『メアリと魔女の花』はスタジオジブリの作品なのか。それとも、ジブリとは別のアニメーション映画なのか。2017年の公開以来、この疑問が繰り返し検索されている。結論からいえば、『メアリと魔女の花』はスタジオジブリ作品ではなく、スタジオポノックが制作した長編アニメーション映画である。
ただし、ジブリとの関係が薄い作品というわけではない。監督は『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を手がけた米林宏昌。プロデューサーは『かぐや姫の物語』などに携わった西村義明で、制作スタッフにもジブリ作品を支えてきたクリエイターが多数参加している。つまり、ジブリで培われた技術や創作姿勢を受け継ぎながら、別のスタジオが独自に完成させた作品だ。
【結論】『メアリと魔女の花』はジブリ作品ではない!制作会社はスタジオポノック
『メアリと魔女の花』をジブリ作品だと思っている人が多い理由は、映像の雰囲気だけではない。監督、プロデューサー、背景美術やアニメーション制作に関わった人々の多くが、過去にスタジオジブリの作品を手がけてきたからだ。
しかし、映画の制作クレジットを確認すると、制作会社は明確に株式会社スタジオポノックと記載されている。スタジオジブリが制作した作品でも、ジブリの正式な続編やスピンオフでもない。
スタジオポノックとはどんな会社なのかスタジオポノックは、2015年4月15日に設立された日本のアニメーション映画制作会社だ。設立したのは、スタジオジブリでプロデューサーとして活動していた西村義明。
社名の「ポノック」は、クロアチア語の「ponoć(ポノチ)」に由来する。意味は「深夜0時」。一日が終わり、新しい一日が始まる瞬間に、新しい映画制作の出発点を重ねた名称である。
同社の公式会社情報では、2017年公開の『メアリと魔女の花』を第一回長編アニメーション映画として紹介している。その後も2018年の『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』、2021年の『Tomorrow's Leaves』、2023年の『屋根裏のラジャー』などを発表してきた。
したがって、正確な分類は「スタジオジブリの作品」ではなく、「ジブリ出身のクリエイターが中心となって立ち上げたスタジオポノックの第1作」となる。
ジブリの名前がクレジットされない理由最大の理由は、制作体制が異なるからだ。スタジオジブリの制作部門が解散した後、米林監督と西村プロデューサーはジブリを離れ、新しい会社で映画を作る道を選んだ。
もちろん、ジブリで学んだ表現技術や作品づくりへの姿勢は引き継がれている。しかし、過去に同じ会社で働いていたことと、その会社が新作を制作したことは別の話だ。
『メアリと魔女の花』を紹介するときは、「ジブリの後継作品」「ジブリ風の映画」といった印象だけで判断するのではなく、制作会社とスタッフの経歴を分けて考える必要がある。
【制作の経緯】ジブリからポノックへ!米林宏昌監督と西村義明の決断
『メアリと魔女の花』の誕生を理解するには、2013年から2017年までのアニメーション業界の動きを押さえておきたい。
2013年、スタジオジブリの制作部門解散が転機に大きな転換点となったのは2013年。宮崎駿監督の『風立ちぬ』と高畑勲監督の『かぐや姫の物語』が公開された時期である。
当時、『かぐや姫の物語』のプロデューサーを務めていた西村義明は、スタジオジブリの制作部門が解散する方針を知らされたという。米林宏昌も『思い出のマーニー』の制作中に同様の事情を聞いていた。
2014年末、米林監督と西村プロデューサーはスタジオジブリを退社。ジブリという制作環境が変わっても、長編アニメーションを作り続けたいという思いは共通していた。
2015年、ゼロからスタジオポノックを設立『思い出のマーニー』の完成後、西村は米林に次の映画を作る意思があるかを尋ねた。米林は再び映画を作りたいと答え、西村と組んで新しい制作環境を作ることを決める。
スタジオポノックの設立当初は、会社こそできたものの、映画制作のためのスタジオや十分なスタッフがそろっていたわけではなかった。米林監督の公式発言によると、初期の企画会議はファミリーレストランや喫茶店で、二人だけで進めていたという。
スタジオジブリの看板も、既存の制作部門もない。資金、スタッフ、制作環境を新しく整えながら、一本の長編映画を完成させる必要があった。
制作の経緯と関係者を時系列で整理| 時期 | 人物・組織 | 出来事・関係性 |
|---|---|---|
| 2013年 | スタジオジブリ | 制作部門の解散方針が関係者に伝えられる。 |
| 2014年末 | 米林宏昌・西村義明 | 二人がスタジオジブリを退社。 |
| 2015年4月15日 | スタジオポノック | 西村義明が新しいアニメーション映画制作会社を設立。 |
| 2016年12月15日 | 米林宏昌・西村義明 | 東宝本社で『メアリと魔女の花』の製作発表記者会見を実施。 |
| 2017年7月8日 | スタジオポノック | 第1回長編作品として全国公開。 |
| 2018年以降 | スタジオポノック | 短編アニメーションや新たな長編映画の制作へ展開。 |
この流れから分かるのは、本作が単なるジブリ関係者の独立作品ではないということだ。ジブリの制作体制が変化した後も、長編アニメーションの現場を維持しようとした二人の挑戦が、スタジオポノックの出発点になっている。
【ジブリ出身スタッフ】米林宏昌・西村義明と制作陣のつながり
『メアリと魔女の花』がジブリ作品と混同されやすい最大の理由は、制作スタッフの顔ぶれにある。
米林宏昌監督はジブリで何を手がけたのか米林宏昌は1973年生まれ、石川県出身のアニメーション監督。1996年にスタジオジブリへ入社し、アニメーターとして経験を積んだ。
宮崎駿監督作品などに参加した後、2010年公開の『借りぐらしのアリエッティ』で長編映画監督に初挑戦。2014年には『思い出のマーニー』を監督した。
両作品に共通するのは、少女を主人公に据え、日常の中にある小さな感情の変化や、未知の世界との出会いを丁寧に描いていることだ。
『メアリと魔女の花』は、米林監督がジブリ退社後に初めて手がけた長編映画。過去の作品で培った少女の描写に、魔法や空中移動などのダイナミックなアクションを加えた。
西村義明プロデューサーの役割西村義明は、スタジオポノックの設立者であり、本作のプロデューサーだ。
スタジオジブリ時代には『かぐや姫の物語』『思い出のマーニー』などに携わった。映画の企画を成立させるだけでなく、スタッフを集め、制作環境を整え、作品を完成まで導く役割を担っている。
米林監督が映画を作りたいと考えていても、それを実現する現場がなければ長編アニメーションは完成しない。西村が新会社の設立を決断したことは、本作の誕生に欠かせない要素だった。
ジブリ出身スタッフは約8割だった?注目したいのが、2016年12月の製作発表会見で西村プロデューサーが明かした制作スタッフの構成だ。
当時の説明によると、スタッフの約8割はスタジオジブリの正社員だった人、またはジブリ作品に関わってきた人々だったという。
この数字は「スタッフの8割が全員ジブリの元社員だった」という意味ではない。ジブリ作品に参加した経験を持つ人も含まれている点が重要だ。
また、背景美術では『となりのトトロ』『もののけ姫』などで知られる男鹿和雄や、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』に携わった武重洋二らが相談役として関わった。映像演出には、宮崎作品を長く担当してきた奥井敦も参加した。
一方、米林監督自身は、ジブリ出身ではないスタッフも数多く参加していると説明している。つまり、過去の制作経験を持つ人々と新しい才能が合流したチームだった。
ジブリとの違いはどこにあるのか両者の違いは、単純に絵柄だけで判断できない。制作会社が違うだけでなく、作品を企画し、スタッフを集め、物語の方向性を決める主体も異なる。
西村プロデューサーは本作の企画について、『思い出のマーニー』とは対照的な作品を目指したと説明している。前作が少女の内面を静かに描く作品だったのに対し、本作では元気な少女が広い世界を動き回る、躍動感のあるファンタジーを目指した。
また、魔女という題材についても、『魔女の宅急便』の単なる再現ではなく、現代の観客に向けた新しい魔女の物語を作るという意図があった。
ジブリの制作部門が生み出した技術や美意識を受け継ぎながら、ポノック独自の現場で新しい作品を作る。この違いこそが、本作を理解するうえで要点だ。
【あらすじと原作】夜間飛行とエンドア大学が物語の鍵
『メアリと魔女の花』は、イギリスの児童文学を原作とするファンタジー作品だ。物語の中心となるのは、偶然手に入れた魔法の力に翻弄されながら、自分の意志で行動する少女メアリである。
メアリと魔女の花のあらすじ物語の主人公は、赤毛とそばかすが特徴の少女メアリ。田舎の赤い館村にやってきた彼女は、森の中で不思議な黒猫と出会い、七年に一度しか咲かないという珍しい花を見つける。
その花の名前は「夜間飛行」。実は、かつて魔女の国から盗み出された禁断の魔女の花だった。
メアリは夜間飛行の力によって、一夜限りの不思議な魔法を使えるようになる。そして、空を飛ぶほうきに導かれ、雲海の上にそびえる魔法大学「エンドア大学」にたどり着く。
魔法の世界で認められたいという気持ちから、メアリは自分について一つの嘘をついてしまう。その嘘がきっかけとなり、周囲の人々を巻き込む大きな事件が動き始める。
やがて夜間飛行に隠された秘密や、エンドア大学の本当の目的が明らかになっていく。魔法の力を失いながらも、大切な人を守ろうとするメアリの決断が物語の核心となる。
夜間飛行とは何か夜間飛行は、本作に登場する七年に一度だけ咲く特別な花である。英語では「Fly-by-Night」と表現される。
花の持つ魔力によって、メアリは一時的に魔法を使えるようになる。ほうきを飛ばし、普通の人間にはたどり着けない世界へと進むための重要な存在だ。
しかし、夜間飛行は単なる便利な魔法の道具ではない。物語が進むにつれ、その力を誰が何のために使うのかという問題が浮かび上がってくる。
エンドア大学とはどんな場所なのかエンドア大学は、雲海の上に存在する魔法世界の最高学府。魔法を学ぶ場所として描かれる一方、校長のマダム・マンブルチュークや魔法科学者ドクター・デイなど、物語の重要人物が集まる舞台でもある。
きらびやかな建物や不思議な設備は、ファンタジー作品としての視覚的な見どころだ。しかし、その華やかさの裏には、魔法の力をめぐる危険な計画が隠されている。
原作はメアリー・スチュアートの『The Little Broomstick』原作は、イギリスの作家メアリー・スチュアートが1971年に発表した児童文学『The Little Broomstick』。日本では『新訳 メアリと魔女の花』としてKADOKAWAから刊行されている。
原作と映画は、魔法の花を見つけた少女がほうきに乗り、魔法学校へ向かうという基本設定を共有している。ただし、映画は小説をそのまま映像化したものではない。映画としての展開や人物の描写、アクションを加えた翻案作品だ。
原作小説を読んでから映画を見ると、物語の構成や登場人物の扱い、映像化にあたって追加・変更された要素を比較できる。映画で気に入った世界観を、文章でも味わいたい人におすすめだ。
【声優一覧・音楽】杉咲花と神木隆之介が演じる主要キャラクター
本作の魅力を支えているのが、俳優を中心とした豪華な声優陣だ。主人公メアリを杉咲花、物語の重要人物ピーターを神木隆之介が担当している。
メアリと魔女の花の声優一覧主要キャラクターと担当キャストは以下のとおり。
- メアリ:杉咲花
- ピーター:神木隆之介
- マダム・マンブルチューク:天海祐希
- ドクター・デイ:小日向文世
- 赤毛の魔女:満島ひかり
- フラナガン:佐藤二朗
- ゼベディ:遠藤憲一
- バンクス:渡辺えり
- シャーロット:大竹しのぶ
杉咲花が演じるのは、物語の中心人物メアリ。何をしてもうまくいかないと感じ、自分の外見にも自信を持てない少女だ。
魔法の力を手に入れたことで、普段の自分とは違う世界に足を踏み入れる。しかし、物語が進むにつれ、魔法の才能そのものよりも、自分で考えて行動する勇気が問われるようになる。
メアリの魅力は、最初から完璧なヒロインではないところにある。失敗したり、見栄を張ったりしながらも、大切な人のために行動する姿が成長物語としての見どころになっている。
神木隆之介が演じるピーター神木隆之介が担当するピーターは、メアリが赤い館村で出会う少年。メアリの行動によって、魔法の世界をめぐる事件に巻き込まれてしまう。
神木は米林監督の過去作『借りぐらしのアリエッティ』にも出演している。監督との再タッグという意味でも注目されたキャスティングだ。
天海祐希・小日向文世・満島ひかりら実力派キャストエンドア大学の校長マダム・マンブルチュークを演じるのは天海祐希。魔法科学者ドクター・デイには小日向文世が起用された。
また、魔女の国から夜間飛行を盗み出した赤毛の魔女を満島ひかりが担当。フラナガン役の佐藤二朗、ゼベディ役の遠藤憲一、バンクス役の渡辺えり、シャーロット役の大竹しのぶも物語に彩りを加えている。
俳優ならではの声の表現が、それぞれ異なる個性を持つキャラクターに立体感を与えている。
主題歌はSEKAI NO OWARIの「RAIN」主題歌は、SEKAI NO OWARIの「RAIN」。作中の幻想的な世界観や、メアリの冒険と成長を彩る楽曲だ。
音楽を担当したのは村松崇継。『思い出のマーニー』でも音楽を手がけており、米林監督作品とのつながりを感じさせるスタッフの一人でもある。
「RAIN」は映画のエンディングを印象づける楽曲で、作品を見終わった後に物語の余韻を味わいたい人にも注目してほしい。
【評判・評価】ジブリに似ている?賛否両論となった理由を検証
『メアリと魔女の花』は、公開当時から大きな注目を集めた一方、作品の評価については意見が分かれた。特に多く語られたのが、映像の美しさと、ジブリ作品との類似性、そしてストーリーの独創性だ。
高く評価された要点は映像美と王道ファンタジー好意的な評価として挙げられるのは、まず映像の完成度である。
森の緑、夜間飛行の幻想的な描写、空を飛ぶほうき、雲海に浮かぶエンドア大学など、画面全体に広がるファンタジーの世界は大きな見どころだ。
また、難解な設定を中心にした物語ではなく、少女が未知の世界へ飛び込み、失敗を経験しながら成長していく王道の構成も特徴。子どもから大人まで比較的理解しやすい冒険物語になっている。
批判的な評価はオリジナリティーと物語の構成一方で、公開当時の映画評論では、過去のジブリ作品を連想させる要素が多いという指摘もあった。
ほうきに乗る魔女、魔法の学校、不思議な生き物、壮大な背景美術など、過去の名作を思い起こさせる演出が多いため、独自の世界観が十分に確立されていないと感じる観客もいた。
また、エンドア大学を中心とする展開について、場面の移動が多いわりに物語の盛り上がりが弱い、登場人物の背景が十分に描かれていないといった批評も見られた。
ただし、こうした評価は作品の楽しみ方によって変わる。王道ファンタジーとして見る人と、過去のジブリ作品を基準に比較する人では、作品に求めるものが違うからだ。
2026年時点の評価と興行成績映画.comのユーザーレビューでは、2026年11月に参照した時点で平均評価は5点満点中2.9点、442件となっている。これは利用者による評価であり、映画評論家の採点や観客全体の満足度を直接表す数字ではないが、評価が一枚岩ではないことを示す参考材料になる。
一方、興行面では健闘した。2017年の国内映画興行収入ランキングでは、約32億9,000万円を記録し、邦画部門の上位に入っている。
加えて、第41回日本アカデミー賞では優秀アニメーション作品賞の候補作品に選ばれた。ただし、最優秀賞を受賞したわけではない。
つまり、本作は商業的に一定の成功を収め、映像作品としても評価された一方、物語の独自性や構成については意見が分かれた映画と整理できる。
どんな人におすすめできる作品なのか本作をおすすめできるのは、次のような人だ。
- 魔法や空を飛ぶほうきが登場する王道ファンタジーが好きな人
- 美しい背景美術や手描きアニメーションを楽しみたい人
- 少女の冒険や成長を描いた物語が好きな人
- 米林宏昌監督の『借りぐらしのアリエッティ』『思い出のマーニー』を見た人
- ジブリ出身のクリエイターが新しいスタジオでどのような映画を作ったのか知りたい人
反対に、緻密な世界設定や複雑な人物描写、完全に独創的なファンタジーを期待する人は、物語の展開に物足りなさを感じる可能性がある。
ジブリ作品との共通点を探すだけでなく、スタジオポノックの第1作として見ることが、作品をより深く楽しむためのポイントだ。
【よくある質問】メアリと魔女の花とジブリの関係に関するFAQ
Q1:『メアリと魔女の花』は本当にジブリ作品ではないのですか?
A1:はい。制作会社はスタジオジブリではなく、スタジオポノックです。ただし、米林宏昌監督や西村義明プロデューサーをはじめ、ジブリ作品に関わったクリエイターが多数参加しています。
Q2:『メアリと魔女の花』はジブリの後継作品ですか?
A2:正式な後継作品や続編という位置づけではありません。ジブリで培われた技術や創作姿勢を受け継いだ別会社のオリジナル映画として理解するのが正確です。
Q3:スタジオポノックはジブリの子会社ですか?
A3:スタジオポノックは西村義明が設立した株式会社スタジオポノックという別の制作会社です。スタジオジブリの制作クレジットとは区別されています。
Q4:米林宏昌監督はジブリのどの作品を担当しましたか?
A4:代表作は2010年の『借りぐらしのアリエッティ』と2014年の『思い出のマーニー』です。どちらも監督を務め、『メアリと魔女の花』はジブリ退社後の初長編作品です。
Q5:原作は実話ですか?
A5:実話ではありません。メアリー・スチュアートが1971年に発表した児童文学『The Little Broomstick』が原作です。
Q6:夜間飛行は実在する花ですか?
A6:実在の植物ではなく、作品に登場する架空の魔法の花です。七年に一度咲き、一夜限りの魔法の力をもたらします。
Q7:主題歌は誰が歌っていますか?
A7:SEKAI NO OWARIが歌う「RAIN」です。作曲・編曲を含む楽曲制作と映画音楽は、村松崇継が担当しています。
【プロの結論】『メアリと魔女の花』はジブリの系譜を受け継ぐポノックの出発点
『メアリと魔女の花』がジブリ作品なのかという疑問に対する答えは、明確だ。制作したのはスタジオジブリではなく、2015年に西村義明が設立したスタジオポノックである。
しかし、ジブリと無関係な作品として切り離すこともできない。米林宏昌監督は約20年間にわたってジブリで経験を積み、西村義明プロデューサーもジブリ作品の制作を支えてきた。加えて、制作スタッフの約8割がジブリの元社員またはジブリ作品の参加経験者だったという発表もある。
重要なのは、「ジブリ作品ではないこと」と「ジブリの影響を受けていないこと」は同じではないという点だ。
本作は、スタジオジブリの制作部門が解散した後、クリエイターたちが新しい環境を作り、もう一度長編アニメーションに挑戦した記録でもある。
映画としては、映像美や王道ファンタジーを楽しめる一方、物語の独自性や展開については好みが分かれる。しかし、その評価とは別に、アニメーション制作の歴史という視点から見ると、非常に興味深い位置を占める作品だ。
2026年に改めて鑑賞するなら、単に「ジブリに似た映画」として見るのではなく、米林宏昌監督がジブリを離れ、西村義明とともに新しいスタジオを立ち上げて生み出した最初の長編映画として見てほしい。
その背景を知ったうえで見ると、メアリが魔法の力を失いながらも、自分自身の意志で前へ進もうとする姿にも、作品を作り上げたクリエイターたちの挑戦が重なって見えてくるはずだ。
主な確認資料: スタジオポノック公式会社情報・製作発表会見、映画公式作品情報、KADOKAWA原作書籍情報、日本アカデミー賞公式記録、映画.comのレビュー情報、ORICON NEWSの興行成績資料。