「障害のある兄弟姉妹がいると、結婚相手やその家族に反対されるのではないか」「親が亡くなった後、自分が兄弟姉妹の介護を引き受けることになるのではないか」。こうした不安から、恋愛や結婚に踏み出せなくなる人がいる。障害や病気のある兄弟姉妹を持つ人は「きょうだい児」と呼ばれ、成人後も結婚、出産、仕事、親亡き後の生活設計など、さまざまな問題に直面している。
しかし、きょうだい児だから結婚できないという法律上の制限はない。全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会が公表した調査では、回答者の55%が既婚者だった。一方、結婚相手の家族の理解、兄弟姉妹の世話、遺伝への不安など、結婚に影響する現実的な課題も浮かび上がっている。2026年10月30日には、きょうだいの経験を整理した新たな学術論文も公開された。
【結論】きょうだい児は結婚できない?法律と実際の結婚事情

最初に明確にしておきたいのは、障害のある兄弟姉妹を持っていることを理由に、本人の結婚が禁止されることはないという点だ。
結婚は本人同士の意思に基づいて成立するものであり、兄弟姉妹の障害の有無によって婚姻資格が左右される制度はない。相手の親が反対したとしても、その親に成人した二人の結婚を法的に決定する権限があるわけではない。
それでも、きょうだい児の結婚が難しいと感じられる背景には、本人の意思だけでは解決できない問題がある。
きょうだい児とは何を意味するのかきょうだい児とは、障害や病気のある兄弟姉妹を持つ人を指す言葉だ。もともとは子どもの立場を表す場面で使われてきたが、成人した当事者についても使用されている。
近年は「きょうだい」「きょうだい者」という表現も使われる。障害のある本人だけでなく、その兄弟姉妹も固有の人生や悩みを持つ一人の人間であることを尊重する意味がある。
きょうだい児の経験は一様ではない。兄弟姉妹との関係が良好な人もいれば、幼少期から介護や家事を担ってきた人、親から過度な期待を受けてきた人、家庭の事情を誰にも話せず孤独を感じてきた人もいる。
障害の種類、程度、家庭環境、利用できる福祉サービス、親の考え方によって、結婚への影響は大きく異なる。
結婚を難しくするのは障害の存在そのものではない結婚に際して問題になりやすいのは、次のような事情だ。
相手や相手の親が障害について正しく理解していない。
結婚後に兄弟姉妹の介護を求められるのではないかと心配される。
親が亡くなった後の生活や経済的な負担が不明確になっている。
遺伝に関する誤解から、将来の子どもへの影響を心配される。
本人自身が、兄弟姉妹を残して幸せになってよいのかと罪悪感を抱いている。
つまり、結婚できないというより、結婚後の生活について見通しを持てないことが大きな障壁になっている。
2026年10月に公開された日本看護科学会誌の研究レビューでも、障害や病気のある兄弟姉妹と生活する人の経験として、ケアの負担、家族関係、進路選択、家族形成に関する葛藤が整理されている。
【結婚率の公的統計】既婚55%・未婚41%という調査結果の真相
「きょうだい児の結婚率は一般の人より低いのか」という疑問に対して、最も注意したいのが統計の扱いだ。
2026年11月現在、障害のある兄弟姉妹を持つ人だけを対象にした、全国的な公的結婚率の確立された数値は公表されていない。
国勢調査や人口動態統計には、日本全体の婚姻状況を把握するためのデータがある。しかし、回答者の兄弟姉妹に障害があるかどうかを基準にして婚姻率を比較する統計とは異なる。
全国きょうだいの会による2019年調査結婚の実態を考えるうえで参考になるのが、全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会が実施した「障がいのある人のきょうだいに関するアンケート調査報告書」だ。
この調査は2019年6月に配布され、同年9月までに回収された。正会員、賛助会員、機関誌購読者、座談会などに参加した非会員が対象となっている。
336通を配布し、165通を回収。回収率は49%だった。調査結果は2021年10月に公表されている。
結婚に関する主な結果は次のとおりだ。
| 調査項目 | 結果 | 読み取る際の注意点 |
|---|---|---|
| 現在結婚している人 | 55% | 165人の回答者を対象とした割合 |
| 現在結婚していない人 | 41% | 結婚経験のない人だけを示す数値ではない |
| 無回答 | 4% | 回答状況を含めた割合 |
| 結婚経験者の結婚時の心配 | 相手家族の理解30%、相手の理解21%、きょうだいの世話21%、遺伝13% | 215件の回答に対する割合 |
| 結婚未経験者の結婚への心配 | 相手家族の理解27%、相手の理解25%、きょうだいの世話24%、遺伝11% | 190件の回答に対する割合 |
| 未婚者の結婚意思 | 62% | 結婚経験のない74人が対象 |
この結果から分かるのは、きょうだい児の中にも結婚している人が相当数存在する一方、結婚に際して何らかの問題や心配を抱える人も少なくないということだ。
55%という数字を全国の結婚率と誤解してはいけないこの調査には重要な限界がある。回答者は全国のきょうだい児から無作為抽出されたわけではなく、当事者団体の会員や関係者が中心だ。
そのため、55%という数字を日本のきょうだい児全体の結婚率として扱うことはできない。また、未婚41%には、結婚したい人だけでなく、結婚を希望していない人も含まれる。
50歳以上の回答者53人については、結婚したことがない人は15%だった。内訳は男性11%、女性18%である。ただし、対象人数が少なく、現在の全国的な生涯未婚率と単純比較することも適切ではない。
したがって、正確な結論は「きょうだい児の結婚率が全国平均より低いと証明されたわけではない」ということになる。
【結婚できないと感じる理由】相手の親の反対・介護・罪悪感の実態
結婚に関する調査で目立つのは、本人同士の関係だけでなく、相手の家族や将来の介護が不安材料になっている点だ。
1.結婚相手の親から理解されない結婚経験者が挙げた心配の中で最も多かったのは、相手の家族の理解で30%だった。結婚未経験者でも27%と最上位に位置している。
交際相手本人は兄弟姉妹の障害を理解していても、その両親が受け入れない場合がある。
相手の親が心配する内容には、将来の介護、経済的な負担、親族関係、子どもへの遺伝などがある。ただし、こうした懸念がすべて医学的・法律的な根拠を持っているわけではない。
全国きょうだいの会の調査には、相手の親族から反対された経験や、障害のある親族がいることを理由に交際や結婚が進まなかった経験が記されている。
「相手の親族に反対されてあきらめた」
「自分まで責任を負わなければならないのでは?という誤解」
これらは調査報告書に掲載された回答者の声だ。本人が結婚を望んでいても、家族への偏見や将来の負担に対する誤解が、人生の選択に影響している実態がうかがえる。
2.障害のある兄弟姉妹の介護を引き受ける不安結婚経験者の21%、未経験者の24%が、兄弟姉妹の世話を結婚に際しての心配として挙げている。
幼少期から親の手伝いをしてきた人にとって、兄弟姉妹の世話は日常の一部になっていることもある。
しかし、結婚後も同じ生活を続けられるとは限らない。住む場所、仕事、子育て、配偶者との時間など、新しい生活との両立を考える必要が出てくる。
特に、親が高齢になっている家庭では、将来的に介護や生活支援の役割が自分に回ってくるのではないかという不安が強くなる。
実際の介護負担がまだ発生していなくても、将来の見通しがないこと自体が結婚への心理的な壁になっている。
3.兄弟姉妹を残して自分だけ幸せになってよいのかという罪悪感きょうだい児の結婚問題は、相手や相手の親の反応だけでは説明できない。
全国きょうだいの会の調査には、障害のある兄弟姉妹が結婚できない状況にあることを意識し、自分だけが結婚して幸せになってよいのかと悩む回答も掲載されている。
また、家庭内で兄弟姉妹が優先されてきた人は、自分の希望を後回しにすることに慣れている場合がある。
進学や就職、転居、恋愛などを決める際にも、家族に迷惑をかけないか、兄弟姉妹を置いていくことにならないかと考えてしまう。
2026年10月公開の日本看護科学会誌のスコーピングレビューでも、きょうだいの経験は単純な愛情や負担だけでは説明できず、思いやりと嫌悪、喜びと苦悩、不満と感謝など、相反する感情を含むことが整理されている。
兄弟姉妹を大切に思うことと、自分の人生を大切にすることは、本来対立するものではない。
【障害のある兄弟姉妹の伝え方】結婚相手や相手の親にいつ話すべきか
きょうだい児にとって、交際相手に家族の事情を打ち明けるタイミングは大きな悩みの一つだ。
早く話せば拒絶されるのではないか、遅く話せば隠していたと思われるのではないか。どちらにも不安がある。
調査では交際初期から途中に伝える人が多い全国きょうだいの会の調査では、結婚経験者のうち、兄弟姉妹の障害について交際相手に打ち明けた80人の内訳は、付き合い始めが48人、途中が19人、結婚を決めた時が11人だった。
つまり、結婚を決める段階まで話さないというより、関係が深まる過程で伝えている人が多い。
一方、結婚未経験者の回答では、付き合い始めが28%、交際途中が43%だった。結婚を決める時と回答した人はいなかった。
この数字は最適な告知時期を決めるものではないが、将来を考えられる関係になった段階で話し合うことが、当事者にとって一つの選択肢になっている。
相手に伝えるときに整理しておきたい4つのこと単に「障害のある弟がいる」「障害のある妹がいる」と伝えるだけでは、相手が将来をイメージできず、不安を感じることがある。
可能な範囲で、次の内容を整理しておくと話し合いやすい。
兄弟姉妹の現在の生活:どこで暮らしているか、どのような支援を受けているか。
自分の現在の関わり方:日常的に世話をしているのか、定期的な連絡や見守りが中心なのか。
将来の生活設計:親亡き後の住まいや福祉サービスについて、どの程度話し合っているか。
結婚相手に求めること:介護を引き受けてほしいのか、家族の存在を否定せず理解してほしいのか。
特に大切なのは、結婚相手にどのような協力を求めるのかを明確にすることだ。
例えば、日常的な介護を求めていないのであれば、そのことを伝える。一方、将来の緊急時に連絡や相談をする可能性があるなら、その可能性も隠さず話し合う。
そのまま使える伝え方の例自分の事情を説明するときは、相手に過度な責任を背負わせるような話し方をする必要はない。
例えば、次のように伝えられる。
「私には障害のある兄弟がいます。今は家族や福祉サービスの支援を受けながら生活しています。私も家族として関わっていますが、結婚後にあなたに介護をすべてお願いするつもりはありません。親が高齢になった後の生活については、福祉制度も利用しながら考えていきたいと思っています。将来のことも含めて、一緒に話し合えたらうれしいです」
これは一例であり、実際の支援状況や自分の希望に合わせて調整する必要がある。
兄弟姉妹の障害について、本人のプライバシーを侵害するほど詳しい医療情報を無断で伝える必要はない。生活に関係する情報と、本人の同意が必要な個人情報は分けて考えたい。
相手の親に反対された場合はどうする?相手の親が反対している場合、最初に確認すべきなのは、交際相手本人がどう考えているかだ。
本人が理解していて結婚を望んでいるのか。それとも、本人自身も親の意見に同調しているのか。この違いは大きい。
本人が結婚を望んでいる場合は、二人で将来の生活設計を整理し、必要に応じて相手の親にも説明する方法がある。
一方、遺伝や介護について事実と異なる理解を持ち、何度説明しても差別的な発言を繰り返す場合、無理に認めてもらうことだけを目標にする必要はない。
障害のある兄弟姉妹を否定せず、本人の人生も尊重してくれる相手かどうか。それは結婚相手を考えるうえで大切な判断基準になる。
【遺伝する可能性と親亡き後】結婚前に確認したい医学・福祉の事実
結婚や出産を考える際、もう一つ大きな問題になるのが遺伝への不安だ。
兄弟姉妹に障害があると、自分の子どもにも同じ障害が生じるのではないかと心配する人は少なくない。しかし、障害という言葉だけで遺伝の可能性を判断することはできない。
障害が遺伝するかどうかは原因によって違う障害や知的発達の特性には、遺伝子や染色体に関係するもの、妊娠・出産時の要因によるもの、後天的な病気や事故によるもの、複数の遺伝的要因と環境要因が関係するものなど、さまざまな背景がある。
原因が遺伝性疾患であっても、遺伝形式や家族内での発症状況によって、本人やその子どもに関係するリスクは異なる。
したがって、障害のある兄弟姉妹がいるという理由だけで、自分の子どもにも同じ障害が遺伝すると判断することはできない。
逆に、本人に症状がないからといって、すべての遺伝的リスクが否定されるわけでもない。
遺伝カウンセリングで何が分かるのか遺伝への不安がある場合に相談できるのが、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなどによる遺伝カウンセリングだ。
2025年10月には、日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会が「遺伝カウンセリング実施に関するガイダンス」を策定した。
このガイダンスでは、遺伝カウンセリングは検査の前後だけに限らず、結婚や妊娠、出産などのライフイベントに応じて継続的に実施される支援として整理されている。
主な内容は次のとおりだ。
本人や家族の病歴、家族歴を確認する。
遺伝性疾患の可能性や再発リスクを医学的に評価する。
必要に応じて遺伝学的検査を検討する。
検査を受ける場合と受けない場合のメリット・デメリットを説明する。
遺伝に関する不安や心理的な負担について相談する。
遺伝カウンセリングは、必ず遺伝子検査を受けなければ利用できないものではない。検査をするかどうかも含めて専門家と相談できる。
また、結婚相手の親に安心してもらうためだけに、本人が望まない遺伝子検査を受ける必要があるわけではない。遺伝情報は本人と血縁者に関わる重要な個人情報であり、本人の意思を尊重することが基本だ。
親亡き後の不安は結婚前に整理できるきょうだい児の結婚問題で、遺伝と並んで大きいのが親亡き後の生活だ。
親が元気なうちは、兄弟姉妹の生活費や通院、食事、日常的な支援を親が担っている家庭もある。しかし、親の高齢化や病気によって、それまでの生活を維持できなくなる可能性がある。
全国きょうだいの会の調査でも、親亡き後に自分が世話をしなければならないのではないかという心配が、重要な課題として取り上げられている。
ここで押さえておきたいのが、障害のある兄弟姉妹の支援を、きょうだい本人だけで引き受ける必要はないということだ。
兄弟姉妹に扶養義務はあるが、すべての介護を負うわけではない法律上の扶養義務については誤解が多い。
民法877条は、直系血族および兄弟姉妹が互いに扶養する義務を負うと定めている。したがって、兄弟姉妹の間に法律上の扶養義務が一切ないという説明も正確ではない。
ただし、扶養義務があることと、兄弟姉妹が必ず同居して24時間介護をしなければならないことは別問題だ。
民法878条・879条では、扶養の順位や程度、方法について、当事者間の協議や家庭裁判所による判断が定められている。具体的には、扶養を受ける人の必要性、扶養する側の資力、その他の事情などが考慮される。
つまり、法律上の扶養義務を、結婚後の配偶者まで含めた無条件の介護責任と同一視することはできない。
障害者福祉制度のグループホームという選択肢親亡き後の生活を考える際に知っておきたい制度が、障害福祉サービスの「共同生活援助」、一般にいうグループホームだ。
厚生労働省によると、共同生活援助は、共同生活を営む住居で、主に夜間における相談、入浴、排せつ、食事などの日常生活上の援助を提供する制度である。
グループホームには、事業所の職員が介護サービスを提供する形態や、日中も含めて手厚い支援を行う形態、外部の居宅介護サービスを利用する形態などがある。
利用に当たっては、本人の障害特性、希望する生活、必要な支援の程度、地域の事業所の状況などを確認する必要がある。
グループホームを利用すれば、きょうだい児が家族として関わる必要が完全になくなるわけではない。しかし、日常生活の支援を福祉サービスと分担することで、家族一人に負担が集中する状況を変えられる可能性がある。
2026年2月には、厚生労働省が共同生活援助に関する運営・支援ガイドラインを公表しており、サービスの質の確保に向けた取り組みも進められている。
親亡き後に備えるなら、親が元気なうちから次の事項を話し合っておきたい。
兄弟姉妹本人が希望する住まいと生活スタイル。
グループホームや一人暮らしなどの選択肢。
日中活動、就労、通院、訪問支援の利用状況。
生活費、障害年金、財産管理などの経済的な見通し。
緊急時の連絡先や支援者、親族間の役割分担。
将来の介護を曖昧なまま結婚相手に説明するのではなく、利用できる制度と本人の希望を整理しておくことが、二人の生活を守ることにもつながる。
【2026年最新】きょうだい児の結婚を支える相談窓口と団体
きょうだい児の悩みは、家庭の中だけで解決しようとすると孤立しやすい。同じ立場の人の経験を聞いたり、福祉制度の専門家に相談したりすることで、これまで見えていなかった選択肢に気づくことがある。
1.全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会は、1963年に結成された、障害のある人のきょうだいを中心とする団体だ。
会員同士の交流や相談、調査研究、講演活動、障害者福祉や家族支援の充実に向けた活動を行っている。
2026年6月7日の全国総会交流会では、結婚や親亡き後をテーマに、経験者を交えた交流の機会が設けられた。普段は周囲に話しづらい結婚や将来の不安を共有する場が、2026年も継続している。
結婚だけでなく、親との距離感や兄弟姉妹との関わり方についても相談したい人にとって、重要なつながりの一つだ。
2.Sibkoto(シブコト)Sibkoto(シブコト)は、障害のある兄弟姉妹を持つ人のための情報・交流サイトだ。
恋愛、結婚、出産、育児、親亡き後、介護、遺伝、福祉制度など、きょうだい児が直面しやすいテーマを幅広く扱っている。
結婚に関しては「きょうだいの私、結婚どうする?」というイベントの参加レポートも掲載されている。交際相手への伝え方や結婚相手の家族との関係など、当事者の経験を知る手がかりになる。
2026年にも婚活や結婚に関する投稿が更新されており、同じ立場の人がどのような悩みを抱えているのかを知ることができる。ただし、個々の投稿は体験談であり、全国的な調査結果とは区別して読む必要がある。
3.NPO法人しぶたねNPO法人しぶたねは、病気や障害のある子どもの兄弟姉妹を支援する団体だ。2003年に活動を開始し、2016年にNPO法人格を取得した。
主な活動は、きょうだいのためのワークショップ「きょうだいさんの日」、病院での居場所づくり、小冊子の配布、支援者向けの研修などだ。
2020年のゴールデンウィークから続くオンライン交流企画では、毎週金曜日の夜に子どものきょうだいが集まり、会話やゲームを楽しむ機会を設けている。
2026年にも各地でイベントや支援者向け研修を開催している。成人の婚活相談を専門とする団体ではないが、子どもの頃からきょうだいを支える環境づくりに取り組んでいる点で重要だ。
4.自治体の障害者相談支援窓口・基幹相談支援センター兄弟姉妹の将来の生活について具体的な制度を知りたい場合は、市区町村の障害福祉担当窓口に相談できる。
厚生労働省が案内する障害者相談支援事業では、福祉サービスの情報提供、制度の利用支援、権利擁護、専門機関の紹介などを行っている。
加えて、地域の相談支援の中核を担う基幹相談支援センターでは、関係機関との連携や成年後見制度の利用支援なども扱う。
相談する際には、次のような内容を伝えると話が進めやすい。
親が高齢になった後の生活について相談したい。
グループホームの利用を検討している。
兄弟姉妹本人の生活費や財産管理について知りたい。
緊急時に利用できる支援を確認したい。
きょうだい児自身の生活や結婚に影響する負担を整理したい。
障害のある本人の支援と、きょうだい自身の人生設計は、分けて考えることが大切だ。
きょうだい児自身も、必要に応じて心理相談や当事者会を利用してよい。支援を求めることは、兄弟姉妹を大切にしていないという意味ではない。
【きょうだい児の結婚】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:きょうだい児は結婚できないというのは本当ですか?
A1:いいえ。障害のある兄弟姉妹がいることによる法律上の結婚制限はありません。実際に結婚しているきょうだい児もいます。ただし、相手の家族の理解や将来の介護などが結婚の障壁になるケースはあります。
Q2:きょうだい児の結婚率は一般の人より低いのでしょうか?
A2:全国的な公的結婚率の比較データは確認できません。全国きょうだいの会の2019年調査では回答者の55%が既婚者でしたが、165人を対象とした当事者調査であり、日本のきょうだい児全体の結婚率を示すものではありません。
Q3:障害のある兄弟姉妹がいることは結婚相手にいつ伝えるべきですか?
A3:一律の正解はありませんが、将来を真剣に考えられる関係になった段階で、結婚後の生活設計とともに伝える方法があります。交際初期から途中に話した人も多く、相手との信頼関係や自分の気持ちに合わせて考えることが大切です。
Q4:兄弟姉妹に障害があると、自分の子どもにも遺伝しますか?
A4:必ず遺伝するわけではありません。障害の原因や遺伝形式によって可能性は異なります。不安がある場合は、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーに相談し、家族歴などを踏まえて個別に評価してもらう方法があります。
Q5:親が亡くなったら、自分が兄弟姉妹の介護をすべて担う必要がありますか?
A5:兄弟姉妹には民法上の扶養義務がありますが、それが無条件の同居や24時間介護を意味するわけではありません。グループホーム、相談支援、訪問サービスなどを活用し、本人の希望を尊重した生活設計を進めることができます。
Q6:きょうだい児が結婚について相談できる団体はありますか?
A6:全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会やSibkoto(シブコト)などがあります。子どものきょうだい支援についてはNPO法人しぶたねも活動しています。福祉制度の相談は、市区町村の障害福祉窓口や基幹相談支援センターが相談先になります。
きょうだい児は結婚できないという考え方は、事実とは異なる。障害のある兄弟姉妹を持つことによって結婚が禁止されるわけではなく、実際に結婚している人も数多くいる。
一方で、全国きょうだいの会の調査が示したように、結婚相手の家族の理解、兄弟姉妹の世話、遺伝への不安、親亡き後の生活など、本人の努力だけでは解決しにくい問題があることも事実だ。
大切なのは、これらの不安を一つの問題としてまとめてしまわないことだ。
遺伝の不安は専門家の遺伝カウンセリングで整理できる。将来の介護はグループホームや障害福祉サービスを含めて検討できる。結婚相手には、現在の家族の状況と自分が望む関わり方を具体的に説明できる。
そして何より、障害のある兄弟姉妹の人生と、きょうだい児自身の人生は、それぞれ尊重されるべきものだ。
兄弟姉妹を大切にすることと、自分が結婚して幸せになることは両立できる。家族だけで問題を抱え込最初に、福祉制度や当事者団体、専門家の力を借りながら、本人も兄弟姉妹も自分らしく暮らせる将来を考えていくことが大切だ。
主な参照資料・調査根拠
- 全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会「障がいのある人のきょうだいに関するアンケート調査報告書」(2019年調査・2021年公表)。
- 日本看護科学会誌「在宅療養児・者と生活するきょうだいの小児期・青年期の体験:スコーピングレビュー」(2026年10月30日公開)。
- 日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会「遺伝カウンセリング実施に関するガイダンス」(2025年10月策定)。
- 法務省の家族法制資料・民法の扶養義務に関する資料。
- 厚生労働省「障害福祉サービスの内容」「障害のある人に対する相談支援」「基幹相談支援センター」。
- 全国きょうだいの会、Sibkoto、NPO法人しぶたねの2026年活動情報。