2026年現在、ヤクザの抗争は終わったのか。それとも、表面化しにくい形で続いているのか。警察庁が公表した2025年(令和7年)の組織犯罪情勢を見ると、六代目山口組と神戸山口組、池田組、絆會をめぐる対立は、警察の警戒対象となっている。一方、対立抗争に起因するとみられる事件の発生は、2025年中の1件にとどまった。
注目すべきなのは、抗争事件が減少していることと、暴力団の脅威がなくなったことは同じではない点だ。2025年末の暴力団構成員・準構成員等は合計1万7,600人で、統計上の過去最少を更新した。しかし、組織間の対立関係や匿名・流動型犯罪グループとの接点など、治安上の課題は残っている。
【2026年最新】ヤクザの抗争は現在も続いている?3つの対立関係に大きな変化

2026年11月4日時点の状況を整理すると、六代目山口組をめぐる特定抗争指定は、すべての対立組織との間で続いているわけではない。
2026年9月、六代目山口組と池田組、六代目山口組と絆會の2つの組み合わせについて、特定抗争指定の延長が見送られた。これにより、両組織との間の特定抗争指定は解除されている。
一方、分裂の発端となった神戸山口組との指定は継続している。兵庫県公安委員会は2026年9月17日、両団体への指定期限を3カ月延長することを決定。10月5日に官報で公示され、期限は2027年1月6日までとなった。2020年の指定開始以来、27回目の延長である。
2026年9月に何が変わったのか池田組との特定抗争指定は2026年9月8日に解除された。両組織間で約2年間、対立抗争とみられる事件が発生していなかったことなどが判断材料となった。
絆會との指定も同年9月21日に解除された。こちらは約3年5カ月間、抗争とみられる事件が発生していなかったことや、幹部への聞き取りなどが判断の背景にある。
ただし、指定解除は両組織が解散したことや、過去の対立が完全に解消されたことを意味しない。あくまで、特定抗争指定という追加的な規制措置が終了したということだ。暴力団対策法に基づく指定暴力団としての扱いとは区別する必要がある。
神戸山口組との関係については、警察側が抗争終結に至ったとは認めておらず、引き続き警戒が必要と判断している。つまり、2026年の大きな変化は、抗争問題全体が解決したことではなく、対立関係ごとに沈静化の判断が分かれた点にある。
【分裂の経緯】六代目山口組・神戸山口組・池田組・絆會の関係を時系列で整理
現在の対立構造を理解するには、2015年の山口組分裂から振り返る必要がある。
2015年8月、六代目山口組から13団体が離脱2015年8月27日、指定暴力団六代目山口組から直系団体13団体が離脱し、神戸山口組を結成した。
神戸山口組のトップには、山健組の井上邦雄組長が就任した。
分裂の背景について、神戸新聞などの当時の報道では、六代目山口組の組織運営に対する不満が指摘されている。特に、司忍組長の出身母体である弘道会を重視する人事や、高額な上納金制度への反発が背景にあったと報じられた。
もっとも、組織の分裂は一つの不満だけで説明できるものではない。組織運営、幹部人事、経済的負担、主導権をめぐる問題が複雑に絡み合った出来事だった。
2017年、神戸山口組から任侠山口組が分裂神戸山口組の内部でも対立が生じ、2017年4月には傘下組織の一部が離脱し、任侠山口組の結成を表明した。
その後、任侠山口組は2020年2月に絆會へ名称を変更した。これによって、山口組分裂を起点とする組織間の関係はさらに複雑になった。
2020年以降、池田組も独立池田組は2020年7月、神戸山口組傘下からの離脱を表明した。その後、2021年11月に岡山県公安委員会から指定暴力団として指定されている。
加えて、六代目山口組との対立を受け、2022年12月には特定抗争指定暴力団等に指定された。
主要組織の関係と現在の状況| 組織・時期 | 関係・主な経緯 | 2026年11月の状況 |
|---|---|---|
| 六代目山口組 | 2015年の分裂で対立の中心となった組織 | 神戸山口組との特定抗争指定が継続 |
| 神戸山口組 | 2015年8月、六代目山口組から離脱した13団体を中心に結成 | 六代目山口組との指定が継続 |
| 絆會 | 2017年に神戸山口組から一部が離脱。任侠山口組を経て2020年に改称 | 六代目山口組との特定抗争指定は2026年9月21日に解除 |
| 池田組 | 2020年7月に神戸山口組からの離脱を表明。2021年に指定暴力団となる | 六代目山口組との特定抗争指定は2026年9月8日に解除 |
この関係図から分かるのは、現在の対立構造が単純な二つの組織の争いではないということだ。神戸山口組の内部から別組織が生まれ、その後、独立した組織との間にも対立が発生した。
警察庁の2026年4月公表資料でも、これらの分裂と指定の経緯が整理されている。2026年秋の指定解除によって、当初の3つの対立関係のうち2つが制度上の節目を迎えた。
【制度を解説】特定抗争指定暴力団等とは?警戒区域で禁止される行為
ニュースで頻繁に登場する「特定抗争指定暴力団等」という言葉は、通常の指定暴力団とは異なる追加的な規制措置を指す。
根拠となるのは、1991年に制定された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、いわゆる暴力団対策法だ。
特定抗争指定が行われる仕組み暴力団同士の対立抗争が激化し、市民の生命や身体に重大な危害が及ぶおそれがある場合、関係する都道府県公安委員会が法律に基づいて指定を行う。
指定に当たっては、対象となる組織や警戒区域を定める。指定には期限があり、情勢を踏まえて延長することも、危険がなくなったと判断された場合に解除することもできる。
今回の2026年の動きは、この仕組みが実際にどのように運用されるかを示している。池田組と絆會については抗争の沈静化を踏まえて延長が見送られた一方、神戸山口組については継続的な危険性があると判断された。
警戒区域で禁止される主な行為暴力団対策法第15条の3では、特定抗争指定暴力団等の指定暴力団員について、警戒区域内での一定の行為を禁止している。
- 対象となる暴力団事務所を新たに設置すること。
- 対立組織の構成員につきまとったり、その居宅や管理する事務所付近をうろついたりすること。
- 多数で集合するなど、対立抗争を誘発するおそれのある行為。
- 警戒区域内にある対象団体の事務所に立ち入り、またはとどまること。
違反した場合には罰則が設けられている。兵庫県警の制度説明では、禁止行為に違反した場合、3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金などが示されている。
2026年11月現在の警戒区域六代目山口組と神戸山口組については、関係する9府県の公安委員会が指定を行い、合計17市町が警戒区域となっている。
兵庫県内では神戸市、姫路市、尼崎市、高砂市、加古郡稲美町が対象となっている。ほかの府県についても、それぞれの公安委員会が定めた区域が存在する。
重要なのは、警戒区域が一般住民の立ち入りを禁止する区域ではないことだ。規制の対象は法律に定められた指定暴力団員等の行為であり、住民の日常生活を制限する制度ではない。
【警察庁の統計】2025年の対立抗争事件は1件、過去10年間の推移は?
抗争が現在どの程度続いているのかを把握するには、警察庁が公表する対立抗争事件の発生件数が重要な指標となる。
2026年4月公表の「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、2025年に発生した対立抗争に起因するとみられる事件は1件。検挙件数も1件だった。
2016年から2025年までの発生件数警察庁の確定統計に掲載された年別の数字は次のとおりだ。
- 2016年:42件
- 2017年:9件
- 2018年:8件
- 2019年:14件
- 2020年:10件
- 2021年:3件
- 2022年:11件
- 2023年:3件
- 2024年:1件
- 2025年:1件
2016年から2025年までの累計は102件、検挙件数は88件。分裂直後の2016年には42件が発生していたが、その後は大きく減少している。
ただし、2022年には11件に増加しており、減少が一直線に進んだわけではない。抗争事件の発生件数は、組織の動向や個別の事件によって変動する。
2025年の1件をどう見るべきか2025年の発生件数が1件という数字は、抗争事件が大幅に減少したことを示す重要な指標だ。しかし、ゼロではない。
また、2025年4月7日には、六代目山口組の幹部ら3人が兵庫県警を訪れ、抗争終結の意思を記した書面を提出したと報じられた。
一方、神戸山口組側は同じような抗争終結の意思を示していなかったとされ、警察は一方的な終結宣言として受け止めていた。実際、その後も神戸山口組との特定抗争指定は解除されていない。
この経緯は、片方の組織が抗争を終わらせる意向を示しただけでは、行政上の指定解除には直結しないことを示している。
なお、2026年の年間発生件数は、11月4日時点では確定した通年統計として公表されていない。2025年の1件という数字を、2026年の年間実績として扱うことはできない。
【勢力減少の実態】暴力団構成員は減少、それでも脅威が消えない理由
抗争事件の減少と並んで注目されるのが、暴力団の構成員数の推移だ。
全国暴力追放運動推進センターが掲載する警察庁の統計によると、2025年末の暴力団構成員・準構成員等の合計は1万7,600人。前年から1,200人減少し、暴力団対策法が施行された1992年以降で最少となった。
2025年末の暴力団勢力- 暴力団構成員:9,400人
- 準構成員等:8,200人
- 合計:約1万7,600人
- 前年からの減少:1,200人
ここでいう準構成員等とは、正式な構成員ではないものの、暴力団と関係を持ち、その威力を背景に活動したり、資金提供などを通じて組織の維持・運営に関与したりする周辺者を含む。
したがって、構成員だけの人数を見て暴力団の影響力全体を判断するのは適切ではない。
主要4団体の勢力にも変化警察庁の2025年末の団体別統計では、構成員と準構成員等を合わせた勢力は、六代目山口組が約6,300人、神戸山口組が約270人、絆會が約120人、池田組が約70人となっている。
特に神戸山口組は、2016年末の約5,500人から2025年末には約270人まで減少した。六代目山口組も2016年末の約1万1,800人から約6,300人となっている。
これらは概数であり、団体の実際の活動力や経済力をそのまま表す数字ではない。それでも、分裂以降の勢力構造が大きく変化したことは読み取れる。
匿名・流動型犯罪グループと暴力団の関係現在の暴力団対策で見逃せないのが、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆるトクリュウとの関係だ。
トクリュウは、SNSや求人サイトなどを通じて実行役を集め、特殊詐欺、強盗、窃盗などを行う流動的な犯罪集団を指す。従来型の暴力団とは異なり、明確な組織構造や固定された構成員を持たない場合がある。
警察庁の2026年4月公表資料は、両者の関係について、次のような実態を挙げている。
- 暴力団構成員や元構成員がトクリュウの中核的人物となるケース。
- 暴力団がトクリュウを実質的な傘下に置き、犯罪行為を分担させるケース。
- トクリュウ側から暴力団へ資金が流れるケース。
- 暴力団と外国人犯罪組織が連携し、トクリュウがその接点となるケース。
2025年にトクリュウによるものとみられる主な資金獲得犯罪の検挙人員は6,679人だった。内訳は詐欺3,075人、薬物事犯1,887人、窃盗1,020人などである。
ただし、この6,679人は暴力団構成員数ではない。トクリュウによるものとみられる犯罪の検挙人員であり、両者を混同してはいけない。
暴力団の構成員が減っている一方、犯罪収益を得るための関係や役割分担が不透明化している。従来の組織対立だけを見ていては、現在の組織犯罪の全体像を捉えきれない。
【抗争の原因と地域社会への影響】なぜ対立は長期化するのか
暴力団の対立抗争が長期化する背景には、組織の主導権、幹部人事、資金源、組織の正統性などをめぐる問題がある。
組織運営と主導権をめぐる対立2015年の山口組分裂では、組織運営や上納金制度への不満が背景として報じられた。大規模な組織ほど、幹部の人事や傘下団体との関係、資金の配分などが組織の維持に影響する。
分裂によって別の組織が成立すると、旧組織との関係だけでなく、傘下団体や周辺組織の帰属をめぐる問題も発生する。加えて、後継者や組織の正統性をめぐる主張が対立を複雑にする。
対立が地域社会にもたらす危険抗争事件は、組織関係者だけで完結する問題ではない。
全国暴力追放運動推進センターは、これまでの対立抗争に起因するとみられる事件として、住宅街で建物に車両を衝突させる事件や、手りゅう弾を投てきする事件などを挙げている。
こうした事件が発生すれば、近隣住民や通行人、周辺の店舗など、暴力団と無関係な人々にも危険が及ぶ可能性がある。
地域社会にとっては、事件そのものだけでなく、周辺地域の不安、店舗営業への影響、子どもの通学時の安全確保、警察による警戒活動なども無視できない問題となる。
指定解除後も警戒が続く理由2026年に池田組と絆會との指定が解除された後も、警察は抗争の再発防止に向けた警戒を続けている。
指定解除は、対立の沈静化を行政が判断した結果であり、将来にわたって事件が起きないことを保証するものではない。
神戸山口組との指定が継続されたことも、同じ六代目山口組をめぐる関係であっても、対立相手ごとに危険性を判断していることを示している。
住民にとって大切なのは、抗争を過度に恐れることでも、事件が減ったからといって無関心になることでもない。警察や自治体から発表される情報を確認し、地域の安全対策を理解することだ。
【ヤクザの抗争】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、ヤクザの抗争はまだ続いていますか?
A1:続いています。2026年11月現在、六代目山口組と神戸山口組の特定抗争指定は継続中です。一方、池田組と絆會との間の指定は2026年9月に解除されました。
Q2:2025年の暴力団抗争事件は何件発生しましたか?
A2:警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢」によると、対立抗争に起因するとみられる事件は1件で、検挙件数も1件でした。
Q3:六代目山口組が分裂した理由は何ですか?
A3:2015年の分裂については、弘道会を重視した組織運営や高額な上納金制度への不満などが背景として報じられています。直系団体13団体が離脱し、神戸山口組を結成しました。
Q4:特定抗争指定暴力団等になると何が制限されますか?
A4:警戒区域内での事務所の新設、対立組織の構成員へのつきまとい、多数での集合、対象事務所への立ち入りなどが禁止されます。違反には刑事罰が設けられています。
Q5:暴力団の構成員は現在何人いますか?
A5:2025年末の警察庁統計では、暴力団構成員は約9,400人、準構成員等は約8,200人で、合計約1万7,600人です。前年より1,200人減少しています。
Q6:トクリュウとヤクザは同じ組織ですか?
A6:同じではありません。トクリュウは匿名性と流動性を特徴とする犯罪グループです。ただし、警察庁は暴力団構成員や元構成員がトクリュウの中核を担う例や、暴力団への資金の流れなどを確認しています。
2026年11月現在、ヤクザの抗争をめぐる情勢は、沈静化と継続が同時に存在する段階にある。
六代目山口組と池田組、絆會との特定抗争指定は2026年9月に解除された。しかし、六代目山口組と神戸山口組との指定は継続し、2027年1月6日まで延長されている。
2025年の対立抗争事件が1件に減少したことや、暴力団構成員等が1万7,600人まで減ったことは、長年の取締りや暴力団排除活動の成果を示す重要な数字だ。
一方、匿名・流動型犯罪グループとの関係や犯罪収益の獲得方法の多様化など、従来の暴力団対策だけでは捉えにくい課題も浮かび上がっている。
今後の情勢を見極める際には、次の3点を区別することが重要だ。
- 事件の発生件数:実際に対立抗争に起因するとみられる事件がどれだけ発生したか。
- 特定抗争指定の状況:公安委員会がどの組織間の危険性を認め、どの区域で規制を継続しているか。
- 組織犯罪の実態:構成員数だけでなく、資金の流れやトクリュウとの関係がどう変化しているか。
抗争事件が減ったからといって、暴力団問題そのものが解決したわけではない。数字の変化だけでなく、警察の判断や組織犯罪の構造的な変化を合わせて見ることが、2026年以降の治安情勢を正しく理解するための判断基準となる。
主な資料:警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」(2026年4月)、全国暴力追放運動推進センター「暴力団情勢と対策」、暴力団対策法、兵庫県公安委員会の指定関連発表、神戸新聞・サンテレビなどの2025~2026年の報道。