事故が起きたのは、2025年11月10日(月)午後2時ごろ。場所は群馬サファリパークのアジアゾーンにあるスマトラゾウの飼育エリアです。
園が2025年11月12日に公表した「スマトラゾウによる投石事案の発生と再発防止策について」によると、飼育されていたスマトラゾウが園内周遊バスに向けて石を投げ、その石によってバスの窓ガラスが破損しました。加えて、バスの近くにいた来園者1人が軽傷を負いました。
園長の北村昭二氏名義で公表された説明では、負傷者だけでなく、バスに乗っていた人や周辺にいた来園者にも謝罪しています。事故後は該当するバスの運行を直ちに停止し、応援バスを手配して乗客を移動させました。
投石事案はどのように発生したのか今回の事故で注目すべきなのは、ゾウが石を投げたことだけではありません。石が飼育エリアの外側にある周遊バスまで到達した経路が、園の公式説明で明らかになっている点です。
園によると、ゾウの飼育エリアには防護ネットが設置されていました。しかし、その一部がほつれて隙間ができており、石がその部分を通過してバス側に到達したと説明しています。
つまり、動物と来園者の間に設置されていた安全設備が、想定どおりに機能しなかったことが問題の核心です。
なお、公式発表で確認できるのは防護ネットのほつれと石の到達経路です。投石に至った動物の心理や具体的な行動理由について、園は詳細な分析結果を公表していません。
なぜスマトラゾウがバスに石を投げたのか園の説明には、過去にも動物型の装飾を施したバスに対する威嚇行動が確認されていたという記述があります。
このため、事故以前から防護ネットの設置、飼育エリア内の石の撤去、飼育員による監視強化などが行われていました。
動物型の装飾があるバスに対する威嚇行動と、今回の投石事故には関連する背景があります。ただし、装飾が投石の直接的な原因だったと断定できる発表はありません。
ここから見えてくるのは、動物の行動を予測するだけでは安全を確保できないという問題です。過去に威嚇行動が確認され、ネットやフェンスなどの設備が設置されていても、その設備に劣化が生じれば事故につながります。
動物の行動への対応と、設備の点検・維持管理を別々に考えず、一体的に管理する必要があります。
【事故原因と過去の事例】2024年のマレーバク咬傷事故・2016年の死亡事故

群馬サファリパークでは、2025年のスマトラゾウによる投石事故より前にも、動物による人身事故が発生しています。
特に重要なのが、2024年5月のマレーバクによる飼育員の重傷事故と、2016年8月のツキノワグマによる女性従業員の死亡事故です。また、1997年には一般来園者がベンガルトラに襲われて死亡する事故も起きています。
2024年5月20日:マレーバクが女性飼育員にかみつく2024年5月20日午後0時30分ごろ、マレーバクの展示場内で女性飼育係が母親のマレーバクに右腕をかまれる事故が発生しました。
群馬サファリパークの公式発表によると、女性飼育係は屋外展示場でマレーバクの親子と一緒におり、母親のマレーバクにトレーニングの一環としてブラッシングを行っていました。その最中に右腕をかまれたとされています。
負傷した女性は病院に搬送され、意識はあるものの重傷と発表されました。事故原因については、当初の公式発表では調査中とされています。
園が翌5月21日から実施するとした対策は、次のとおりです。
- 人と動物が同じ空間に入らない間接展示へ移行する。
- マレーバクへのブラッシングを中止する。
- 展示場の清掃や給餌は、マレーバクを獣舎に収容してから行う。
- その他の再発防止策についても検討する。
マレーバクの展示自体は継続する一方、親子を見学するバスツアーは実施を見合わせました。
この事故の特徴は、来園者ではなく、動物の世話をする立場の飼育員が負傷したことです。日常的なトレーニングやブラッシングであっても、動物と同じ空間に入る作業には危険が伴います。
飼育員の経験や動物との信頼関係だけに依存せず、人と動物の接触そのものを減らす仕組みが必要だと示した事故でした。
2016年8月16日:ツキノワグマによる女性従業員死亡事故2016年8月16日には、群馬サファリパークで女性従業員が飼育中のツキノワグマに襲われ、死亡する事故が発生しました。
当時のJ-CASTニュースの報道によると、亡くなったのは従業員の斎藤清美さん(46)です。園内の日本ゾーンを軽乗用車で巡回していた際、ツキノワグマが運転席側から車内に侵入し、左脇腹などをかんだと報じられています。
クマは当時5歳の雄で、体重は約160キロと報道されました。斎藤さんは搬送先の病院で出血性ショックにより死亡が確認されています。
この事故では、車の窓に設置されていたステンレス製パイプが折られていたことも報じられました。窓ガラスが割れていなかったことから、窓が開いていた可能性が指摘されています。
事故後、園は安全対策を見直し、2016年8月20日に営業を再開した際には、車両の窓により強度の高い鉄製格子を取り付ける対策などが報道されました。
この事故は、来園者だけでなく、施設で働く従業員にも重大な危険が及ぶことを示しています。一般来園者のマイカーと、飼育員が使う巡回車両では使用目的も構造も異なりますが、どちらも動物の力を過小評価できないという点は共通しています。
1997年8月2日:ベンガルトラに来園者夫婦が襲われ死亡さらに遡ると、1997年8月2日には、園内のトラの放し飼いエリアで来園者の夫婦が死亡する事故がありました。
当時のUPI通信の報道によると、家族は2台の車に分かれて園内を見学していました。泣いていた乳児を別の車に乗っていた母親に渡そうと、祖母が車外に出たところ、ベンガルトラに襲われました。祖父も助けようとして襲われ、夫婦ともに死亡しました。乳児は無事に救助されています。
この事故は、サファリエリアで車外に出ることがどれほど危険かを示す事例です。動物との距離が近い環境では、わずかな時間の降車であっても重大な結果につながる可能性があります。
群馬サファリパークの主な事故を時系列で比較それぞれの事故は、発生場所や被害者、直接的な経緯が異なります。混同を避けるため、確認できる内容を整理しました。
出典:UPI通信、J-CASTニュース、群馬サファリパークの公式発表。
この年表から分かるのは、事故を単純に「猛獣による事故」と一括りにはできないことです。
1997年は来園者の車外への退出、2016年は従業員の巡回車両に対する防護、2024年は飼育作業中の動物との接触、2025年は飼育エリアの防護設備がそれぞれ問題となりました。
事故の種類が違う以上、再発防止策も一律ではありません。来園者の行動管理、従業員の作業手順、動物の飼育環境、設備の保守点検をそれぞれ強化する必要があります。
【群馬サファリパークの再発防止策】防護ネット・フェンス・監視体制の見直し
2025年のスマトラゾウ投石事故について、園は事故以前から実施していた対策と、事故を受けて新たに実施するとした対策を分けて公表しています。
事故以前から実施されていた対策公式発表によると、スマトラゾウの飼育エリアでは、以前から次の安全対策が取られていました。
- 電気柵の設置:展示場の内側に設け、ゾウが来園者に近づける範囲を制限。
- フェンスの設置:防護用のフェンスを設け、さらに乗り越えを防ぐため高さを追加。
- 石の撤去:飼育エリア内にある石を取り除く。
- 飼育員の監視:動物の様子を監視する体制を設ける。
- バスの運行管理:周遊バスの停車位置や走行マニュアルを策定する。
こうした対策が実施されていたにもかかわらず、今回の事故では防護ネットのほつれが問題になりました。設備が設置されているという事実と、設備が常に正常な状態で機能していることは同じではありません。
2025年11月の事故を受けて発表された対策園が事故後に示した再発防止策は、次の4項目です。
- 防護ネットの補修と強化:事故の直接的な到達経路となったネットのほつれを補修し、強化する。
- 飼育エリア内の石の追加撤去:石が外部へ飛ばされる可能性を減らす。
- 飼育員による監視体制の強化:監視を一層強化し、その運用を徹底する。
- 周遊バスの運行マニュアル再確認:停車位置と走行方法を再確認し、徹底する。
特に防護ネットの補修・強化については、公式発表で「即時実施」とされています。
再発防止策で重要なのは設備の設置後の管理今回の事故を安全管理の観点から見ると、重要なのは防護ネットを補修することだけではありません。
防護ネットは設置した瞬間から、風雨や動物の接触などによって劣化する可能性があります。ほつれや破損が発生した場合、隙間がどの程度まで広がれば危険なのかを判断し、来園者の通行を止める基準も必要です。
また、石の撤去についても、一度取り除けば永久に安全というわけではありません。動物が新たに石を掘り出したり、別の場所から運んだりする可能性も考慮した継続的な確認が大切です。
周遊バスの停車位置や走行ルールも同様です。停車時間を短くするだけではなく、動物の行動や設備の状態に応じて運行方法を変更できる仕組みが重要になります。
なお、2026年11月4日時点で確認できる園の事故発表には、これらの対策を実施するとした記述がありますが、各対策の完了日、点検頻度、効果検証の数値などをまとめた追加報告は確認できません。発表された対策と、その後の実施・検証状況は区別して理解する必要があります。
【サファリエリアの安全対策】マイカー利用時に守るべきルール
群馬サファリパークでは、マイカーまたは園内周遊バス、園内レンタカーなどを利用してサファリエリアを見学できます。
マイカー利用は自分のペースで動物を観察できる一方、動物が放し飼いになっているエリアを自家用車で走行するため、一般的な動物園の駐車場とは異なる注意が必要です。
マイカーで入園する際の必須ルール園公式サイトの「入園時の注意」では、以下のルールが案内されています。
マイカー利用時に守るべき基本事項
- ドアを完全にロックする。
- 絶対に車外へ出ない。
- 窓やサンルーフを絶対に開けない。
- 車内から動物にエサを与えない。
- アンテナを下げておく。
- 小さい子どもには必ずシートベルトやチャイルドシートを使用する。
- 緊急時はクラクションを鳴らして係員を呼ぶ。
これらは単なるマナーではなく、動物との接触や車内への侵入を防ぐための安全ルールです。
入園できない車種にも注意園の案内によると、オープンカー、トラック、キャンバストップなどの車両はサファリエリアに入場できません。キャンピングカーについても、仕様によっては入場を断られる場合があります。
該当する車両を利用している場合は、園内周遊バスや園内レンタカーを利用する必要があります。
緊急事態が発生した場合の行動マイカーで周遊している最中に動物が車に接近したり、車両に異常が起きたりした場合は、車から降りずにクラクションを鳴らして係員を呼ぶことが公式ルールです。
動物が車の近くにいるからといって、窓を開けて追い払おうとしたり、車外に出て状況を確認したりすることは避けてください。
園のFAQでも、緊急時にはクラクションを鳴らし、窓やドアを開けたり車から降りたりしないよう案内しています。
マイカーと園内周遊バスはどちらを選ぶべき?どちらを選ぶかは、車両の安全性や同行者の状況、見学時の希望によって判断するのが適切です。
園は、動物による自家用車の損傷が心配な場合には、園内周遊バスや専用レンタカーの利用を案内しています。一方、2025年には周遊バス自体が投石事故に遭っています。どちらの利用方法であっても、事故の可能性が完全になくなるわけではありません。
小さな子ども連れや、車両の窓・ドアを確実に閉めた状態での運転に不安がある人は、利用条件を確認したうえで園内周遊バスを選ぶのも一つの方法です。
反対に、マイカーで入園する場合は、車種の適合性、ドアロック、窓の閉鎖、子どものシートベルト着用を事前に確認しておくことが欠かせません。
【2026年最新情報】群馬サファリパークは現在営業している?事故後の状況
2026年11月4日時点で、群馬サファリパークの公式サイトには通常の入園案内やイベント情報が掲載されており、施設の営業情報も更新されています。
2025年11月の投石事故を受けて、園全体が長期休園しているという状況ではありません。公式サイトではスマトラゾウもアジアゾーンの動物として紹介されています。
事故後の公表情報で分かっていること2025年11月12日の事故発表では、ネットの補修・強化、石の追加撤去、監視体制の強化、バス運行マニュアルの再確認が示されました。
一方、2026年11月4日までに確認できた公開情報では、事故後の各対策について、完了日や具体的な検査結果を示す詳細な追跡報告は確認できません。
そのため、2026年時点の状況は次のように整理できます。
- 事故の発生:2025年11月10日のスマトラゾウによる投石事故は園が公式に認めている。
- 負傷状況:近くにいた来園者1人が軽傷。
- 原因:防護ネットのほつれによって生じた隙間が石の到達経路になった。
- 再発防止策:4項目の対策が公式発表されている。
- 2026年の状況:公式サイトでは通常の施設案内や動物紹介が継続して掲載されている。
- 対策の検証:補修完了や効果を示す詳細な公表資料は確認できない。
群馬サファリパークは、約36万平方メートルの敷地に約100種・1,000頭羽の動物を飼育・展示する施設です。複数の動物ゾーンがあり、マイカーや周遊バスを利用したサファリ体験を提供しています。
施設全体を一律に危険と判断するのではなく、どのエリアでどのような安全管理が行われているかを見ることが大切です。
特に今回の事故では、動物の行動を制限する設備と、来園者が移動する車両との間にある防護設備が焦点になりました。事故の再発防止を評価する際には、単に営業が続いているかではなく、設備の維持管理や異常時の運行停止基準などが明確になっているかが判断材料になります。
【群馬サファリパークの事故】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:群馬サファリパークの2025年11月の事故で何が起きた?
A1:2025年11月10日午後2時ごろ、スマトラゾウが園内周遊バスに向けて石を投げ、窓ガラスが破損しました。近くにいた来園者1人が軽傷を負いました。園は防護ネットのほつれと隙間が石の到達経路になったと説明しています。
Q2:群馬サファリパークでは過去に死亡事故が起きている?
A2:はい。1997年にはベンガルトラに来園者夫婦が襲われて死亡し、2016年にはツキノワグマに襲われた女性従業員が死亡しています。いずれも動物との距離や安全管理が重要であることを示す事故です。
Q3:2026年現在、群馬サファリパークは営業している?
A3:2026年11月4日時点では、公式サイトに通常の入園案内やイベント情報が掲載されています。2025年の事故を理由とする全園的な長期休園は確認されていません。ただし、当日の営業状況や展示内容は公式サイトで確認してください。
Q4:マイカーで入園するときに最も注意すべきことは?
A4:ドアを完全にロックし、窓やサンルーフを開けず、絶対に車外へ出ないことです。緊急時にはクラクションで係員を呼び、係員の指示に従ってください。
Q5:2025年の事故後、スマトラゾウは展示中止になった?
A5:事故発表では、スマトラゾウの展示中止について明確な記載はありません。2026年11月時点の公式サイトでもアジアゾーンの動物として紹介されています。ただし、実際の展示状況は当日の運営情報を確認する必要があります。
群馬サファリパークで2025年11月10日に発生したスマトラゾウの投石事故は、防護ネットのほつれによって生じた隙間から石が到達し、周遊バスの窓ガラスが破損、来園者が軽傷を負う結果となりました。
この事故の背景には、過去の威嚇行動に対応するための設備や監視体制が存在していたにもかかわらず、防護ネットの不具合を防げなかったという問題があります。
また、2024年のマレーバク咬傷事故、2016年のツキノワグマによる従業員死亡事故、1997年の来園者死亡事故を振り返ると、動物園の安全対策には来園者だけでなく、飼育員や従業員を守る仕組みも欠かせません。
【プロの結論】
今回の事故から読み取るべき要点は、サファリパークの安全性を判断するとき、動物の種類や過去の事故件数だけで評価してはいけないということです。
本当に重要なのは、次の3つです。
- 設備の信頼性:防護ネットやフェンスが設置されているだけでなく、劣化や破損を発見できる点検体制があるか。
- 異常時の対応力:動物の異常行動や設備の不具合が確認された際、バスの運行停止やエリアの規制を迅速に実施できるか。
- 利用者自身の安全意識:マイカー利用時に窓を開けない、車外に出ない、係員の指示に従うという基本を守れるか。
群馬サファリパークは2026年も営業情報を公開し、動物展示やサファリ体験を続けています。一方、2025年の事故後に発表された再発防止策については、実施状況や効果を示す情報のさらなる公開が、安全管理への信頼を高めるうえで重要です。
来園を予定している人は、最新の営業情報と入園時の注意事項を確認し、自分や同行者に合った入園方法を選んでください。動物の迫力を楽しむためにも、安全ルールを守ることが大前提です。