『キングダム』は春秋戦国時代の中国を舞台に、実在した人物や歴史的な出来事を取り入れた作品だ。
では、山の民も実際に存在したのだろうか。
答えは、楊端和という歴史上の人物は記録に登場するが、漫画のような山の民の連合王国が実在したことは確認できないというものだ。
史実に登場する楊端和とは?『史記』の「秦始皇本紀」には、始皇18年(紀元前229年)の趙攻略に関連して、秦の将軍「端和」が邯鄲を包囲したという記録がある。
また、始皇9年(紀元前238年)に関する記述にも「楊端和攻衍氏」という名前が登場する。
この史料上の楊端和は、秦国に仕えた将軍として扱われている。
一方、漫画では山の民を統率する女性の女王として描かれている。
つまり、史実の人物名を取り入れながら、性別や出自、人物像、山の民との関係を大きく再構成したキャラクターなのだ。
山の民のモデルは西戎などの異民族なのか?古代中国には、中原の諸国とは異なる文化や生活様式を持つ周辺集団が存在していた。
その代表的な呼称が「西戎」だ。
西戎は、古代中国の西方に暮らしていた複数の民族や集団を指す広い呼称で、氐羌、姜戎、犬戎、義渠戎などが知られている。
中国科学院大学の人文学院が紹介した考古学研究でも、秦人の発展と西戎との関係が取り上げられている。
秦は西方で勢力を拡大する過程で、周辺の異民族との対立や交流を繰り返してきた。こうした歴史的背景は、秦国の西方に独立した山岳民族の勢力が存在するという作品の世界観を理解する手掛かりになる。
ただし、西戎と作中の山の民を同一視することはできない。
山の民という統一された王国、バジ族、鳥牙族、フィゴ族といった部族構成、楊端和による統治体制は、作品独自の設定として理解する必要がある。
史実と漫画の設定を混同しないためのポイント- 楊端和: 史料に名前が登場する秦の将軍。漫画では山の民の女王として再構成されている。
- 山の民: 楊端和が統率する山岳民族の連合体。史実に同じ政治勢力が存在した記録はない。
- フィゴ族: ダントが率いる部族。史実上の同名部族として確認できるものではない。
- 犬戎: 古代史料に登場する名称。漫画では趙攻略戦に関わる勢力として独自に描かれている。
- 山岳民族の文化: 古代中国の西方には多様な民族集団が実在し、秦の歴史とも深く関係していた。
史実の人物名や民族名を創作の中に取り込み、戦国時代の勢力図を再構築している点が『キングダム』の歴史描写の面白さだ。
【プロの結論】山の民を理解するために押さえたい3つの視点

山の民を理解する際には、単純な強さランキングや人気キャラクターだけで判断しないことが大切だ。
特に押さえておきたいのは、次の3点である。
第一に、山の民は秦国の従属軍ではなく、独立した意思を持つ同盟勢力である。
嬴政と楊端和が同盟を結んだ背景には、両者が目指す未来の一致があった。王都奪還編は、その関係が生まれた重要なエピソードだ。
第二に、山の民の軍事力は個人の武勇と部族の連携によって成り立っている。
バジオウやタジフのような個性的な戦士に加え、ダントのような部族の王も参加する。楊端和の統率力が、異なる民族を一つの軍事勢力にまとめている。
第三に、山の民の歴史は史実と創作を分けて考える必要がある。
楊端和という名前には歴史的な根拠がある一方、山の民の王国や各部族の設定は作品独自のものだ。
この3点を理解すると、王都奪還編、合従軍戦、鄴攻略戦、そして趙完全攻略戦における山の民の役割が、より明確に見えてくる。
【よくある質問】キングダムの山の民に関するFAQ
Q1:キングダムの山の民の正体は何ですか?
A1:秦国の西方に広がる山界に暮らす複数の民族の連合体です。楊端和を女王として、それぞれ異なる文化や戦闘能力を持つ部族が協力しています。
Q2:山の民の女王・楊端和は実在した人物ですか?
A2:楊端和という名前の秦の将軍は『史記』に登場します。ただし、史実上の人物が漫画のような女性の山の民の女王だったという記録はありません。
Q3:バジオウの過去や正体は何ですか?
A3:バジオウは幼少期に野生児のような状態で生きていた人物で、楊端和との出会いによって人間としての言葉や生き方を学びました。現在は山民族ナンバー2とされる女王の右腕です。
Q4:山の民で最も強いキャラクターは誰ですか?
A4:公式には山の民全員を対象とした総合的な強さランキングは発表されていません。楊端和は全体を統率する女王であり、バジオウは双刀の使い手、タジフは怪力の戦士、ダントはフィゴ族を率いる猛将として、それぞれ異なる強みを持っています。
Q5:ダントは何族で、どのような人物ですか?
A5:ダントはフィゴ族の王で、フィゴ王と呼ばれています。楊端和と過去に敵対していましたが、彼女の生き方に惚れ込み、現在は山の民軍として共に戦っています。
Q6:ランカイはもともと山の民だったのですか?
A6:いいえ。もともとは成蟜の護衛役でした。王都奪還編で成蟜の反乱が鎮圧された後、山の民に引き取られています。
Q7:2026年現在、山の民が登場する最新刊は何巻ですか?
A7:2026年11月4日時点の最新刊は80巻です。79巻では趙完全攻略戦で楊端和とダントが青華雲の攻撃を受ける展開が描かれ、80巻では李牧の防衛網を突破するための戦いが続いています。
『キングダム』の山の民は、楊端和を頂点として、バジオウ、タジフ、シュンメン、ランカイ、ダントらが活躍する山岳民族の連合体だ。
秦国との同盟は王都奪還編で成立し、合従軍戦では蕞の危機を救う援軍として登場。さらに鄴攻略戦や趙完全攻略戦でも、秦国の重要な軍事力として物語に関わっている。
2026年11月現在、単行本は80巻まで刊行。79巻で描かれた楊端和とダントへの攻撃を経て、山の民の今後の動向にも注目が集まる。
山の民を読む際に注目したいのは、単純な戦闘能力だけではない。異なる民族をまとめる楊端和の指導力、バジオウとの深い信頼関係、そして秦国との同盟を支える共通の理念である。
山の民は、秦国の中華統一という壮大な物語において、単なる援軍ではない。独自の誇りと未来を持ち、嬴政と同じ方向を目指して戦うもう一つの勢力なのだ。
主な参照資料:集英社「週刊ヤングジャンプ公式・キングダム人物紹介」、集英社コミック公式S-MANGA「キングダム」第3巻・第79巻・第80巻、TVアニメ「キングダム」公式サイト人物紹介・ストーリー・ニュース、『史記』「秦始皇本紀」、中国科学院大学人文学院の秦と西戎に関する考古学研究紹介。