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【犯人の正体】赤報隊事件の真相は判明しているのか?

桜庭 準 桜庭 準 • 更新: • 公開: • 読了約 13 分
目次

赤報隊事件で最も大きな疑問が、実行犯は誰だったのか、そして背後に組織的な関与があったのかという点です。

2026年11月現在、阪神支局襲撃の実行犯も、赤報隊を名乗った人物・組織の実体も、公的には特定されていません。

ただし、犯行声明や捜査対象をめぐって、いくつかの論点が長年議論されてきました。

右翼団体・新右翼との関係

犯行声明には、当時の政治状況や歴史認識に関係する主張が盛り込まれていました。

そのため、捜査では右翼団体や新右翼との関係が注目されました。

2024年12月の衆議院法務委員会でも、事件当時の犯行声明に登場する「統一戦線義勇軍別動赤報隊」という名称や、右翼関係者への捜査について議論されています。

しかし、政治的な主張が似ていることと、実際に銃撃を実行したことは同じではありません。特定の団体が犯行主体だったと確定する司法判断はありません。 【衆議院・第216回国会法務委員会】

統一教会との関係は確認されているのか

事件をめぐる議論では、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係も取り上げられてきました。

2023年2月の衆議院予算委員会では、朝日新聞阪神支局襲撃事件の捜査に際して、統一協会や国際勝共連合について捜査・調査を行ったのかという質問が出されました。

これに対し、当時の国家公安委員長は、すでに公訴時効が成立している一連の事件に関する質問として、回答を差し控えています。

この答弁は、捜査の有無を肯定したものでも、組織の関与を認定したものでもありません。団体名が議論に登場したことだけで、犯行との関係を断定することはできません。 【衆議院・第211回国会予算委員会】

2023年の文藝春秋による独自取材

時効成立から20年となった2023年には、文藝春秋が赤報隊事件の捜査資料や関係者の証言を取り上げた調査報道を掲載しました。

同誌の取材班は、警察庁や兵庫県警が1998年に作成したとされる捜査報告書を入手したと報じています。

記事では、重要捜査対象者のリストや、事件直後の資金提供をめぐる証言などが紹介されました。

こうした報道は、長年公にされてこなかった捜査の内側を考える材料になります。一方、関係者の証言や取材で得られた情報と、裁判で認定された事実は区別しなければなりません。

2026年現在も、特定の個人や団体を赤報隊事件の犯人と断定できる公的な結論は出ていません。 【文藝春秋・2023年5月9日】

犯人を特定できなかった理由は何か

事件が未解決に終わった背景には、次のような問題があります。

- 複数の都県にまたがる事件で、捜査対象が広域に及んだこと。
- 犯行声明による政治的な主張と、実際の実行犯を結び付ける証拠が必要だったこと。
- 阪神支局事件では実行犯が現場から逃走し、逮捕に至らなかったこと。
- 一連の事件の公訴時効が順次成立し、刑事訴追できる期間が終了したこと。

特に重要なのは、犯行声明を送った人物と、現場で銃撃した人物が同一だったのかという問題です。

声明文を作成した人物、実際に襲撃した人物、背後で計画を支援した人物が存在したとしても、それぞれの関係を立証する必要があります。

赤報隊という名称だけでは、こうした関係は明らかになりません。

【2002年・2003年の時効】なぜ犯人を起訴できなくなったのか

赤報隊事件

赤報隊事件を調べる際に混同されやすいのが、2002年と2003年という2つの時期です。

この違いは、阪神支局襲撃事件と、警察庁指定第116号事件全体の公訴時効を分けて考えると理解できます。

阪神支局襲撃事件は2002年5月3日に時効成立

1987年5月3日に発生した阪神支局襲撃事件では、当時の殺人罪の公訴時効期間は15年でした。

そのため、事件から15年が経過した2002年5月3日午前0時に殺人罪の公訴時効が成立しました。

小尻知博記者の命を奪った犯人が特定されないまま、殺人罪で刑事訴追できる期間が終了したのです。

一連の指定事件は2003年3月までに時効成立

阪神支局事件以外にも、東京本社や名古屋本社社員寮への銃撃、静岡支局爆破未遂、江副浩正元会長宅への銃撃がありました。

これらはそれぞれ異なる犯罪事実として扱われ、時効の成立時期も同一ではありません。

2024年12月の衆議院法務委員会では、警察庁政府参考人が、平成15年3月までに指定第116号事件の全事件について公訴時効が成立したと説明しています。 【衆議院・第216回国会法務委員会】

2010年の殺人罪の時効廃止で再捜査・起訴は可能になった?

ここも誤解されやすいポイントです。

2010年4月27日、殺人罪など死刑に当たる犯罪について公訴時効を廃止する法改正が成立しました。

しかし、この改正は、施行時点ですでに公訴時効が完成していた事件を復活させるものではありません。

警察庁の犯罪被害者白書でも、改正法は施行時点で公訴時効が完成していない事件に適用されると説明されています。

つまり、2002年に時効が成立した阪神支局襲撃事件は、2010年の法改正によって再び殺人罪で起訴できる事件になったわけではありません。 【警察庁・犯罪被害者白書2011年版】

ここで押さえておきたいのは、次の3点です。

- 2002年5月3日:阪神支局襲撃事件の殺人罪が時効成立。
- 2003年3月:警察庁指定第116号事件の全事件で時効成立。
- 2010年4月:殺人罪などの公訴時効を廃止する法改正が成立。ただし、すでに時効となった事件には適用されない。

時効によって刑事訴追ができなくなったことと、事件の真相が解明されたことは、まったく別の問題です。

【赤報隊事件の現在2026】未解決事件として残る問題と新たな動き

2026年11月時点・未解決

事件発生から39年が経過した2026年現在も、赤報隊事件は未解決のままです。

その状況を裏付ける重要な公的記録が、2026年5月8日の衆議院法務委員会の答弁です。

警察庁政府参考人は、警察庁指定事件24事件のうち、被疑者の検挙に至っていない事件は2事件であり、その一つが赤報隊事件であると説明しました。

もう一つは、グリコ・森永事件として知られる警察庁指定第114号事件です。

赤報隊事件についても、指定対象となった5事件の概要と、2003年3月までに公訴時効が成立したことが改めて説明されています。 【衆議院・第221回国会法務委員会、2026年5月8日】

2025年に「令和赤報隊」を名乗る男が逮捕された事件

2025年には、赤報隊事件を連想させる別の事件も発生しました。

2025年5月3日、「令和赤報隊」を名乗る人物から朝日新聞阪神支局に脅迫文やおもちゃの銃が送られました。

兵庫県警は、脅迫と威力業務妨害の疑いで静岡県富士市の男を逮捕しました。

その後、2025年10月27日、神戸地裁はこの男に対し、懲役1年8カ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡しています。 【サンテレビ・2025年6月4日、10月27日報道】

ここで注意したいのは、2025年の「令和赤報隊」事件と、1987年の阪神支局襲撃事件は別の事件だという点です。

2025年の逮捕・有罪判決は、過去の襲撃事件の実行犯を特定したものではありません。1987年の事件との組織的なつながりが認定されたわけでもありません。

同じ名称を使用したことだけで、約38年前の未解決事件の真相が明らかになったと考えるのは誤りです。

言論の自由と報道機関への影響

赤報隊事件が現在も社会的に語り継がれる理由は、記者が取材や報道に携わる職場で命を奪われたという点にあります。

新聞社への銃撃は、特定の企業に対する暴力という枠だけでは捉えきれません。

報道機関が政治的・社会的な主張を理由に暴力で脅されれば、取材活動や情報発信そのものが萎縮する可能性があります。

2026年5月3日の39年目の追悼行事では、朝日新聞大阪本社の編集局長が、事件について次のように述べています。

事件は言論の自由や民主主義社会への挑戦です。

また、同氏は、現在のSNS上での集団的・攻撃的な言葉の広がりにも言及し、こうした状況を食い止める努力の必要性を訴えました。 【ABCテレビ・2026年5月3日報道】

当時の銃撃と現在のSNS上の攻撃は、手段も性質も異なります。しかし、意見や報道に対して威圧や暴力を用いることが、自由な言論を損なうという問題は共通しています。

【プロの結論】赤報隊事件から読み取るべき3つの教訓

赤報隊事件を歴史的な未解決事件として検証する際、特に重要なのは次の3点です。

1. 犯行声明と犯人の正体を混同しない

犯行声明は事件の背景や犯人側の主張を考える資料ですが、実行犯の氏名や所属を確定する証拠とは限りません。思想的な類似性だけで特定の人物や団体を犯人扱いすることは、事件の正確な理解を妨げます。

2. 公訴時効と真相解明を区別する

刑事訴追ができなくなったとしても、被害者の記憶や事件の記録まで消えるわけではありません。警察資料、報道記録、関係者の証言を歴史的に検証する意義は残っています。

3. 報道への暴力を社会全体の問題として考える

記者への襲撃は、報道機関だけの問題ではありません。市民が多様な情報を得て、自分の判断で社会について考えるための環境にも関係します。

赤報隊事件は、犯人が分からないという謎だけでなく、暴力によって言論を封じようとする行為に社会がどう向き合うかを問い続ける事件なのです。

【赤報隊事件】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:赤報隊事件の犯人は誰ですか?

A1:2026年11月現在、1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件を含む警察庁指定第116号事件の実行犯は特定されていません。右翼関係者や新右翼との関係などが議論されてきましたが、特定の人物・団体の犯行と認定された事実はありません。

Q2:赤報隊事件はいつ時効になりましたか?

A2:阪神支局襲撃事件の殺人罪は2002年5月3日に公訴時効が成立しました。東京・名古屋・静岡の事件やリクルート元会長宅銃撃を含む指定第116号事件全体では、2003年3月までにすべての公訴時効が成立しています。

Q3:赤報隊事件は2026年現在も捜査されていますか?

A3:指定第116号事件の公訴時効はすでに成立しており、通常の刑事訴追はできません。2026年5月の国会答弁でも、赤報隊事件は被疑者の検挙に至っていない警察庁指定事件として説明されています。2025年の「令和赤報隊」事件は別件です。

赤報隊事件は、1987年から1988年にかけて発生した、朝日新聞社関連施設やリクルート元会長宅などを狙った一連の襲撃事件です。

1987年5月3日の朝日新聞阪神支局襲撃では、小尻知博記者が死亡し、犬飼兵衛記者が重傷を負いました。

警察庁は一連の5事件を指定第116号事件として捜査しましたが、犯人を特定できないまま、2002年から2003年にかけて公訴時効が成立しました。

2026年11月現在も、実行犯や背後関係は明らかになっていません。

この事件を理解するうえで忘れてはならないのは、犯人の正体をめぐる謎だけではありません。小尻記者の命が奪われた事実、重傷を負った犬飼記者、そして報道機関への暴力が社会に与えた影響です。

未解決だからこそ、確認された記録と推測を区別しながら、事件の経緯と教訓を後世に伝えていく必要があります。

主な参考資料・報道記録

- 警察庁「昭和63年版警察白書」
- 警察庁「平成12年版警察白書」
- 衆議院「第211回国会 予算委員会」(2023年2月2日)
- 衆議院「第216回国会 法務委員会」(2024年12月18日)
- 衆議院「第221回国会 法務委員会」(2026年5月8日)
- 警察庁「犯罪被害者白書2011年版」
- ABCテレビ・2026年5月3日報道
- サンテレビ・2025年6月4日、10月27日報道
- 文藝春秋・2023年5月9日掲載記事

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