Creepy Nutsが担当した楽曲には、それぞれ異なる役割があります。単純に夜をテーマにした曲を並べたのではなく、物語の進行や登場人物の心情に合わせて、夜の描き方そのものが変化している点が興味深いところです。
1. 「堕天」:Season1のOPを飾る書き下ろし曲
「堕天」
2022年・書き下ろし楽曲
夜の魅力と危うさを感じさせる、ジャズやファンク、ラテンの要素を取り入れたサウンドが特徴。
「堕天」は、2022年放送のSeason1のためにCreepy Nutsが書き下ろしたオープニングテーマです。
制作時のインタビューでDJ松永は、ジャンルを一つに限定しにくいサウンドを目指したことを説明しています。
特に注目したいのが、曲の構成です。
- 前奏を省略し、いきなりラップから始める。
- サビで一気に音楽的な開放感を生み出す。
- 間奏では一度暗い雰囲気に落とし込み、再びサビへ戻す。
「堕天」というタイトルにふさわしく、単純な爽快感だけでは終わらない構成になっています。
R-指定は当初、夜をテーマにした新曲を作ることに難しさを感じていたと明かしています。すでに夜を題材にした楽曲を数多く制作していたため、あえて夜とは直接関係のないテーマを検討したものの、結果として作品に合う楽曲に仕上がったそうです。
この制作過程は、原作の世界観をなぞるだけでなく、Creepy Nuts自身の音楽的な挑戦も盛り込まれていたことを示しています。
2. 「よふかしのうた」:作品の原点でありSeason1のED
「よふかしのうた」
2018年12月12日配信
オードリーのラジオ番組10周年記念ツアーから生まれた、作品タイトルの原点。
この楽曲は、アニメのために作られたものではありません。
2018年に発表された既存曲であり、夜更かしを愛する人たちの感覚や、深夜ラジオが持つ独特の空気を表現しています。
漫画の主人公・夜守コウも、昼間の学校生活になじめず、夜の街に自分の居場所を見つけていく人物です。
大人のルールから少し離れた場所で、自分らしく過ごすという楽曲の背景は、コウの行動や作品の基本設定と重なります。
そのため、Season1のエンディングでこの曲が流れることには、単なるタイアップ以上の意味があります。
漫画のタイトルを生み出した楽曲が、アニメのエンディングとして作品に戻ってきたという、非常に珍しい構造なのです。
3. 「ロスタイム」:第2夜の挿入歌が描いた浮遊感
「ロスタイム」
2022年7月15日・公式発表
第2夜の印象的な場面に合わせて制作された楽曲。
「ロスタイム」は、第2夜の挿入歌として使用された書き下ろし曲です。
この楽曲の制作背景については、アニメ公式サイトが2022年7月15日に詳しく紹介しています。
板村智幸監督がCreepy Nutsに伝えたオーダーは、単純な疾走感ではなく、浮遊感でした。
夜の街を歩くコウと、空を飛ぶナズナ。広がり続ける街の景色と、初めて体験する夜への不安や高揚感を音楽で表現することが求められたのです。
監督は、夜の底知れなさや街の果てしない広がりに対して、不安を抱きながらも高揚している少年に寄り添う曲を希望したと説明しています。
このオーダーを見ると、「ロスタイム」が単なるBGMではなく、コウの感情を補完するための楽曲だったことが分かります。
Creepy Nuts自身も、歌詞やトラックから浮かぶ情景と、身体で感じる音の心地よさを楽しんでほしいという趣旨のコメントを発表しました。
4. 「Mirage」:Season2で描かれる大人の夜
「Mirage」
2025年7月4日配信
夜の幻想だけでなく、未練や後悔を抱える大人の心情に踏み込んだ楽曲。
Season2のオープニングテーマとなった「Mirage」は、Season1から夜の描き方が変わったことを象徴する曲です。
R-指定は楽曲について、Season1では夜の持つ乾いた優しさや、救われる人々の避難所としての側面が描かれていたのに対し、Season2では夜の湿っぽさや未練、後悔に焦点が移ったと説明しています。
このコメントは、Season2の作品理解にもつながります。
Season1では、コウがナズナと出会い、夜の自由さを知っていくことが大きな魅力でした。
一方、Season2では吸血鬼の過去や人間時代の記憶、登場人物が抱える事情など、夜の楽しさだけでは片付けられない問題が前面に出てきます。
「Mirage」は、そうした物語の変化に合わせて、夜の幻想的な美しさと、その裏側にある感情を表現した楽曲と捉えられます。
曲名のMirageは「蜃気楼」を意味する言葉です。実体があるように見えながら、つかもうとすると消えてしまう幻想的なイメージは、作品に漂う不確かさとも相性がよいものです。
5. 「眠れ」:夜更かしを反対側から見つめるSeason2のED
「眠れ」
2025年7月5日配信
夜を楽しんできた大人が、子どもに眠りを促す側になった視点が印象的。
「眠れ」は、タイトルからして「よふかしのうた」と対照的です。
2018年の楽曲では、夜を楽しむことへの憧れや高揚感が中心にありました。
ところが「眠れ」では、夜が好きだった子ども時代と、大人になってからの視点が交差します。
R-指定は公式の楽曲コメントで、子どもができたことで、かつて自分を早く寝かせようとしていた大人たちの気持ちが分かるようになったと説明しています。
夜は楽しく、魅力的なもの。しかし、子どもにとってはまだ知らなくてもよい危うさもある。そんな二面性が楽曲の背景にあります。
この視点は、Season2に登場する大人たちの生き方や、過去と現在の関係を考えるうえでも興味深いものです。
なお、「Mirage」は2025年7月4日、「眠れ」は翌7月5日にデジタル配信され、2曲を収録したシングル『Mirage/眠れ』は同年9月10日に発売されました。
【作品と音楽の関係を分析】Season1とSeason2で夜の意味はどう変わった?

『よふかしのうた』の魅力を理解するうえで、夜が単なる舞台装置ではないことは見逃せません。
夜は、主人公たちが自由になれる時間であると同時に、自分自身の本音や過去と向き合う時間でもあります。
Creepy Nutsの楽曲も、この二面性を段階的に表現しています。
Season1は「夜への憧れ」と「自由」Season1の中心にあるのは、夜の街を歩く楽しさです。
学校や昼間の生活に息苦しさを感じていたコウにとって、ナズナと過ごす夜は新しい世界との出会いでした。
「堕天」はその高揚感と危うさを表現し、「よふかしのうた」は夜に居場所を見つける感覚を支えています。
さらに「ロスタイム」が、コウとナズナの夜の冒険に浮遊感を与えました。
Season2は「夜の代償」と「大人の葛藤」Season2では、夜を楽しむだけでは解決できない問題が描かれます。
吸血鬼たちの過去や、人間だった頃の思い出、後悔、執着など、夜に隠されていたものが物語に深く関わってきます。
この変化を音楽で表現したのが「Mirage」と「眠れ」です。
「Mirage」は夜に引きずられる大人の感情を、「眠れ」は夜を知っている大人だからこそ持つ、子どもへの複雑な思いを描いています。
つまり、Season1からSeason2への変化は、単なる楽曲の入れ替えではありません。
夜に憧れる側の物語から、夜とどう付き合っていくかを考える物語への変化が、音楽にも反映されているのです。
最終話ではSeason1のEDが再登場もう一つ見逃せないのが、2025年9月19日に放送されたSeason2の最終話です。
通常のエンディングテーマは「眠れ」でしたが、最終話では特別にSeason1のED「よふかしのうた」が使用されました。
加えて、映像の最後には原作者コトヤマによる描き下ろしのナズナのイラストが登場しています。
最初の楽曲に戻ることで、2018年の原曲から始まった作品と音楽の関係を、アニメの演出として改めて結び直した形です。
これは単なる懐かしさの演出にとどまりません。作品タイトルの原点となった曲を最後に配置することで、Season1から続いてきた物語の余韻を強めています。
【よくある誤解】Creepy Nutsと『よふかしのうた』について知っておきたいこと
検索時に混同されやすいポイントも整理しておきます。
誤解1:Creepy Nutsが漫画のために「よふかしのうた」を作った?
これは正確ではありません。楽曲は2018年にラジオ番組の10周年記念ツアーのテーマソングとして制作され、漫画はその後に誕生しています。
誤解2:「堕天」が原作漫画のタイトルの由来?
違います。タイトルの由来となったのは2018年発表の「よふかしのうた」です。「堕天」は2022年のアニメSeason1のために書き下ろされたOPです。
誤解3:「ロスタイム」はSeason1のED?
こちらも違います。「ロスタイム」は第2夜の挿入歌です。通常のEDは「よふかしのうた」です。
誤解4:Season2のEDは全話「眠れ」?
通常のEDは「眠れ」ですが、最終話ではSeason1の「よふかしのうた」が特別に使用されました。
誤解5:Season2の「Mirage」と「眠れ」は同じ日に配信された?
配信開始日は異なります。「Mirage」は2025年7月4日、「眠れ」は7月5日です。CDシングルは9月10日に発売されています。
【よふかしのうたとCreepy Nuts】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:『よふかしのうた』の原作タイトルはCreepy Nutsが由来ですか?
A1:はい。原作者コトヤマがCreepy Nutsの2018年発表曲「よふかしのうた」に惹かれ、タイトルに採用しました。Creepy Nuts側も使用を快諾しています。
Q2:アニメSeason1のOP・ED・挿入歌は何ですか?
A2:OPは「堕天」、EDは「よふかしのうた」、第2夜の挿入歌は「ロスタイム」です。いずれもCreepy Nutsの楽曲です。
Q3:Season2の主題歌は何ですか?
A3:OPは「Mirage」、EDは「眠れ」です。2025年7月にそれぞれデジタル配信され、9月10日には2曲を収録したCDシングルが発売されました。
Q4:「よふかしのうた」と「ロスタイム」は同じ曲ですか?
A4:別の楽曲です。「よふかしのうた」は2018年に発表された原曲で、Season1のEDにも採用されました。「ロスタイム」は2022年にアニメのために書き下ろされた挿入歌です。
Q5:Creepy Nutsのメンバーは誰ですか?
A5:R-指定とDJ松永の2人です。R-指定はラップ・作詞、DJ松永はDJ・トラックメイキングを中心に担当しています。
Q6:Season2の最終話でも「眠れ」が流れますか?
A6:最終話では特別な演出として、Season1のED「よふかしのうた」が使用されました。通常のEDと最終話限定のEDを区別すると分かりやすいでしょう。
『よふかしのうた』とCreepy Nutsの関係は、2018年の一曲から始まりました。コトヤマが楽曲のタイトルに惹かれ、それを漫画のタイトルに採用したことが、後のアニメ化と主題歌制作につながっています。
Season1では「堕天」「よふかしのうた」「ロスタイム」が、夜への憧れや自由、高揚感を表現。Season2では「Mirage」「眠れ」によって、未練や後悔、大人になってからの夜との付き合い方が描かれました。
特に注目したいのは、Season2の最終話で再び「よふかしのうた」が流れたことです。2018年の原曲が漫画のタイトルになり、アニメのEDとなり、最後には続編の締めくくりにも戻ってきました。
作品を音楽から楽しむなら、2018年の原曲から「堕天」「ロスタイム」「Mirage」「眠れ」の順に聴いてみるのがおすすめです。夜に対する感覚がどのように変化してきたのか、Creepy Nutsの音楽を通じて作品のもう一つの物語が見えてきます。