憲法改正とは、国の最高法規である憲法の条文を正式に変更することです。日本国憲法第96条では、衆議院と参議院それぞれの総議員の3分の2以上の賛成による国会発議と、その後に実施される国民投票での過半数の賛成を必要としています。つまり、国会議員だけで憲法を変更することはできず、最終的な判断を国民が担う仕組みです。
2026年11月現在、憲法改正をめぐる議論では、自衛隊の明記、緊急事態条項の創設、国会機能の維持、国民投票におけるインターネット広告や偽情報への対応などが主要な論点になっています。加えて、2026年7月には憲法改正国民投票法の一部改正が成立し、10月31日に施行されました。憲法そのものを変える手続きと、国民投票を実施するための法律を整える動きが並行して進んでいます。
この記事では、憲法改正の意味と目的、日本国憲法第96条の規定、具体的な手続き、賛成・反対それぞれの理由、そして2026年11月時点の国会の動向まで、制度と政治の両面から整理します。
【基本知識】憲法改正とは?意味と目的をわかりやすく解説

憲法改正とは、現在定められている憲法の条文を、正式な法的手続きに従って変更することです。
憲法は、国の政治や行政の基本的な仕組みを定めるとともに、国民の権利と自由を保障する最高法規です。一般の法律が憲法に反する場合、その法律は効力を持たないとされています。
日本国憲法第98条も、憲法が国の最高法規であることを明記しています。
そのため、憲法を変更するには、通常の法律を成立させる場合よりも厳格な条件が設けられています。このような憲法を「硬性憲法」と呼びます。
例えば、国会で法律を改正する場合は、原則として出席議員の過半数による議決など、各法律に応じた通常の立法手続きが用いられます。
一方、憲法改正では、衆議院と参議院の双方で総議員の3分の2以上の賛成を得たうえで、国民投票による承認まで必要です。
つまり、政権や国会の多数派が変わっただけで、簡単に憲法の基本ルールを変更できないようになっています。
憲法改正の目的は何か憲法改正を求める理由は、単に古い条文を新しくすることだけではありません。
主な目的は次のように整理できます。
1. 社会や国際情勢の変化に対応する
憲法制定時には想定されていなかった社会問題や安全保障上の課題が生まれた場合、現在の条文で十分に対応できるかが問われます。
例えば、デジタル社会における個人情報の保護、国際情勢の変化、大規模災害や感染症への対応などが議論の背景にあります。
2. 国の統治機構を明確にする
国会、内閣、地方自治体などの役割や権限を憲法上で整理し、非常時も含めた統治の仕組みを明確にすることが目的になります。
3. 国民の権利や自由を保障する
社会の変化に合わせて、既存の人権保障を見直したり、新しい権利を憲法に位置付けたりする考え方もあります。
4. 現在の制度と憲法の規定との関係を整理する
代表的な論点が憲法第9条と自衛隊の関係です。現在の政府解釈と憲法の文言との関係を明確にするため、自衛隊を憲法に明記する案が提起されています。
ただし、こうした目的を実現する方法は憲法改正だけではありません。法律の制定や改正、行政制度の見直しによって対応できる問題もあります。
ここを区別することが、憲法改正を理解する第一歩です。
日本国憲法は2026年に公布80年を迎えた日本国憲法は1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行されました。
2026年11月3日には公布から80年を迎えています。
憲法制定以来、改正の必要性をめぐる議論は繰り返されてきましたが、現在まで日本国憲法の条文そのものは一度も改正されていません。
改正を求める側は、社会や安全保障環境の変化に合わせて憲法を更新する必要性を訴えています。
一方、慎重な立場からは、憲法は時の政権を拘束するための基本ルールであり、政策上の都合だけで変更すべきではないという考え方が示されています。
この対立の根底にあるのは、憲法を社会の変化に応じて更新するものと捉えるか、国家権力を制限するための安定した規範として重視するかという考え方の違いです。
【96条を解説】憲法改正の手続きと流れは?衆参3分の2と国民投票
日本国憲法第96条が定める改正要件憲法改正の根拠となるのが、日本国憲法第96条です。
同条は、憲法改正について次の2つの条件を定めています。
- 各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議
- 国民投票または国会が定める選挙の際の投票における過半数の賛成
ここで特に注意したいのが、「総議員の3分の2以上」という表現です。
これは、採決に出席した議員の3分の2ではありません。各議院に所属する総議員を基準にした要件です。
例えば、出席議員の多くが賛成していても、総議員の3分の2に達していなければ憲法改正の発議はできません。
また、衆議院だけで条件を満たしても不十分です。参議院でも同じく総議員の3分の2以上の賛成が必要になります。
憲法改正が実現するまでの5つの段階実際の手続きは、次のように進みます。
第1段階:憲法改正原案を作成する
最初に、どの条文をどのように変更するのか、具体的な憲法改正原案を作成します。
国会法第68条の2では、議員が憲法改正原案を発議する場合、衆議院では100人以上、参議院では50人以上の賛成を必要としています。
この人数は改正原案を提出するための要件であり、最終的な国会発議に必要な3分の2とは別の条件です。
第2段階:衆参両院の憲法審査会などで審査する
提出された原案は、各議院の憲法審査会などで審査されます。
改正の必要性、条文の表現、既存の憲法との整合性、国民生活への影響などが議論されます。
必要に応じて参考人から意見を聴取し、修正案を検討することもあります。
第3段階:衆議院と参議院で議決する
原案について、衆議院と参議院それぞれの本会議で採決します。
両院とも総議員の3分の2以上の賛成が必要です。
一方の議院で否決された場合は、国民投票に進むことはできません。
第4段階:国民投票を実施する
国会で最後の可決が成立すると、憲法改正が正式に発議されます。
その後、国民投票法に従って投票が行われます。
国民投票の期日は、原則として発議の日から60日以後180日以内の期間で国会が議決します。
投票権を持つのは、原則として満18歳以上の日本国民です。
第5段階:天皇が公布する
国民投票で賛成が過半数を超え、改正が承認された場合、内閣総理大臣は公布の手続きを進めます。
憲法第96条第2項に基づき、天皇が国民の名で改正された憲法を公布します。
この段階を経て、憲法改正が正式に成立します。
憲法改正に関係する制度・組織の関係一覧憲法改正は、一つの機関だけで完結するものではありません。それぞれの制度が異なる役割を担っています。
| 主体・制度 | 主な役割 | 他の主体との関係 |
|---|---|---|
| 日本国憲法第96条 | 改正の基本要件を規定 | 国会と国民に権限を分担 |
| 国会法第68条の2 | 改正原案の発議要件を規定 | 国会議員による原案提出を規律 |
| 衆参両院の憲法審査会 | 憲法問題の調査・改正原案などの審査 | 各議院の審議を支える |
| 衆議院・参議院 | 総議員の3分の2以上で発議 | 国民に改正案を提示 |
| 憲法改正国民投票法 | 投票の実施方法や運動のルールを規定 | 国民投票を制度面から支える |
| 国民投票広報協議会 | 改正案について公的な広報を実施 | 国民の判断材料を提供 |
| 国民 | 国民投票で改正の賛否を決定 | 過半数の賛成で承認 |
この関係から分かるように、憲法改正の最終的な決定権は国会だけにあるわけではありません。国会が改正案を発議し、国民が投票によって承認するという二段階の民主的な仕組みになっています。
【参照:日本国憲法第96条、国会法第68条の2、衆議院憲法審査会の資料】
【国民投票の仕組み】憲法改正国民投票法と過半数の正しい意味
国民投票でいう過半数とは何を基準にするのか憲法改正における国民投票の「過半数」は、誤解されやすいポイントです。
法律上、賛成票が投票総数の2分の1を超えた場合に、国民の承認があったと判断されます。
ここでいう投票総数は、賛成票と反対票を合計した数です。
つまり、白票などの無効票は過半数を計算する際の分母に含まれません。
例えば、有効な賛成・反対票が合計1,000万票だった場合、賛成票が500万票ちょうどでは過半数に達しません。501万票であれば過半数を超えます。
重要なのは、有権者全体の過半数ではないということです。
投票率が低かった場合でも、法律上の成立要件を満たしていれば国民投票は成立します。
最低投票率の規定はある?現行の憲法改正国民投票法には、最低投票率の成立要件が設けられていません。
例えば、投票率が50%を下回っていても、それだけを理由に国民投票が無効になるわけではありません。
この制度には、賛成・反対の意思を投票した人の判断によって明確に決められるという考え方があります。
一方、投票率が極端に低い場合、国民全体の意思を十分に反映したといえるのかという問題が生じます。
そのため、最低投票率を設けるべきだという意見と、投票のボイコットを誘発する可能性があるため設けるべきではないという意見が、憲法審査会などで議論されてきました。
国民投票法が定める主なルール憲法改正国民投票法は、2007年に成立した「日本国憲法の改正手続に関する法律」です。
投票方法だけでなく、国民投票運動、広報、開票、投票の無効を争う訴訟なども規定しています。
主な制度は次のとおりです。
- 投票権:満18歳以上の日本国民
- 投票期日:国会発議の日から60日以後180日以内
- 投票方法:改正案ごとに賛成または反対を選択
- 承認要件:賛成票が投票総数の2分の1を超えること
- 最低投票率:法律上の成立要件としては規定されていない
- 放送広告:投票日前14日間は、原則として国民投票運動のための広告放送を制限
また、国民投票運動そのものは原則として自由ですが、投票事務関係者などには一定の制限が設けられています。
テレビCMとインターネット広告の規制が課題国民投票では、改正案の内容を有権者に正確に伝えることが欠かせません。
しかし、テレビやラジオとインターネットでは広告規制の仕組みが異なります。
現行法では、投票日前14日間の放送による投票勧誘広告が制限されています。一方、インターネット広告については、同じような包括的規制が整備されているわけではありません。
2026年6月4日の衆議院憲法審査会では、ネット広告、SNS上の偽情報、生成AIによるディープフェイク、広告資金の透明性などについて集中的な討議が行われました。
賛否それぞれの主張が大量の広告によって偏って伝わることや、実在しない発言・映像が拡散することへの懸念も論点になっています。
一方、規制を強めすぎれば、個人や団体の表現の自由を損なう可能性があります。
このため、情報の正確性を確保することと、自由な政治的意見の表明を守ることの両立が求められています。
【主要論点】憲法9条改正と自衛隊明記・緊急事態条項の問題点
憲法9条改正と自衛隊明記とは憲法改正の議論で特に注目されているのが、第9条と自衛隊の関係です。
日本国憲法第9条は、戦争の放棄、戦力の不保持、国の交戦権の否認を定めています。
一方、日本には自衛隊が存在し、国の防衛や災害派遣などの活動を担っています。
この関係について、政府は自衛権そのものは否定されず、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法上認められるという解釈を採っています。
2014年7月1日の閣議決定では、一定の条件を満たす場合に、限定的な集団的自衛権の行使も憲法上許容されるとの判断が示されました。
政府が示す武力行使の主な要件は次の3つです。
1. 日本への武力攻撃、または日本の存立を脅かす密接な関係にある他国への武力攻撃が発生していること。
2. 国の存立と国民を守るために、ほかに適当な手段がないこと。
3. 武力行使が必要最小限度にとどまること。
これらは憲法の条文を改正した結果ではなく、政府による憲法解釈と安全保障法制の整備によるものです。
防衛省の令和7年版防衛白書でも、この政府解釈が説明されています。
自衛隊明記案は、こうした自衛隊の存在を憲法に明文化しようとするものです。
自民党が提示してきた案では、第9条第1項・第2項を維持したうえで、第9条の2を新設し、自衛隊を明記する方向性が示されています。
ただし、条文の具体的な文言や配置、自衛隊の権限との関係は、改正案の内容によって異なります。
自衛隊を明記すれば直ちに活動範囲が拡大するのか、それとも現在の政府解釈を明文化するにとどまるのか。この点は、賛否を判断するうえで重要です。
緊急事態条項の創設とは何かもう一つの大きな論点が緊急事態条項です。
これは、大規模災害、武力攻撃、感染症の大流行など、通常の政治・行政の仕組みでは対応が難しい事態に備え、国家運営に関する特別なルールを憲法に設ける考え方です。
具体的には、次のようなテーマが議論されています。
- 大規模災害などで国政選挙が実施できない場合の国会議員の任期延長
- 非常時における国会機能の維持
- 国会が十分に機能できない場合の緊急政令
- 緊急事態の認定条件や期間
- 内閣の権限に対する国会の監視
ただし、緊急事態条項には複数の構想があり、すべての案が内閣に緊急政令を認めるものではありません。
例えば、国会議員の任期延長を中心に考える案と、内閣による緊急政令の制定まで想定する案では、権力配分への影響が異なります。
自民党の2024年9月の論点整理では、自衛隊明記と緊急政令に加え、選挙困難事態における議員任期の特例などが取り上げられました。
緊急政令の対象として、大規模災害、武力攻撃、テロ・内乱、感染症のまん延などが示されています。
ここで問われるのは、非常時に迅速な対応を可能にすることだけではありません。
緊急事態の認定を誰が行うのか、権限の行使をどの程度の期間認めるのか、国会や司法によるチェックをどう確保するのかという点も重要です。
憲法改正と憲法解釈の違い両者は混同されがちですが、法的には明確に異なります。
| 比較項目 | 憲法改正 | 憲法解釈 |
|---|---|---|
| 意味 | 憲法の条文を変更する | 現行条文の意味や適用範囲を判断する |
| 条文 | 実際に変更される | 原則として変更されない |
| 主な主体 | 国会と国民 | 政府、国会、裁判所など |
| 手続き | 第96条の厳格な改正手続き | 法的解釈や判断の積み重ね |
| 具体例 | 自衛隊を憲法に明記する案 | 現行9条の下で自衛力を認める政府解釈 |
憲法解釈は、現在の条文を前提として、その意味や適用範囲を判断するものです。
一方、憲法改正は条文そのものを正式に変更します。
例えば、自衛隊の存在について政府が現在の第9条の下で合憲と解釈していることと、自衛隊を憲法に明記することは別の問題です。
憲法解釈によって対応できる課題もありますが、条文の変更が必要な場合には、第96条の手続きを経なければなりません。
また、憲法解釈も無制限に変更できるわけではありません。憲法の文言や基本原理、従来の法的判断との整合性が問われます。
【賛成・反対を比較】憲法改正のメリット・デメリットと主な理由
憲法改正に対する賛成・反対は、単純に保守とリベラルという政治的な分類だけでは説明できません。
同じ改正に賛成する人でも、その目的は安全保障、災害対策、地方自治、教育などで異なります。
憲法改正に賛成する主な理由とメリット1. 現代の社会や国際情勢に対応できる
憲法制定時と現在では、国際情勢や社会制度が大きく異なります。
安全保障環境の変化や大規模災害への対応など、現在の課題に合わせて憲法の規定を整えるべきだという考え方です。
2. 自衛隊の法的位置付けを明確にできる
自衛隊は実際に国防を担っていますが、憲法第9条との関係については長年議論が続いています。
自衛隊を憲法に明記すれば、組織の憲法上の位置付けを明確にできるというのが賛成側の主張です。
3. 緊急事態への対応を整備できる
大規模災害や武力攻撃などによって国会の機能が制約された場合に、国家運営を継続するためのルールを明確にできるという利点があります。
特に国会議員の任期延長などは、選挙が実施できない状況でも民主的な統治を維持するための仕組みとして議論されています。
4. 国民が憲法のあり方を直接判断できる
憲法改正には国民投票が必要です。
国会だけで決めるのではなく、国民が具体的な改正案に対して賛否を示せることも、改正手続きの特徴です。
憲法改正に反対・慎重な立場の理由とデメリット1. 基本的人権や自由への影響が懸念される
憲法は国家権力を制限し、国民の自由と権利を守る役割を担っています。
特に緊急事態条項については、内閣の権限が強くなりすぎたり、国民の権利が過度に制限されたりする可能性を慎重に検討すべきだという意見があります。
2. 政権による権力の集中につながる可能性がある
非常時の権限を認める場合、誰が緊急事態を判断するのか、どのような条件で権限を行使できるのかが問題になります。
例外的な制度が通常の政治運営にまで影響しないよう、厳格な条件や監視制度が必要です。
3. 憲法を変更しなくても解決できる問題がある
社会問題のすべてに憲法改正が必要なわけではありません。
法律の改正や行政制度の改善によって対応できる場合もあります。
改正が本当に必要なのか、通常の立法措置で十分ではないのかを検討する必要があります。
4. 国民投票で十分な情報が提供されるとは限らない
憲法改正案は専門的な内容になりやすく、一般の有権者が短期間で正確に理解するのは容易ではありません。
加えて、広告資金の偏りやSNSの偽情報、生成AIによるディープフェイクなどが投票判断に影響する可能性もあります。
賛成・反対のどちらを判断するときも重要なこと憲法改正の是非を判断するときは、「改憲に賛成か反対か」という大きな質問だけで考えないことが大切です。
例えば、自衛隊明記には賛成でも緊急政令には慎重という立場もあり得ます。
緊急時の国会機能維持には賛成でも、内閣の権限を大幅に拡大する制度には反対する考え方もあります。
つまり、憲法改正は項目ごとに判断する必要があります。
改正案の条文、変更によって生じる法的効果、国民の権利への影響を確認することが、建設的な議論につながります。
【2026年最新】憲法審査会の動向と憲法改正の現在・今後の課題
2026年7月に憲法改正国民投票法の改正が成立2026年の重要な動きとして、憲法改正国民投票法の一部改正があります。
2026年6月5日に提出された改正案は、衆議院で6月18日に憲法審査会の可決を経て、6月19日に本会議で可決されました。
その後、参議院でも7月22日に憲法審査会で可決され、7月24日の本会議で可決。7月31日に公布され、法律第73号となりました。
公布から3か月を経過した2026年10月31日に施行されています。
今回の改正の中心は、憲法の条文ではなく、国民投票の投票環境を整備するための手続きです。
主な変更点は次の3つです。
- 開票立会人を届け出る際の選任範囲を拡大する。
- 投票立会人の選任要件を緩和する。
- 憲法改正案の広報放送について、従来のAM放送に加えてFM放送も利用できるようにする。
この改正は、国民投票を実施しやすくするための制度整備です。
憲法第96条の3分の2要件や国民投票の過半数要件を変更したものではありません。
憲法本文の改正と、憲法改正を実施するための手続法の改正は、明確に区別する必要があります。
【参照:参議院議案審議情報、衆議院提出法律案の審議経過】
2026年10月の衆議院憲法審査会で何が議論された?2026年10月5日に召集された第222回国会では、衆議院憲法審査会が活動しています。
衆議院の公式会議日誌によると、10月22日の第1回審査会では、スイス、ハンガリー、イタリアの憲法や国民投票制度に関する調査報告が取り上げられました。
続く10月29日の第2回審査会では、国民投票広報協議会の関係諸規程が議題となり、衆議院法制局から説明を受けたうえで討議が行われました。
国民投票広報協議会とは、憲法改正が発議された後、改正案について国民に情報を提供するために設置される組織です。
その役割は、単なる投票の呼びかけではありません。改正案の内容を正確かつ公平に伝え、国民が判断するための情報を整えることにあります。
2026年11月4日時点で、衆議院の公式日程には、11月5日午前10時に第3回憲法審査会を開催する予定が掲載されています。
議題は、日本国憲法および憲法改正国民投票法の改正をめぐる諸問題です。
つまり、2026年秋の国会では、改正条文の議論だけでなく、将来の国民投票をどのように公正に実施するかという制度面の準備も進められています。
【参照:衆議院憲法審査会・第222回国会会議日誌、2026年11月4日更新の開会予定】
2026年の議論で浮上しているSNS・AIと国民投票の問題2026年の憲法審査会では、国民投票の情報環境も重要なテーマになっています。
6月4日の衆議院憲法審査会では、テレビCMだけでなく、ネット広告やSNS上の偽情報、生成AIによるディープフェイク、広告資金の透明性などが議論されました。
従来のテレビやラジオを中心とする広告規制だけでは、現在の情報環境に十分対応できないという問題意識があります。
例えば、実在する政治家が発言していない内容を、本人の映像や声を使って発信した場合、視聴者が本物と誤認する可能性があります。
また、広告費を大量に投入できる団体と、資金力の乏しい団体との間で情報発信の機会に差が生まれることも懸念されています。
一方、インターネット上の政治的な意見表明を広く規制すれば、表現の自由を侵害するおそれがあります。
7月16日の審査会でも、偽情報対策や国民投票広報協議会の機能強化、緊急時の国会機能維持などが議論されました。
このように、憲法改正をめぐる議論は、条文の内容だけでなく、国民が公平な情報環境で判断できるかという問題にも広がっています。
2026年の各党の主張と改正に向けた温度差各党の憲法改正に対する考え方は一致していません。
自民党は、自衛隊明記、緊急事態対応、合区解消・地方公共団体、教育充実という4項目を改正の条文イメージとして提示しています。
日本維新の会も、自衛隊明記や緊急事態条項の創設などを重視し、条文起草に向けた議論を進める立場です。
一方、国民民主党は、2026年7月16日の衆議院憲法審査会で、緊急時の国会機能維持や参議院の合区解消を優先課題として挙げ、憲法9条改正については優先順位を低くする考え方を示しました。
中道改革連合からは、選挙困難事態における議員任期延長について、政権による濫用を防ぐための厳格な条件設定が必要との主張も出ています。
また、共産党などは、国民投票法の最低投票率や広告規制などに問題が残っているとして、制度の見直しを求めています。
このように、各党が憲法改正というテーマに向き合っていても、優先順位や具体的な改正内容は異なります。
国会発議には衆参両院の総議員の3分の2以上が必要です。そのため、一部の政党だけが改正に積極的でも、実際の発議には幅広い合意形成が欠かせません。
今後の課題は改正の必要性と国民の納得を両立できるか2026年の議論から見えてくる課題は、大きく4つあります。
第一に、改正する条文と目的を明確にすることです。
自衛隊明記、緊急事態条項、地方自治、教育など、それぞれの問題を一括りにせず、何を解決するための改正なのかを具体的に示す必要があります。
第二に、国民投票の公正性を確保することです。
インターネット広告、運動資金、偽情報対策、ファクトチェックなど、情報環境の変化に合わせた制度整備が求められています。
第三に、非常時の権限と民主的な統制のバランスを取ることです。
緊急事態への対応を迅速にするだけでなく、国会の監視機能や国民の権利を守る仕組みも同時に整える必要があります。
第四に、国会での議論を国民に開くことです。
改正案が成立するかどうかだけではなく、どのような議論を経て条文が作られたのかを国民が理解できる環境が欠かせません。
憲法改正は、国の基本的なルールを変更する重大な判断です。政治日程を優先するのではなく、改正の必要性と具体的な効果について、国民が納得できる議論を積み重ねることが重要です。
【よくある質問】憲法改正に関する疑問(FAQ)
Q1:憲法改正には衆議院と参議院でそれぞれ何人の賛成が必要ですか?
A1:各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要です。出席議員の3分の2ではありません。また、衆議院と参議院の両方で条件を満たす必要があります。
Q2:憲法改正の国民投票では、有権者全体の過半数が賛成しなければいけませんか?
A2:いいえ。賛成票が賛成票と反対票を合計した投票総数の2分の1を超えれば承認されます。有権者全体の過半数ではなく、法律上の最低投票率も定められていません。
Q3:2026年に日本国憲法は改正されたのですか?
A3:いいえ。2026年に成立したのは憲法改正国民投票法の一部改正です。投票立会人の選任要件やFM放送による広報など、投票環境に関する手続きが変更されました。憲法本文そのものが改正されたわけではありません。
憲法改正とは、国の最高法規である憲法の条文を正式に変更することです。
日本国憲法第96条では、衆議院と参議院それぞれの総議員の3分の2以上による国会発議と、国民投票での過半数の賛成を必要としています。
憲法改正の議論では、自衛隊明記、憲法9条、緊急事態条項、地方自治、教育など、さまざまなテーマが取り上げられています。
2026年には憲法改正国民投票法の一部改正が成立・施行され、衆議院憲法審査会でも国民投票広報協議会の運用や情報環境の整備について議論が続いています。
【プロの結論】
憲法改正を考える際に最も大切なのは、「改正に賛成か反対か」という二択だけで判断しないことです。
本当に確認すべきなのは、次の4点です。
1. 何を変えるのか: 現行条文と改正案の文言を具体的に比較する。
2. なぜ変えるのか: 現行憲法や法律では解決できない問題なのかを考える。
3. 誰にどのような権限が生まれるのか: 国民の権利、国会の監視機能、内閣の権限への影響を確認する。
4. 国民が公平に判断できるのか: 情報公開、広告規制、偽情報対策、国民投票の公正性を検証する。
憲法は、政府や国会の権限を定めるだけでなく、国民の自由と権利を守るための基本的な約束です。
そのため、改正の必要性を検討することと、改正によって失われる可能性のある保障を検討することは、常にセットでなければなりません。
2026年以降の憲法改正論議では、国会での合意形成だけでなく、国民が改正案の意味と影響を十分に理解できるかが大きな焦点になります。
憲法を変えるかどうかを決めるのは、最終的には国民一人ひとりです。その判断に必要なのは、政治的なスローガンではなく、条文の内容と具体的な法的効果を理解することです。