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【利益率と固定費の真相】さおだけ屋は高い利益率だから儲かるのか?

桜庭 準 桜庭 準 • 更新: • 公開: • 読了約 17 分
目次

さおだけ屋の収益構造を考えるとき、よくある誤解が「物干し竿は原価が安く、販売価格が高いから儲かる」という説明です。

確かに、商品によっては仕入価格と販売価格の差額を大きく確保できる可能性があります。しかし、利益率の高さだけで事業の存続を説明することはできません。

利益率と利益額は別物

最初に、商売の基本となる計算式を確認しましょう。

利益 = 売上高 − 売上原価 − 販売費・一般管理費

例えば、商品を販売して一定の粗利益が得られても、車両費や人件費、保管費、広告費などが大きければ、最終的な利益は少なくなります。

逆に、1日の販売件数が少なくても、商品原価が抑えられ、追加の経費も小さければ、利益を残せる可能性があります。

つまり、さおだけ屋の利益率を考える際には、商品単体の粗利益率と、事業全体の営業利益率を区別することが大切です。

固定費を抑えることが経営を安定させる

固定費とは、売上の増減にかかわらず、一定期間に継続して発生する費用です。

さおだけ屋を独立した事業として運営する場合には、次のような費用が問題になります。

  • 車両の購入費やリース料
  • 車両の保険料、車検、整備費
  • 従業員の給与や社会保険料
  • 倉庫や商品の保管場所の賃料
  • 事務所の維持費や通信費

しかし、金物店などが本業の設備を活用して販売する場合、これらの費用の一部はすでに本業のために負担しています。

このとき、追加販売によって新たに発生する費用と、本業と共通で使っている費用を分けて考えることが重要です。

例えば、既存のトラックを使えば車両を新しく購入する必要はありません。ただし、走行距離が増えれば燃料費や整備費は増えます。従業員が通常業務の時間を使って販売すれば、その時間の機会費用も考慮しなければなりません。

このように、兼業モデルの強みは固定費が完全になくなることではなく、既存の経営資源を有効活用して追加費用を抑えられる点にあります。

損益分岐点から見る「潰れにくさ」

もう一つ注目したいのが損益分岐点です。

損益分岐点とは、売上高と費用が一致し、利益も損失も発生しない売上水準を指します。

固定費が小さく、商品を1つ販売するごとに一定の限界利益が確保できる事業は、損益分岐点となる売上高も低くなりやすい傾向があります。

つまり、大量販売をしなくても経営を維持できる可能性があるのです。

これが、さおだけ屋の兼業モデルから学べる重要な会計の考え方です。

【2026年の実態】さおだけ屋は現在もあるのか?消えない理由と意外な問題点

さおだけ屋はなぜ潰れないのか

では、2026年現在も、昔ながらの軽トラックによるさおだけ販売は存在するのでしょうか。

答えは、移動販売という業態が完全になくなったわけではない、ということです。ただし、全国の事業者数や稼働台数、売上高を示す最新の公的統計は確認できず、昔と同じ規模で全国的に営業していると判断できる材料もありません。

ホームセンターやネット通販が普及しても需要は残る

現在はホームセンターやインターネット通販で物干し竿を購入できます。価格を比較しやすく、自宅まで配送してもらえる商品もあります。

そのため、単純に物干し竿を販売するだけでは、従来型の移動販売が競争力を保つのは容易ではありません。

一方、移動販売には、顧客の自宅近くで商品を選べる、長い商品を自分で運ばなくてよい、といった利点があります。地域によっては、商品の運搬や設置まで含めたサービスに需要が残る可能性があります。

2026年にこの商売を考えるなら、単なる竿の販売ではなく、地域の住宅事情に合わせた商品提供や設置サービスまで含めて考える必要があります。

注意したい「2本で1,000円」の高額請求トラブル

さおだけ屋の実態を語るうえで、避けて通れないのが移動販売に関する消費者トラブルです。

国民生活センターは2015年8月6日、「物干しざおに10万円!?」という報道発表資料を公表しました。

同資料によると、物干し竿などに関する全国の消費生活センターへの相談は、2014年度に6年前の約6倍に増加。特に移動販売などに関する相談は、6年前の7.5倍に達していました。

問題となったのは、「2本で1,000円」といった安価な呼びかけで顧客を集めた後、正確な販売価格を伝えず、高額な商品を販売する手口です。

同資料には、購入する商品を十分に選んでいない段階で竿を切断され、高額な請求を受けた事例や、支払いのために金融機関まで同行された事例も掲載されています。

加えて、国民生活センターの2020年7月28日付「見守り新鮮情報」第369号でも、移動販売による物干し竿のトラブルが取り上げられました。

紹介された相談事例では、2,980円だと思って2本注文したところ、切断後に合計5万9,000円を請求されています。販売価格を明確に確認しないまま作業が進み、断りにくくなる問題が指摘されました。

ここで区別したいのは、追加商品を販売すること自体が悪いわけではないという点です。顧客が納得したうえで関連商品を購入するのは通常の商取引です。しかし、価格を曖昧にして不意打ち的に高額契約を迫る行為は、健全な営業とはいえません。

移動販売を利用するときに確認したいこと

購入する側は、次の点を確認しておくとトラブルを避けやすくなります。

  • 竿1本当たりの販売価格はいくらか。
  • 長さによって追加料金が発生するのか。
  • 切断費用や設置費用は含まれているのか。
  • 購入する商品と総額に納得しているか。
  • 事業者名、住所、電話番号が明確か。

価格が曖昧な場合や、説明に納得できない場合は、作業を始めてもらわずに断ることが大切です。強引に支払いを求められた場合は、周囲の人や警察に助けを求めましょう。消費者トラブルの相談窓口は消費者ホットライン188です。

【本の要約】山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が伝えたかったこと


著者:山田真哉/出版社:光文社
発売日:2005年2月16日
シリーズ:光文社新書191
副題:身近な疑問からはじめる会計学

本書は、2005年2月に刊行された会計学のベストセラーです。公認会計士の山田真哉氏が、日常生活で見かける不思議な商売を題材に、会計の基本的な考え方を解説しています。

著者の山田氏は1976年、兵庫県神戸市生まれ。大阪大学文学部卒業後、予備校勤務を経て公認会計士試験に合格し、中央青山監査法人などを経て独立しました。

金融広報中央委員会のインタビューによれば、同書の構想から完成までには約2年を費やしたとのこと。刊行後は7カ月でミリオンセラーとなり、2005年の流行語大賞の候補にもなりました。

本書の全体像と7つのエピソード

本書は、さおだけ屋の疑問だけで終わる内容ではありません。全体を通して、利益の出し方から在庫、資金繰り、キャッシュフローまで、経営を理解するための複数の視点を取り上げています。



エピソード1:さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

テーマ:利益の出し方
売上を増やす方法と費用を減らす方法から、商売の利益構造を考える。


エピソード2:ベッドタウンに高級フランス料理店の謎

テーマ:連結経営
本業と関連事業を組み合わせ、経営資源を共有する発想を学ぶ。


エピソード3:在庫だらけの自然食品店

テーマ:在庫と資金繰り
商品が売れないことによる資金の滞留や在庫管理の問題を考える。


エピソード4:完売したのに怒られた!

テーマ:機会損失と決算書
商品を売り切ることと、販売機会を逃さないことの関係を理解する。


エピソード5:トップを逃して満足するギャンブラー

テーマ:回転率
売上の規模だけでなく、資産や商品を効率よく回す視点を学ぶ。


エピソード6:あの人はなぜいつもワリカンの支払い役になるのか?

テーマ:キャッシュフロー
利益と現金の動きが必ずしも一致しないことを理解する。


エピソード7:数字に弱くても「数字のセンス」があればいい

テーマ:数字のセンス
身近な数字から経済活動を読み解く考え方を身につける。

この構成は、書店の書誌情報に掲載されている目次にも確認できます。

本書の本当の結論は「売上だけで経営を判断しない」こと

さおだけ屋という身近な商売を入り口にしながら、本書が伝えているのは、経営を数字の組み合わせで見るという考え方です。

例えば、客が少ない高級レストランでも、料理教室などの関連事業が利益を生んでいれば経営が成立する可能性があります。在庫が多い店も、商品が売れるまでの期間や資金繰りを把握しているかどうかで評価が変わります。

また、売上が好調でも、売掛金の回収が遅れたり、仕入れや支払いが先行したりすれば、現金が不足することがあります。

こうした複数の事例に共通しているのは、目に見える売上や客数だけでは、商売の実態は分からないという点です。

2014年にはKADOKAWAからコミック版も刊行されました。会計の専門知識がない読者にも親しみやすい形で、決算書やキャッシュフローなどの考え方を紹介しています。

山田真哉氏は2026年も会計の情報発信を続けている

山田氏の活動は、2005年のベストセラーで終わったわけではありません。

2026年現在も公認会計士・税理士として活動し、YouTubeチャンネル「オタク会計士ch」などを通じて、税金や経済、会計に関する情報を発信しています。所属先のプロフィールでは、テレビドラマの会計監修や企業の社外監査役などの活動も紹介されています。

2005年の著作が現在も読み継がれる理由は、特定の業種の成功法則を紹介しただけではなく、時代が変わっても応用できる経営の基本を扱っているからです。

【プロの結論】さおだけ屋から学ぶ、2026年に生き残る商売の条件

さおだけ屋の仕組みを現代のビジネスに置き換えると、重要なのは「何を売るか」だけではなく、「既存の資産をどう活用するか」「顧客1人からどれだけ適正な利益を得るか」という視点です。

特に、個人事業主や小規模事業者にとっては、本業と副業の組み合わせが経営を安定させる手段になる場合があります。

1.本業と副業の相乗効果を生み出せるか

副業を始めるとき、まったく別の設備や人員を用意すると、売上が安定する前から経費が増えてしまいます。

一方、本業で持っている顧客、設備、技術、販売経路を活用できれば、新規事業の立ち上げ負担を軽減できます。

例えば、次のような組み合わせが考えられます。

  • クリーニング店と衣類の補修サービス
  • 工務店と住宅設備のメンテナンス
  • 飲食店と料理教室
  • 農家と農産物の加工・直販
  • 配送業と地域商品の販売

いずれも、本業と副業の顧客や設備を共有できる可能性があります。ただし、単に仕事を増やすのではなく、双方の事業に利益をもたらす組み合わせにすることが大切です。

2.利益率だけでなく、現金が残るかを見る

高い利益率の商品を扱っていても、売れるまでに時間がかかれば在庫が資金を圧迫します。

売上が発生しても、入金前に仕入れ代金や人件費を支払う必要があれば、資金繰りが苦しくなる場合もあります。

事業を評価するときは、粗利益率だけでなく、営業利益、在庫回転率、売掛金の回収期間、営業キャッシュフローなども確認する必要があります。

3.顧客の便利さと利益を両立させる

さおだけ屋の移動販売には、長い物干し竿を自宅近くまで届けるという利便性があります。

このように、顧客が自分で解決しにくい問題を見つけ、適正な価格で解決することは、長期的な信頼につながります。

反対に、価格の不透明さや強引な追加販売で短期的な売上を追い求めると、顧客からの信用を失い、事業の継続性を損ないます。

どんな人に本書がおすすめなのか





おすすめできる人

  • 会計や経理を基礎から理解したい人
  • 副業や個人事業を検討している人
  • 売上と利益の違いを理解したい経営者
  • お金の流れを日常生活に生かしたい人




別の専門書も併読したい人

  • 最新の税制や会計基準を詳しく学びたい人
  • 実際の財務諸表を使った分析を習得したい人
  • 移動販売の開業資金や事業計画を具体的に作りたい人


本書は会計の考え方を身近な事例から理解するための読み物です。実際の開業や投資判断には、最新の原価、地域需要、資金計画などを別途調べる必要があります。

【さおだけ屋はなぜ潰れないのか】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:さおだけ屋はなぜ潰れないのですか?
A1:代表的な理由は、本業と設備や人員を共有して固定費を抑える兼業モデルと、関連商品やサービスを組み合わせて客単価を高める販売モデルです。少ない販売件数でも利益を確保できる仕組みがあれば、経営を継続できます。

Q2:さおだけ屋の利益率は高いのですか?
A2:商品によって粗利益率は異なります。業界全体の統一された利益率を示す公的データは確認できません。仕入原価だけでなく、車両費、人件費、燃料費、保管費などを差し引いて判断する必要があります。

Q3:さおだけ屋は現在も営業していますか?
A3:移動販売という業態が完全になくなったわけではありません。国民生活センターも2020年に移動販売による物干し竿の購入トラブルを注意喚起しています。ただし、2026年現在の全国的な事業者数や市場規模を示す公的統計は確認できません。

Q4:さおだけ屋は本業の副業として営業しているのですか?
A4:金物店などが既存の車両や人員、仕入れルートを活用して販売する兼業モデルが、商売の成立を説明する一つの考え方です。ただし、すべてのさおだけ販売業者が兼業というわけではありません。

Q5:『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の本の結論は何ですか?
A5:商売の利益を増やすには、売上を増やすか、費用を減らすという基本に立ち返ることです。本書は、さおだけ屋だけでなく、飲食店や自然食品店などの事例を通じて、利益、在庫、資金繰り、回転率、キャッシュフローを解説しています。

Q6:さおだけ屋の「2本で1,000円」は本当に安いのですか?
A6:呼びかけの価格だけで判断するのは危険です。1本当たりの価格、長さによる追加料金、切断費用、設置費用を含む総額を購入前に確認してください。納得できない場合は契約しないことが大切です。

さおだけ屋が潰れない理由は、単純に物干し竿の利益率が高いからではありません。

本業と設備や人員を共有する兼業モデル、顧客の自宅近くまで商品を届ける移動販売の効率、関連商品やサービスによる客単価の向上、そして固定費を抑える経営。このような複数の要素が組み合わさることで、少ない販売件数でも事業が成立する可能性があります。

山田真哉氏の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が2005年の刊行から長く読まれているのも、こうした商売の基本を分かりやすく伝えているからです。

2026年のビジネス環境では、ネット通販や大手小売店との競争、物流コストの上昇など、昔ながらの移動販売を取り巻く条件も変化しています。それでも、既存の資産を活用し、顧客に必要な価値を提供し、経費を管理するという原則は変わりません。

本当に見るべきなのは、どれだけ売れたかではなく、売った結果としてどれだけ利益と現金が残ったか。さおだけ屋という身近な商売が教えてくれる、会計学の最も実践的な教訓です。

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全記事の校閲を担当。人名・日付・数字の整合性を確認し、断定できない内容は表現を弱めて掲載します。

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