第74期王座戦五番勝負の最終局は、広瀬章人九段が先手、伊藤匠王座が後手で対局しました。対局は2026年10月27日午前から始まり、午後8時46分、121手で広瀬九段の勝利が決まりました。
この勝利によって広瀬九段はシリーズ通算3勝2敗とし、王座を奪取。これまで竜王と王位をそれぞれ1期獲得していた広瀬九段にとって、王座は自身3期目のタイトルであり、初めて手にしたタイトルです。
日本将棋連盟の公式中継ブログによると、両者の消費時間はともに5時間。持ち時間を使い切るまで続いた、最後まで緊張感のある対局でした。終局時刻は午後8時46分と記録されています。
第5局の対局データ
第74期王座戦・第5局
勝者・先手
広瀬章人九段121手

敗者・後手
伊藤匠王座3勝2敗
対局日
2026年10月27日(火)
対局場所
常磐ホテル(山梨県甲府市)
終局時刻
20時46分
消費時間
双方5時間
立会
青野照市九段
新聞解説
松尾歩八段
記録係
吉田響太三段
注目すべきなのは、広瀬九段が単に最終局を制しただけではなく、タイトル戦の流れを最後の一局で自分のものにした点です。伊藤王座は過去のタイトル戦で最終局に強さを見せてきましたが、今回はその実績を上回る広瀬九段の勝負強さが際立ちました。
【全5局の勝敗推移】伊藤が先行するも広瀬が最終局で逆転
第74期王座戦は、9月2日に開幕しました。第1局は広瀬九段が先勝したものの、第2局と第3局を伊藤王座が連取。伊藤王座が2勝1敗とリードし、初防衛に向けて優位な状況をつくりました。
しかし、第4局で広瀬九段が勝利して2勝2敗に追いつきます。勝負の行方は最終第5局に持ち越され、甲府の常磐ホテルで決着することになりました。
第74期王座戦・全5局の結果一覧
シリーズの最終成績
広瀬章人 3勝
伊藤匠 2勝
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1.第1局で広瀬九段が先手の勝利
9月2日の第1局は、神奈川県秦野市の元湯陣屋で開催されました。広瀬九段が99手で勝利し、挑戦者として好スタートを切りました。シリーズ序盤から伊藤王座に簡単には主導権を渡さない姿勢を見せた一局です。
2.伊藤王座が第2局・第3局を連取
9月15日の第2局は伊藤王座が115手で勝利。続く10月2日の第3局も100手で伊藤王座が制しました。これで伊藤王座が2勝1敗とリードし、初防衛に王手をかけるための重要な局面を迎えます。
3.広瀬九段が第4局・第5局を連勝
10月14日の第4局はホテルオークラ神戸で行われ、広瀬九段が94手で勝利。2勝2敗に戻したことで、シリーズの流れが再び変わりました。
そして最終第5局。広瀬九段は121手で勝利し、2連勝でタイトルを獲得しました。伊藤王座が序盤から中盤にかけてリードした局面もあっただけに、広瀬九段の粘りと終盤の判断が勝負を分けた重要な要素となりました。
【121手の勝負を分析】広瀬九段が勝ち切った終盤の重要局面
第5局の将棋を理解するうえで注目したいのは、広瀬九段が終始一方的に優勢だったわけではないという点です。公式中継ブログに掲載された両者の対局後の振り返りからは、序盤の構想、攻めと受けのバランス、そして終盤の読みの精度が勝敗を左右したことが分かります。
序盤から伊藤王座が積極的に動く対局では角と銀を交換する展開となり、伊藤王座は後手から積極的に局面を動かそうとしました。特に36手目の△6五歩、38手目の△3五歩などが重要な着手として記録されています。
伊藤前王座は終局後、序盤で時間を使う展開になったことや、角銀交換後にどのような組み合わせで攻めをつなぐかを探していたことを振り返っています。
55手目の▲3八香が重要な受けの一手に中盤のポイントとなったのが、広瀬九段の55手目▲3八香です。広瀬九段は、得をした香を使って受けに回り、伊藤王座の攻めを簡単には成立させない方針を採りました。
広瀬九段自身も、相手に激しい攻めがなければ楽しみがあると考えていたと説明しています。一方の伊藤王座は、この手を受けられた段階で自信がなくなっていたと振り返りました。
ここで重要なのは、広瀬九段が無理に攻め合いを選ばず、相手の攻撃を見極めながら局面を維持したことです。攻めの勢いだけでは勝負が決まらない、将棋の難しさが表れた局面でした。
73手目の▲7五成銀を伊藤王座が見落とす終盤の勝敗に影響したのが、広瀬九段の73手目▲7五成銀です。
伊藤王座はこの手を見落としていたと対局後に説明しました。一度は反撃の可能性が出てきたと感じていたものの、この一手によって再び形勢が悪くなったと認識したといいます。
加えて、伊藤王座は持ち時間を使い切り、終盤は一手60秒未満の秒読みに入りました。対する広瀬九段には30分以上の持ち時間が残っていた局面もあり、時間面でも両者の状況に差が生じていました。
最後は馬を抜く筋を見極めて勝利終盤は伊藤王座も銀冠に組んで粘りを見せ、簡単には決着しませんでした。広瀬九段が優勢になった局面でも、後手の攻めが残っており、慎重な判断が必要でした。
日本将棋連盟の中継ブログでは、渡辺明九段による大盤解説も紹介されています。終盤には▲3三銀から相手の玉を追い、▲2五竜と進めて馬を抜く筋が勝ちにつながると解説されました。
広瀬九段は終局後、次のように振り返っています。
「最後はギリギリになってしまいましたが、馬を抜く筋があってぴったり勝っていたかと思います」
序盤から完璧に指し切ったというより、難しい局面を乗り越え、最後に勝ち筋を正確に読み切ったことが第5局の核心です。121手という数字以上に、終盤での判断力が光った一局でした。
【両棋士と歴代王座】広瀬章人・伊藤匠の実績とタイトル移動
今回の王座戦は、単なるタイトルの入れ替わりではありません。将棋界の第一線で戦ってきた広瀬九段が、若い世代のタイトルホルダーである伊藤王座を破ったという点でも注目されます。
広瀬章人新王座の経歴とタイトル獲得歴
1987年1月18日生まれ・北海道札幌市出身・九段
2005年プロ入り。2010年に王位、2018年に竜王を獲得。2026年に初の王座を獲得し、通算タイトル獲得数は3期。
広瀬新王座は、2010年度の第51期王位戦で初タイトルを獲得しました。その後、2018年度の第31期竜王戦では羽生善治竜王を破って竜王を獲得しています。
今回の王座獲得は、2018年の竜王以来のタイトル獲得です。日本将棋連盟の棋士データベースでも、王位1期、竜王1期、王座1期の合計3期と記載されています。
伊藤匠前王座の実績と今後の注目点
2002年10月10日生まれ・東京都世田谷区出身・九段
2024年に初タイトルの叡王を獲得。2025年には第73期王座戦で藤井聡太王座を破り、王座を獲得しました。
伊藤匠は、2024年の第9期叡王戦で藤井聡太叡王を破って初タイトルを獲得。その後も叡王を防衛し、2025年の第73期王座戦では藤井王座を3勝2敗で破って王座を獲得しました。
今回の第74期では、初防衛を目指して広瀬九段を迎えましたが、最終局で敗れて王座を失いました。保持タイトルは叡王となります。
王座戦に関係する人物・歴代タイトル獲得者の関係直近の王座戦では、藤井聡太、永瀬拓矢、伊藤匠らがタイトルを獲得してきました。2026年の広瀬新王座の誕生は、この流れに新たな名前が加わった出来事です。
日本将棋連盟の棋戦記録をもとに、2014年から2026年までの王座獲得者を整理すると、次のようになります。
- 2026年・第74期:広瀬章人
- 2025年・第73期:伊藤匠
- 2024年・第72期:藤井聡太
- 2023年・第71期:藤井聡太
- 2022年~2019年・第70期~第67期:永瀬拓矢
- 2018年・第66期:斎藤慎太郎
- 2017年・第65期:中村太地
- 2016年~2014年・第64期~第62期:羽生善治
このように、近年の王座戦では複数のトップ棋士がタイトルを争ってきました。特に2023年以降は藤井聡太、伊藤匠、広瀬章人へと王座が移り、2026年は広瀬九段が新たなタイトルホルダーとして加わりました。
【王座戦の仕組みと中継情報】棋譜・ABEMAで対局を振り返る方法
王座戦は、日本将棋連盟が管理する将棋のタイトル棋戦の一つです。日本経済新聞社が共同主催し、例年9月から10月にかけて王座と挑戦者が五番勝負を行います。
王座戦の仕組みとは?王座戦の挑戦者は、予選から勝ち上がって決定します。日本将棋連盟の公式説明によると、参加対象は全棋士と女流棋士4名です。
一次予選、二次予選を勝ち抜いた棋士とシード棋士によって16名の挑戦者決定トーナメントが行われ、優勝者が王座への挑戦権を獲得します。
挑戦者が決まると、現王座との五番勝負が始まります。先に3勝した棋士が王座を獲得または防衛する仕組みです。第74期はこの最終局まで進み、広瀬九段が3勝を挙げて新王座となりました。
第74期王座戦の対局条件王座戦の基本ルール
タイトル戦形式
五番勝負
勝利条件
先に3勝
持ち時間
各5時間
対局日数
1日制
時計方式
チェスクロック方式
昼食休憩
12時10分~13時
夕食休憩
17時~17時30分
王座戦の特徴は、1日制でありながら持ち時間が各5時間と比較的長いことです。2日制のタイトル戦とは異なり、封じ手を行わず、その日のうちに勝敗を決めます。
チェスクロック方式では、各棋士の持ち時間が実際の時計で管理されます。持ち時間を使い切った後は秒読みとなるため、終盤での時間配分も勝負の重要な要素です。第5局でも伊藤王座が持ち時間を使い切った後、広瀬九段との時間差が注目されました。
王座戦第5局の中継はどこで見られた?第74期王座戦五番勝負では、以下の媒体で対局の模様が配信・中継されました。
将棋チャンネル
対局映像や解説を楽しめる動画配信サービス。第74期王座戦の五番勝負も配信対象となりました。
日本将棋連盟・王座戦中継サイト
公式の棋戦情報や対局状況を確認する際の基本資料。対局結果や棋譜関連情報の確認にも役立ちます。
日本将棋連盟ライブ中継
指し手を追いながら対局の進行を確認したい人に適した中継サービスです。
第5局はすでに終局しているため、2026年11月時点で視聴する場合は、各サービスのアーカイブ配信状況を確認する必要があります。ライブ配信と見逃し配信は別のサービス条件になる場合があります。
王座戦棋譜を確認する方法将棋の内容を詳しく振り返りたい場合は、映像だけでなく棋譜や公式中継ブログを確認するのがおすすめです。
特に今回の第5局では、55手目の▲3八香、73手目の▲7五成銀、終盤の馬を抜く筋など、勝負の分岐点を追うことで対局の理解が深まります。
公式中継ブログには、終局直後の両棋士のコメント、感想戦の様子、大盤解説で紹介された手順などが掲載されています。単に勝敗だけを知るのではなく、どの局面で形勢や時間の使い方が変わったのかを確認できる点が魅力です。
【プロの結論】広瀬新王座の勝利が将棋界に示したもの
第74期王座戦の結果から読み取れるのは、タイトル戦では過去の実績や年齢だけで勝敗を予測できないということです。
広瀬九段は過去に王位と竜王を獲得した実績を持ちながら、近年はタイトル争いの中心から距離があった時期もありました。しかし、今回の五番勝負では伊藤王座を相手に3勝2敗で勝ち切りました。
1.ベテラン棋士にもタイトル獲得の可能性がある広瀬九段は記者会見で、年齢を重ねることの大変さを感じていたと語り、今回のタイトル獲得には価値があるとの認識を示しました。
また、藤井聡太竜王・名人や伊藤匠といった強豪棋士に勝たなければタイトルを獲得できない仕組みに触れ、日頃から地道に取り組んできたことが結果につながったと説明しています。
今回の勝利は、若手棋士の台頭が続く将棋界でも、経験を積んだ棋士が研究と準備を重ねることでトップ争いに食い込めることを示した出来事でした。
2.AI研究と従来のトレーニングのバランス広瀬新王座は記者会見で、AIの活用についても言及しました。タイトル挑戦に向けてはAIを使いすぎず、地道なトレーニングに重点を置いていた一方、伊藤王座のように最先端の将棋を指す相手への対策では、パソコンに向かう時間を増やしたと説明しています。
この発言から見えてくるのは、AIを使うか使わないかという二択ではなく、研究の目的や対戦相手に応じて活用方法を調整する必要性です。
現代将棋では、AIによる研究が進むほど、研究内容を実戦でどう使いこなすかが重要になります。広瀬九段のタイトル獲得は、経験に基づく判断と新しい研究手法を組み合わせることの意味を考えさせる結果となりました。
3.タイトル戦は最終局の内容だけで評価できない第74期王座戦では、広瀬九段が第1局を取った後、伊藤王座が第2局と第3局を連勝しました。その時点では伊藤王座が有利でしたが、広瀬九段は第4局、第5局を連勝しています。
この推移は、五番勝負が一局ごとの勝敗だけではなく、シリーズ全体の修正力や研究の積み重ねを競う舞台であることを示しています。
対局を評価するときは、最終結果だけでなく、次の3点を確認すると理解が深まります。
- 局面の変化: どの手を境に攻めと受けのバランスが変わったのか。
- 時間配分: 持ち時間をどこで使い、終盤にどれだけ余裕を残せたのか。
- シリーズ全体の修正: 前局の反省や研究が次の対局にどう反映されたのか。
第5局は、まさにこの3つの観点から振り返る価値のある対局です。広瀬九段が勝ち筋を最後まで読み切ったことに加え、シリーズ後半で勝ちを重ねたことが、初王座獲得につながりました。
【王座戦第5局に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:王座戦第5局はいつ、どこで行われましたか? A1:2026年10月27日(火)、山梨県甲府市の常磐ホテルで行われました。第74期王座戦五番勝負の最終局です。
Q2:王座戦第5局の勝者と結果は? A2:広瀬章人九段が伊藤匠王座に121手で勝利しました。シリーズ通算3勝2敗で、広瀬九段が自身初の王座を獲得しました。
Q3:広瀬章人九段は何年ぶりにタイトルを獲得しましたか? A3:2018年の竜王獲得以来です。2026年の王座獲得によって、タイトル通算獲得数は3期となりました。
Q4:第74期王座戦の全5局の勝敗はどうなりましたか? A4:第1局は広瀬九段、第2局と第3局は伊藤王座、第4局と第5局は広瀬九段が勝利しました。最終成績は広瀬九段の3勝2敗です。
Q5:王座戦第5局の棋譜や中継はどこで確認できますか? A5:日本将棋連盟の公式棋戦ページ、王座戦中継サイト、公式中継ブログなどで対局情報や棋譜関連の記録を確認できます。ABEMA将棋中継も第74期の配信を行いました。過去の映像については各サービスのアーカイブ提供状況をご確認ください。
Q6:王座戦は何勝すればタイトルを獲得できますか? A6:五番勝負で先に3勝した棋士が王座を獲得します。第74期では広瀬九段が3勝2敗で伊藤王座を破りました。
2026年10月27日の第74期王座戦第5局は、広瀬章人九段が伊藤匠王座を121手で破り、3勝2敗で自身初の王座を獲得する結果となりました。
シリーズは第1局を広瀬九段、第2局と第3局を伊藤王座、第4局と第5局を広瀬九段が制する展開でした。最終局では、55手目の▲3八香や73手目の▲7五成銀などが注目され、最後は馬を抜く勝ち筋を読み切った広瀬九段が勝利を収めました。
今回のタイトル移動によって、伊藤匠は王座を失い、広瀬章人が新たな王座となりました。広瀬九段にとっては、2018年の竜王以来となるタイトル獲得であり、将棋界のトップ争いに再び存在感を示す大きな成果です。
今後注目したいのは、広瀬新王座が第75期でどのような防衛戦を迎えるのか、そして伊藤匠が叡王としてどのように巻き返すのかという点です。第74期王座戦は、世代を超えた実力者同士の競争と、最後まで勝敗の分からないタイトル戦の面白さを改めて印象づけました。