「長野熊死亡」と検索される大きなきっかけとなったのが、2025年6月22日に長野県大町市八坂の山林で発生したツキノワグマによる死亡事故です。タケノコ採りをしていた男性2人がクマに襲われ、46歳の男性が死亡。同行していた70歳の男性も右腕にけがを負いました。山菜採りという身近な山のレジャーの最中に起きた事故は、長野県内のクマ対策に大きな警鐘を鳴らしました。
2026年11月4日時点では、長野県が公表する令和8年度の人身被害について、個別の状況が掲載されているのは大町市・伊那市・軽井沢町の3事例です。一方、10月29日更新の県の集計資料では、全県の人身被害は4件・4人となっています。加えて、クマの出没警報・注意報は7月10日にすべて解除されています。警報が出ていないことと、遭遇リスクがなくなったことは同じではありません。2025年の死亡事故の経緯から2026年の最新被害、警戒情報、入山時の対策まで詳しく解説します。
【事故の全容】2025年6月22日、大町市八坂で何が起きたのか

長野県大町市八坂の山林で死亡事故が起きたのは、2025年6月22日(日曜日)の午前中です。
現場では、市内に住む46歳と70歳の男性2人が、淡竹(はちく)と呼ばれるタケノコを採るために竹やぶへ入っていました。ところが、山林内でクマ1頭と遭遇し、2人とも襲われる事態となりました。
午前9時50分ごろ、消防に緊急通報信越放送(SBC)の報道によると、午前9時50分ごろ、70歳の男性から消防に「タケノコ採りで竹やぶに入ったら、クマに襲われた」と通報がありました。
46歳の男性は顔などに大きなけがを負い、病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。死因は多発性外傷による出血性ショックと報じられています。
同行していた70歳の男性も右腕をかまれるなどのけがを負いましたが、軽傷とみられていました。
同行者が証言した突然の襲撃事故翌日の6月23日、けがをした70歳の男性がSBCの取材に応じ、当時の状況を証言しました。
「いきなり下からクマが飛びついてきて」
男性の証言によると、クマは46歳の男性に飛びつき、そのまま馬乗りになるような状態になったといいます。突然の襲撃だったことが、当時の状況から伝わってきます。
警察や市の関係者は現場周辺でクマの捜索を行い、市と地元猟友会は付近に捕獲用のおりを設置しました。
事故前からクマの目撃情報が相次いでいた見逃せないのは、事故の直前にも周辺でクマの目撃情報が寄せられていたことです。
報道によれば、大町市では6月8日から14日にかけて15件の目撃情報がありました。また、長野県は事故の3日前にあたる6月19日、大町市を含む北アルプス地域にツキノワグマ出没注意報を発出していました。
つまり、事故はまったく情報のない場所で突然発生したわけではありません。地域での目撃情報が増え、注意報も発出されていた時期に起きています。
ただし、事故を引き起こした直接的な原因や、クマが2人に接近した具体的な経緯については、竹やぶという環境だけで断定できません。重要なのは、山菜採りのように地面や植生に注意を向ける活動では、周囲のクマの存在に気づく機会が限られるという点です。
【2026年最新】大町市・伊那市・軽井沢町のクマ人身被害
2026年度も長野県では、山林だけでなく人の生活圏でクマによる人身被害が発生しています。
県の公表ページで個別の状況を確認できるのは、6月の大町市、9月の伊那市、軽井沢町の3事例です。特に注目したいのは、2025年の大町市の死亡事故と同じ地域で、翌年度にも人身被害が発生していることです。
6月23日:大町市で犬の散歩中の女性が負傷2026年6月23日午後2時30分ごろ、大町市平の源汲橋下流にある河川敷で、犬の散歩をしていた40代女性がクマに遭遇しました。
女性は顔や腕をひっかかれてけがをし、医療機関を受診。一時入院しましたが、その後退院しています。
この事故を受け、県は6月24日に北アルプス地域のツキノワグマ出没注意報を警報へ引き上げました。対象は大町市、池田町、松川村、白馬村、小谷村です。
2025年の死亡事故が山林内で発生したのに対し、2026年の事故は河川敷という人の生活圏で発生しました。クマの危険が山の奥だけに限られないことを示す事例です。
9月5日:伊那市高遠町で61歳男性が襲われる9月5日朝、伊那市高遠町長藤の山林で、キノコ採りをしていた諏訪市在住の61歳男性がクマに襲われました。
男性は1人で山に入り、顔や体をひっかかれるけがを負いました。その後、自力で下山して伊那市内に住む親族の家に助けを求め、病院へ搬送されています。命に別条はありませんでした。
長野放送の報道では、関係者の話として、男性がクマと約5分間格闘したと伝えられています。現場付近では警察や猟友会などがクマを捜索しましたが、発見には至りませんでした。
9月6日:軽井沢町の国有林で70代男性が負傷伊那市の事故の翌日、9月6日午前9時ごろには、軽井沢町の国有林内でも人身被害が発生しました。
被害に遭ったのは、キノコ採りをしていた70代男性です。クマに襲われ、頭や左腕などにけがを負いましたが、意識はあり、会話のできる状態だったと報じられています。
軽井沢町の公式発表では、三ツ石の国有林内で事故が発生したとされています。町はクマ鈴やラジオなど音の出るものを携帯するよう呼びかけ、国有林への無断立ち入りを避けることや、山菜・野生キノコ採取の自粛も求めています。
3つの事例に共通するのは、山菜やキノコ採り、散歩など、特別な登山技術を必要としない日常的な活動でもクマに遭遇する危険があることです。
【時系列・比較表】2025年から2026年の事故と被害状況
長野県内のクマによる人身被害を把握するには、個々の事故と県全体の統計を分けて見る必要があります。
以下は、報道や県の公表資料で状況を確認できる主な事故の比較です。
| 発生日 | 発生場所 | 被害の状況 | 事故の特徴 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月22日 | 大町市八坂 | 46歳男性死亡、70歳男性負傷 | 淡竹のタケノコ採り中の襲撃 |
| 2026年6月23日 | 大町市平 | 40代女性が負傷 | 犬の散歩中、河川敷で遭遇 |
| 2026年9月5日 | 伊那市高遠町長藤 | 61歳男性が負傷 | 単独でのキノコ採り中に襲撃 |
| 2026年9月6日 | 軽井沢町三ツ石 | 70代男性が負傷 | 国有林でのキノコ採り中に襲撃 |
ここで注意したいのが、2026年度の人身被害件数です。
長野県の公式ウェブページに掲載された個別事例は3件ですが、2026年10月29日更新の「ツキノワグマの目撃件数及び人身被害件数」のPDFでは、令和8年度の人身被害は4件・4人と集計されています。
地域別の集計では、北アルプス地域、上伊那地域、佐久地域、長野地域にそれぞれ1件が計上されています。個別事例の一覧には3件しか詳しい説明がないため、残る1件については、県の集計表から事故の具体的な状況までは読み取れません。
したがって、2026年度の最新情報を「3件」とだけ紹介するのは正確ではありません。個別に詳細が確認できる3事例と、県の集計上の4件・4人を区別する必要があります。
過去3年度の人身被害との比較長野県の公表資料では、年度ごとの人身被害は次のように推移しています。
- 2023年度:11件・12人
- 2024年度:12件・13人
- 2025年度:11件・16人
- 2026年度:4件・4人(10月29日時点)
2025年度は事故件数だけを見ると前年より少ないものの、被害者数は16人に増加しています。これは、一度の事故で複数人が被害に遭うケースがあるためです。
2026年度の数字は年度途中の速報値です。2025年度の年間件数と単純に比較して、今年は安全になったと判断することはできません。
【事故の背景】なぜ山菜採りやキノコ採りで被害が起きるのか
長野県のクマ被害を考えるうえで、注目すべきなのは被害が発生する場所と人間の活動の関係です。
人身被害の約7割は林内で発生長野県が公表している平成9年4月から令和8年3月までの人身被害データによると、県内で発生したクマによる人身被害の約7割は林内で起きています。
加えて、キノコ採りや山菜採りによる被害は全体の約2割を占め、活動別では最も多い割合となっています。
この数字は、大町市の死亡事故や2026年の伊那市・軽井沢町の事故と重なります。山林に入って食べ物を採取する行為そのものが、クマの生息環境と人間の活動範囲を近づけるからです。
竹やぶや茂みでは遭遇に気づきにくいクマは森林に生息する野生動物です。人間が山に入れば、当然ながらクマの生活圏と重なる場所があります。
特に竹やぶや見通しの悪い茂み、河川沿いの藪などでは、互いに相手の存在を認識するまでの距離が短くなりやすい環境です。
大町市の2025年の事故は竹やぶでの採取中に発生し、2026年の軽井沢町の事故も国有林内でのキノコ採り中でした。事故の場所に共通するのは、人間が自然の中へ入り、周囲の視界が限られる状況です。
これは、クマが人間を積極的に探して襲っているという意味ではありません。人間とクマが互いの存在に気づかないまま接近することを避ける必要があります。
人の生活圏に近づくクマにも注意県の統計では、人の生活圏での目撃件数も大きく変動しています。
2025年度の目撃件数は1,324件でした。2026年度は10月30日時点で908件となっています。
この数字は人の生活圏での目撃件数であり、山林を含む県内すべてのクマの出没数や、実際に生息するクマの頭数を示すものではありません。
また、2026年度はまだ年度途中です。県の資料によれば、2025年度は6月に226件、10月に219件と目撃が増え、夏から秋にかけて高い水準で推移しました。
2026年度も6月には354件が記録されています。クマの出没は季節や餌の状況に左右されるため、単年度の数字だけで危険性を判断するのは適切ではありません。
【2026年11月最新】長野県のクマ出没警報・注意報はどうなっている?
2026年11月4日時点で、長野県はツキノワグマ出没警報・注意報を発出していません。
県の公式ページによると、令和8年度に発出された警報・注意報は、2026年7月10日までにすべて解除されています。
2026年度の警報・注意報の発出経緯- 5月22日:松本地域に出没注意報を発出。
- 6月3日:北アルプス地域にも出没注意報を発出。
- 6月12日:木曽地域に出没注意報を発出。
- 6月24日:大町市の人身被害を受け、北アルプス地域を警報に引き上げ。
- 6月26日:木曽地域も警報に引き上げ。
- 7月3日:松本地域の注意報を解除。
- 7月10日:北アルプス地域・木曽地域の警報を解除。
この経緯からも分かるように、警報や注意報は地域の目撃状況や人身被害を受けて発出されます。特に人の生活圏で人身被害が発生した場合、警報への引き上げが行われる仕組みです。
警報が解除されても安全とは限らない警報・注意報が解除されたことは、クマがいなくなったことを意味しません。
長野県の10月29日更新資料では、10月30日までの人の生活圏での目撃件数は908件。このうち10月分は36件でした。また、直近1週間の目撃は県全体で8件と、例年の同時期に比べて非常に少ない状況とされています。
一方で、河川沿いを移動するクマの目撃も報告されています。県は、見通しの悪い河川沿いや藪の多い場所では十分注意するよう呼びかけています。
出没警報の有無だけで判断せず、入山する市町村や地域の最新情報を確認することが大切です。
【入山時の注意点】長野県でクマに遭遇しないための対策
2025年の大町市の死亡事故、2026年の伊那市や軽井沢町の人身被害を踏まえると、山菜採りやキノコ採りでは事前の準備が欠かせません。
1. 早朝・夕方の入山を避けるクマは明け方や夕暮れ時に活発に行動します。長時間の山菜採りやキノコ採りを予定している場合は、活動時間を考慮し、朝夕の山中での行動をできるだけ避けましょう。
2. 1人ではなく複数人で行動する山に入る際は、できるだけ複数人で行動してください。同行者と声を掛け合い、互いの位置を把握することも大切です。
単独でのキノコ採りは、2026年の伊那市と軽井沢町の事故でも見られた状況です。
3. クマ鈴・ラジオ・笛で人の存在を知らせる長野県は、クマ鈴やラジオ、笛など音の出るものを携帯し、クマに人間の存在を知らせるよう推奨しています。
ただし、鈴を持っていれば必ず安全というわけではありません。音を出しながら行動していても、周囲の気配や地形に注意してください。
4. 足跡やフンを見つけたら引き返すクマの足跡やフンなどの痕跡を発見した場合は、その場所から離れましょう。採取を続けるために奥へ進むのは避けてください。
特に見通しの悪い竹やぶや茂み、河川沿いでは、クマが近くにいる可能性を意識する必要があります。
5. 子グマを見かけたら近づかない子グマを見つけた場合は、かわいらしく見えても近づいてはいけません。近くに母グマがいる可能性があり、子グマを守ろうとする母グマが人に攻撃することがあります。
刺激せず、静かにその場から離れてください。
6. 食べ物やゴミを山に残さない食べ物やゴミを放置すると、クマが人間の食べ物を覚え、人の生活圏に近づく原因になることがあります。
山で出たゴミは必ず持ち帰り、集落でも生ゴミや収穫されない柿・栗などを適切に管理が必要です。
7. 万が一遭遇したら走らず、ゆっくり離れる長野県は、クマに遭遇した場合、刺激しないように走らず、静かにゆっくりその場を離れるよう案内しています。
背を向けて急に走り出すことは避け、クマとの距離を確保してください。入山前には、クマに遭遇した場合の対応についても環境省や県の案内を確認しておきましょう。
また、登山や山林作業では、クマ撃退スプレーを携帯する選択肢もあります。携帯する場合は、製品の説明や使用方法を事前に確認し、緊急時に備えてください。
【よくある質問】長野県の熊死亡事故・クマ被害に関するFAQ
Q1:長野県の熊死亡事故はいつ、どこで発生しましたか?
A1:2025年6月22日、長野県大町市八坂の山林で発生しました。淡竹のタケノコ採りをしていた46歳男性がクマに襲われて死亡し、同行していた70歳男性も負傷しました。
Q2:2026年の長野県のクマによる人身被害は何件ですか?
A2:長野県の2026年10月29日更新資料では、令和8年度の人身被害は4件・4人です。個別の状況が県のウェブページに掲載されているのは、大町市、伊那市、軽井沢町の3事例です。
Q3:2026年11月現在、長野県にクマ出没警報は出ていますか?
A3:2026年11月4日時点では、県全域で警報・注意報は発出されていません。最後の警報・注意報は7月10日までにすべて解除されています。ただし、クマの目撃情報は続いているため、入山前には最新の出没情報を確認してください。
Q4:長野県では山菜採りやキノコ採りをしても大丈夫ですか?
A4:山林にはクマが生息しているため、十分な安全対策が必要です。複数人で行動し、クマ鈴やラジオを携帯し、早朝・夕方の入山を避けてください。軽井沢町では山菜や野生キノコの採取自粛も呼びかけられています。
Q5:長野県のクマ出没情報はどこで確認できますか?
A5:長野県が公開している「ツキノワグマ情報マップ」や目撃件数・人身被害の公表資料で確認できます。市町村の公式発表や観光案内所、宿泊施設などの地域情報も併せて確認することをおすすめします。
長野県大町市で発生した2025年6月22日の死亡事故は、タケノコ採りという日常的な山の活動が命に関わる事態につながり得ることを示しました。46歳男性が死亡し、同行していた70歳男性も負傷した事故は、長野県のクマ対策を考えるうえで重要な出来事です。
2026年度も大町市、伊那市、軽井沢町で人身被害が発生しています。県の最新集計では4件・4人となっており、個別事例の掲載数と全体の集計数には違いがあります。
また、2026年11月現在、長野県の出没警報・注意報はすべて解除されていますが、これはクマとの遭遇リスクが消えたという意味ではありません。
長野県の人身被害の約7割が林内で発生し、キノコ・山菜採りが被害活動の中で大きな割合を占めている事実は、山に入る人が意識すべき重要な情報です。
安全を判断する際に優先したいのは、次の3点です。
- 地域情報:入山する市町村や山域の最新目撃情報を確認する。
- 行動計画:単独行動を避け、朝夕の入山を控え、音の出るものを携帯する。
- 現場判断:足跡やフン、子グマなどの痕跡を見つけたら、採取や登山を中止して引き返す。
長野県の豊かな自然を楽しむためには、クマが暮らす場所に人間が入っていくという認識が欠かせません。2025年の大町市の死亡事故を教訓に、2026年以降も警報の有無にかかわらず、最新情報の確認と基本的な安全対策を徹底することが、自分や同行者の命を守ることにつながります。