作手法】著作権侵害と肖像権の違い、トレースと写真参考は何が違う?
Zoffと江口氏の問題を正しく理解するには、「著作権」「肖像権」「トレース」「写真を参考にすること」を分けて考える必要があります。
インターネット上では、写真を見て描くこと自体が違法であるかのような議論も見られますが、実際には制作方法だけで一律に違法性が決まるわけではありません。
著作権と肖像権は別の権利最初に、著作権と肖像権は保護する対象が異なります。
著作権は、創作された写真やイラストなどの著作物を保護する権利です。一方、肖像権は、人が自分の顔や姿を無断で撮影されたり、みだりに公開・利用されたりしないための人格的利益に関わる権利です。
肖像権は著作権法のように単独の法律で明文化された権利ではなく、判例によって認められてきました。政府関係の知的財産権資料でも、写真の著作権を処理した場合でも、被写体の肖像権について別途検討する必要があると整理されています。
参考:文化庁「他人の著作物を利用したい場合など」、政府関係資料「肖像権ガイドライン」。
重要なのは、写真の著作権者と被写体本人が同じ人物とは限らないことです。
例えば、雑誌の写真では、撮影者が著作権を持ち、モデル本人には肖像権などの人格的利益が関係します。出版社も契約や利用許諾の内容によって権利関係に関わります。
そのため、撮影者の許諾だけを取得すれば、すべての権利処理が完了するとは限りません。
トレースと写真参考の違いトレースとは、元となる画像や写真の輪郭、構図などをなぞり、線画などに反映させる制作技法です。
一方、写真参考は、写真からポーズ、服装、光の当たり方、構図などの情報を得て、それをもとに新たな作品を描くことを指します。
両者は必ずしも対立するものではありません。写真を参考にする過程で、最初に輪郭をなぞって構図を確認し、その後に大きく描き直すこともあります。
しかし、トレースしたから必ず著作権侵害になるわけでも、写真を参考に描いただけなら必ず問題がないわけでもありません。
著作権上は、元の写真にある創作的な表現をどの程度利用しているか、複製や翻案に当たるか、権利制限規定が適用されるかなど、個別の事情を検討する必要があります。
つまり、制作手法の名称ではなく、元の著作物のどの部分をどのように利用し、どのような条件で公開・商業利用したのかが判断のポイントになります。
モデル・撮影者・出版社への許諾はどう考えるべきか広告制作の現場では、少なくとも次のような確認が必要です。
- モデル本人: 肖像の広告利用について、必要な同意や契約があるか。
- 写真の撮影者: 写真の複製・翻案などに関する著作権処理ができているか。
- 出版社: 掲載写真に関する権利や契約上の利用条件を確認できているか。
- 広告代理店: 制作素材の出所と許諾状況を把握し、発注企業に説明できるか。
- 広告主: 納品物だけでなく、制作素材や利用許諾の確認記録を管理できているか。
これらの確認を怠ると、完成したイラスト自体が独自の表現に見えても、制作に使用した素材の権利処理をめぐって問題が生じる可能性があります。
今回の問題は、クリエイターの表現の自由と、素材の権利者や被写体の権利をどう両立させるかという、広告業界全体に関わる課題を浮き彫りにしました。
【関係者の責任】Zoff・江口寿史・広告代理店・モデルへの説明と補償協議
今回の件では、誰がどのような役割を担っていたのかを整理することも重要です。
インターメスティックの公式発表では、江口氏、広告代理店、Zoff、モデル、所属事務所、出版社など複数の関係者が登場します。それぞれの立場と、公式に確認できる対応は異なります。
関係者と役割の整理江口寿史氏
キャンペーン用イラストの制作者です。問題となった2点について、雑誌写真を権利者の許諾を得ないまま参考にして制作したと説明したことが、インターメスティックの発表で明らかになりました。
一方、残る2点は、知人をモデルとして本人が撮影した写真をもとに制作したとされています。
インターメスティック・Zoff
広告の発注企業側です。調査結果を公表し、モデル、所属事務所、出版社に制作経緯を説明しました。加えて、江口氏と広告代理店に対して誠意ある対応を求める姿勢を示しています。
広告代理店
2018年の企画で江口氏への制作依頼を仲介した立場です。公式発表では、写真を参考にしたという制作経緯は、当時、広告代理店にも報告されていなかったと説明されています。
広告代理店の具体的な社名や、個別の契約内容、内部の確認体制については、公式声明では詳しく公表されていません。
モデル・所属事務所・出版社
写真の被写体や権利関係に関わる当事者です。インターメスティックは、モデル本人、所属事務所、出版社に対して経緯を説明し、謝意を伝えたと報告しました。
モデルや出版社への説明は済んだのか2025年10月24日の公式声明によると、モデル本人、所属事務所、出版社には経緯を説明し、謝意を伝えた結果、宥恕を得たとされています。
「宥恕」とは、相手の事情を理解して許すことを意味します。ただし、この説明をもって、すべての補償問題や金銭的な精算まで完了したと理解することはできません。
実際、同じ声明では、補償について別途協議を進めることが明記されていました。
江口寿史の補償協議は現在どうなっている?読者が特に気になるのが、江口氏による補償が実際に行われたのかという点でしょう。
公式発表で確認できるのは、補償について江口氏、広告代理店、関係者間で協議を進めることになったという内容です。インターメスティック自身も、江口氏と広告代理店に対して誠意ある対応を取るよう働きかけを続けると説明しました。
しかし、2026年11月4日時点で、Zoff案件について補償金額、支払い完了日、最終的な合意内容などを公表した追加の公式発表は確認できていません。
したがって、補償協議が完了したとも、未解決のままであるとも断定できない状況です。2025年10月24日の発表に記載された協議方針と、その後の具体的な進捗は区別して見る必要があります。
【Zoffの対応】店頭POP・ポスターの問題と再発防止策、広告管理体制の課題
今回の問題は、江口氏個人の制作手法だけでなく、企業が広告を発注・管理する際の責任についても考えるきっかけとなりました。
特にZoffのキャンペーンは、2018年9月下旬から12月中旬にかけて全国の店舗で展開されており、イラストが使用された媒体も複数に及びました。
Zoffは問題発覚後にどう対応した?インターメスティックの対応は、大きく分けて3段階です。
第1段階:2025年10月4日の初期対応
事実関係を精査していると発表し、モデルとされる人物や関係者に心配・迷惑をかけたことについて謝罪しました。
第2段階:2025年10月24日の調査結果公表
江口氏や広告代理店など関係者への調査を実施し、4点中2点で雑誌写真を無許諾で参考にしていたという説明を公表しました。
第3段階:再発防止方針の提示
広告制作における権利関係の確認と管理体制を見直し、同様の問題を防止するための措置を講じる方針を明らかにしました。
ただし、公式声明で具体的に示されているのは再発防止の方向性です。権利確認を担当する部署の新設や、チェックシートの導入、契約書の改定など、個別施策の実施状況までは公表されていません。
広告代理店への報告と責任が問われる理由広告制作は、一般的にクリエイターだけで完結する仕事ではありません。
広告主が企画を立案し、代理店が制作を仲介し、クリエイターが作品を納品するという複数の工程があります。
この仕組みでは、完成したイラストが魅力的であることと、素材の権利処理が適切であることは別問題です。
今回、制作経緯が広告代理店やZoffに報告されていなかったという事実は、納品時の権利確認が十分に機能していなかった可能性を示しています。
広告主にとっては、クリエイターの知名度や過去の実績だけを信頼するのではなく、第三者の写真・画像を使用していないか、使用している場合は必要な許諾があるかを確認できる仕組みが必要です。
今後の広告管理体制で必要になる5つの対策今回の事例を広告業界全体の課題として考えるなら、次のような管理体制が有効です。これらは再発防止に向けた実務上の提案であり、Zoffがすべて導入済みと公表した施策ではありません。
1. 素材の出所を記録する: 写真や画像の入手先、撮影者、権利者を制作段階で記録する。
2. 許諾状況を文書化する: モデル、撮影者、出版社などの利用条件を確認する。
3. 制作過程を可視化する: ラフや参考資料を発注企業と共有し、問題のある素材が含まれていないか確認する。
4. 契約内容を明確にする: 権利処理の担当者、保証内容、問題発生時の対応を契約で定める。
5. 納品後の確認を行う: 広告の公開前に権利関係を再確認し、記録を保存する。
広告は企業の信用を支える重要な資産です。クリエイターの独創性を尊重することと、第三者の権利を守ることは両立できます。むしろ、適切な管理体制があってこそ、安心してクリエイティブな仕事を発注できる環境が整います。
今回のZoffの声明が示した「権利許諾の確認」と「報告手続」の問題は、広告主と制作会社の双方にとって、見直すべき要点です。
【2026年最新】江口寿史のその後は?謝罪投稿の削除と現在の評判
2025年10月のZoffの調査結果公表後も、江口寿史氏をめぐる問題は別の企業案件や作品の公開を通じて続きました。
特に注目されたのが、2025年12月30日に江口氏が自身のXで発表した長文の説明です。
2025年12月30日、江口寿史が制作手法について説明江口氏は一連の問題について、自身の制作手法や写真に対する認識を説明しました。
その中で、写真を参考にすることは以前から行ってきた制作方法であり、雑誌の写真を絵を描くための「資料」と認識していたと述べています。
また、トレースについては、最初期の下描き段階で構図やレイアウトを決めるための「アタリ」程度だと説明しました。
一方で、写真の被写体となった人物への配慮が不足していたことを認め、自身の認識を改めていく必要があるという趣旨の反省も示しました。
ただし、これは江口氏自身による一連の問題への説明であり、Zoff案件についての補償完了や、関係者全員との最終合意を意味する発表ではありません。
この説明はITmedia NEWSやスポニチなどでも取り上げられました。
2026年3月、謝罪投稿の削除が報道される2026年3月19日、J-CASTニュースは、江口氏が2025年12月30日にXへ投稿した謝罪・説明文が、同年3月19日までに確認できなくなっていたと報道しました。
この投稿では、発端となった中央線文化祭2025のイラストについて、本人に直接連絡して謝罪し、弁護士を通じて双方合意のうえで和解したという説明も行われていました。
投稿が削除されたことについては、SNSや報道で改めて関心が集まりました。ただし、削除の理由について確定した説明が公表されたわけではありません。
また、中央線文化祭の問題とZoffの2018年広告問題は関連する一連の騒動ではあるものの、それぞれ制作経緯や関係者、権利処理が異なる案件です。混同しないことが大切です。
2026年4月、地元・柏市でも作品の公開中止が報じられる2026年4月には、千葉県柏市が江口氏に依頼した市制施行70周年記念のイラストについて、公開を中止したとSmartFLASHが報じました。
対象は2024年に制作・公開された柏駅西口の男女を描いた作品です。広報誌『広報かしわ』2024年11月号の表紙や、展示用パネルなどにも使用されていました。
報道によれば、作品は2025年10月から公開が一時休止されており、2026年4月3日に市が公開中止を発表したとされています。
これはZoff案件とは別の自治体の制作案件ですが、過去の写真利用問題が、作品の継続的な公開や自治体・企業の起用判断にも影響していることを示す動きです。
2026年もイラストレーターとしての活動は続いている一連の問題があった一方で、江口氏の創作活動そのものがすべて停止したわけではありません。
2026年8月22日から29日には、京都の思文閣京都本社で展覧会「江口寿史のこれまでとこれから。」が開催されました。
同展では、漫画家としての代表作や長年のイラストレーション活動を振り返るとともに、今後の創作活動も紹介されました。江口氏は1977年に漫画家デビューし、『すすめ!!パイレーツ』『ストップ!!ひばりくん!』などの作品を手掛けてきた人物です。
2026年にも展覧会が開催されたことは、作家としての活動が継続していることを示す一方、過去の広告制作における権利処理の問題が解消されたことを意味するものではありません。
江口寿史に対する2026年の評判はどう変化した?2026年の評価は、単純に好意的・否定的のどちらかにまとめられる状況ではありません。
江口氏の長年の漫画・イラスト作品を評価する声がある一方で、写真の権利処理や制作経緯の説明、謝罪投稿の削除などを問題視する見方も報道されています。
特に今回の問題では、次の3つの論点が評価を分けています。
- 作品そのものの評価: 長年の画業や独自の絵柄に対する評価は、権利処理の問題とは分けて考えるべきだという見方。
- 制作方法への評価: 写真を参考にする技法自体と、権利者の許諾を得ずに商業利用することは別問題だという見方。
- 説明責任への評価: 問題発生後の説明や関係者への対応、継続的な情報発信を重視する見方。
なお、これらは報道で紹介された論点の整理であり、世論調査による賛否の割合を示すものではありません。
2026年11月時点で重要なのは、江口氏の作品の評価と、広告制作における権利処理・説明責任の評価を切り分けることです。
【プロの結論】Zoffと江口寿史の問題から見える広告業界の本質
今回の問題を振り返ると、最も重要なのは、トレースという技法そのものではなく、第三者の写真を利用する際の権利確認と、制作経緯を発注企業に説明する仕組みが十分だったのかという点です。
江口氏のように長年の実績を持つクリエイターであっても、第三者の写真を商業イラストに利用する際には、その写真の権利者や被写体に対する配慮が必要です。
また、広告主側も、著名なクリエイターに依頼したからといって、制作物の権利関係まで自動的に適正化されるわけではありません。
今回の問題で理解しておきたい3つのポイント1. オリジナルのイラストでも、素材の権利問題は残る
写真をもとに独自のタッチで描き直したとしても、元写真の著作権や人物の肖像に関する問題が当然に消えるわけではありません。
完成品の見た目だけでなく、制作に使った素材とその利用条件を確認することが必要です。
2. クリエイターと広告主の双方に確認体制が必要
制作した本人だけでなく、広告代理店や発注企業にも、制作素材の出所や許諾状況を確認する仕組みが大切です。
特に全国規模の広告キャンペーンでは、一度公開されたビジュアルが複数の媒体に広がるため、公開前の確認が重要です。
3. 謝罪と補償、再発防止は別々に検証する
関係者に謝意を伝えたこと、補償について協議していること、再発防止策を発表したことは、それぞれ別の対応です。
企業の発表を読む際には、何が完了し、何が方針として示され、何が協議中なのかを区別する必要があります。
Zoffのケースでは、2025年10月24日に調査結果と再発防止の方向性が示されました。しかし、補償の具体的な結果や再発防止策の運用状況については、別途確認が必要です。
Zoffと江口寿史の問題に関するよくある質問(FAQ)
Q1:Zoffと江口寿史の問題は何が原因だった?
A1:2018年のZoffキャンペーンで使用されたイラスト4点のうち2点について、雑誌に掲載された写真をモデル本人や撮影者、出版社などの権利者から許諾を得ずに参考にして制作したと、2025年10月24日の公式発表で明らかになったことが発端です。
Q2:Zoffのイラスト4点すべてが無断トレースだった?
A2:いいえ。公式発表では、4点のうち2点は雑誌写真を無許諾で参考にして制作したとの説明があり、残る2点は江口氏の知人をモデルとして、本人が撮影した写真をもとに制作されたとされています。
Q3:Zoffの公式声明はいつ発表された?
A3:2025年10月24日です。インターメスティックが調査結果と今後の対応方針を公式サイトで公表しました。なお、10月4日にも事実関係を精査するという初期声明が発表されています。
Q4:モデルや出版社への謝罪は済んでいる?
A4:インターメスティックは、モデル本人、所属事務所、出版社に経緯を説明し、謝意を伝えた結果、宥恕を得たと発表しています。ただし、補償協議の完了とは別の話です。
Q5:江口寿史の補償協議は2026年に完了した?
A5:2026年11月4日時点で、Zoff案件の補償金額や支払い完了を示す追加の公式発表は確認できていません。2025年10月24日の声明では、江口氏、広告代理店、関係者間で協議を進めると説明されていました。
Q6:トレースや写真を参考にすること自体が違法なの?
A6:必ずしも違法ではありません。トレースはイラスト制作の技法の一つです。ただし、元写真の著作権で保護される表現を無許諾で利用した場合などは、著作権侵害が問題になる可能性があります。また、被写体の肖像権なども別途検討する必要があります。
Q7:江口寿史は2026年も活動している?
A7:はい。2026年8月には京都の思文閣京都本社で展覧会「江口寿史のこれまでとこれから。」が開催されました。ただし、創作活動の継続とZoff案件の補償・権利問題の解決は別の問題です。
Zoffと江口寿史氏をめぐる問題は、2018年の広告キャンペーンで使用された4点のイラストのうち2点について、雑誌写真を権利者の許諾なく参考に制作したという説明が、2025年10月24日に公表されたことで明確になりました。
インターメスティックは、モデル本人や所属事務所、出版社への説明と謝意を伝えたことを報告し、江口氏と広告代理店、関係者間で補償協議を進める方針を示しました。また、広告制作における権利確認や管理体制の見直しも表明しています。
2026年には、江口氏の謝罪投稿の削除や柏市による別案件の作品公開中止なども報道され、問題はZoffの広告企画だけにとどまらない広がりを見せています。一方で、江口氏は2026年も展覧会を開催するなど創作活動を続けています。
今後、注目すべきなのは、Zoff案件の補償協議がどのような形で決着するのか、インターメスティックが発表した再発防止策が具体的にどこまで実施されるのかという2点です。
今回の事例が示した教訓は明確です。優れた作品を生み出す創造性と、他者の権利を尊重する責任は両立しなければなりません。広告の信頼性を支えるのは、完成したビジュアルの魅力だけではなく、その作品がどのような素材と手続きによって生み出されたのかという透明性でもあります。